シャンパーニュ好きが通う店
テタンジェとガストロノミーの幸福な出会い vol.2
「ラール・エ・ラ・マニエール」吉岡慶篤ソムリエ×小清水寛美シェフ編
2017.09.21
text by Tadayuki Yanagiphotographs by Hide Urabe
オーナーソムリエ吉岡慶篤さん秘蔵のワインと、若手実力派・小清水寛美シェフのクラシックを軸にした美しい料理で魅了するレストラン「ラール・エ・ラ・マニエール」。共にシャンパーニュ好き、これまでも数々のマリアージュを生み出してきた2人に、歴史ある家族経営の大手シャンパーニュ・メゾン「テタンジェ」の魅力を、2種類のキュヴェとのペアリングで語っていただきました。
トレンドに流されない
自分のスタイルをもったメゾン
料理のコースに合わせてワイン・ペアリングメニューを用意するばかりか、時にはシャンパーニュ・ペアリングメニューも提供する、銀座の「ラール・エ・ラ・マニエール」。「シャンパーニュは奥の深い飲み物」と、オーナーソムリエの吉岡慶篤さんは語ります。
「シャンパーニュはどれも似たり寄ったりと思っている方がいらっしゃいますが、メゾンごと、アイテムごとに個性があります。それを料理とピンポイントで合わせていくのはなかなか奥深い作業なんです」
あまたのシャンパーニュを味わってきた吉岡さんにとって、ランスのグランメゾン「テタンジェ」は、「抜群のバランスと安定感。どなたにも安心しておすすめできるシャンパーニュ」と太鼓判。「若い頃から常にオンリストしています」。
そんな吉岡さんが前菜のために選んだアイテムは、「テタンジェ ノクターン スリーヴァー」。マンハッタンの夜景を思わせるデザインボトルに詰められているのは、ドザージュ(澱抜き後の甘み調整)17.5グラムのセック(おだやかな辛口)です。
甘みの溶け込んだふくよかなシャンパーニュが、
さざえの肝のほろ苦さを包み込む
「最近はどのメゾンもドザージュ抑え気味の辛口嗜好ですが、テタンジェはそうしたトレンドにはむやみに乗らないのがいいですね。ノクターンのようにほんのり甘みが感じられるシャンパーニュを一杯、要所で出してさしあげると、お客様からとても喜ばれます」と吉岡さん。
このノクターンに合わせて、昨年からラール・エ・ラ・マニエールのシェフに就任した小清水寛美さんが用意した料理は、「さざえのミント風味とリコッタ、グリーンアスパラガスのサラダ仕立て」。
じつはこの日、吉岡さんもコックコートを着ているのでどうしたのかと問えば、時々調理法まで一歩踏み込んでワインを合わせたくなるそうで、この日のランチはキッチンとホールを行ったり来たり。ノクターンに合わせた料理も、小清水シェフと一緒に納得いくまで試行錯誤を繰り返しながら決めたそうです。
「ノクターンは甘みが溶け込んで、コクやふくよかさが前面に出ています。さざえの肝のほろ苦い風味もこのふくよかな味わいがきれいに包み込んでくれますし、磯っぽい香りもシャンパーニュのヨード感ときれいに調和がとれると思います」
ソースは貝のジュースをベースにブルーマローという花の青い色素を加えたもの。レモン果汁を垂らすとあら不思議。青いソースが見る見るピンク色に。これは見た目の演出だけでなく、貝のヨード感とレモン果汁の酸味で、ノクターンとの同調を図ったもの。ソースをつけることで、シャンパーニュとの相性がより深まります。
長期熟成によるクリーミーなテクスチャーと
白身の肉の黄金マリアージュ
続いては「コント・ド・シャンパーニュ2006」。メゾンのフラッグシップとなる単一ヴィンテージのブラン・ド・ブラン。このシャンパーニュに吉岡さんが合わせたのはホロホロ鳥です。
「コント・ド・シャンパーニュは昔から憧れのキュヴェです。プレステージのブラン・ド・ブランはとても貴重な存在です。シャルドネのミネラリーな力強さと、長期熟成によるクリーミーなテクスチャーのおかげで白身の肉によく合う、間違いのない一本です」と自信たっぷり。
「岩手県産ホロホロ鳥のロティとそのジュ エミュルションシャンピニヨン」には、吉岡さんと小清水シェフの遊び心で、まるで焼き鳥のように串焼きされたホロホロ鳥の内臓(ハツ、レバー、砂肝)が添えられています。
シャンピニヨンのデュクセルと内臓のコンディマン、さらにシャンピニヨンのカプチーノ、とどめの白トリュフは、コント・ド・シャンパーニュの熟成からもたらされる複雑味と融合。「ジャガイモのピューレも練り込み練り込み、力強く仕上げました」と小清水シェフ。コント・ド・シャンパーニュには力強いテクスチャーが必要と考えたそうです。
「コント・ド・シャンパーニュは懐の深いシャンパーニュだと思います。温度を微妙にアレンジしながら、食前からメインまで、コースを通して楽しんでもらうのも面白そうですね」と語る吉岡さん。それもまた、とても興味深いペアリングになりそうです。
◎ラール・エ・ラ・マニエール
東京都中央区銀座3-4-17 オプティカB1F
☎ 03-3562-7955
11:30~13:00LO(火~土曜)
18:00~20:30LO
日曜、月曜昼休
昼コース4000円、5500円、8000円
夜コース10000円、18000円
(税、サービス料別)
東京メトロ銀座駅より徒歩2分
◎「テタンジェ」に関する情報
http://www.sapporobeer.jp/wine/taittinger/