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FEATURE / MOVEMENT

第54回<ル・テタンジェ賞> 国際シグネチャーキュイジーヌコンクール日本大会 最終審査報告

COVID-19禍の世界で、国際料理コンクールが意味すること

2020.12.24

FEATURE / MOVEMENT

連載:<ル・テタンジェ賞>国際シグネチャーキュイジーヌコンクール

世界基準で自分の実力を試したい

歴史ある家族経営のシャンパーニュメゾン「テタンジェ」によって1967年に創設され、数あるフランス料理の国際コンクールの中でもその難易度の高さから“ガストロノミーのエベレスト”とも称される「ル・テタンジェ賞」。
COVID-19禍で開催があやぶまれながらも、「世界に挑戦したい若手料理人のチャンスをなくさないでほしい」という老舗料理コンクールへの期待から、今年も異例の審査体制で日本大会が開催された。


試食審査は横浜の東京ガス業務用テストキッチン「厨BO! YOKOHAMA」にて行われた。

書類選考は10月7日。参加申し込みを今年からWEBによる受付に切り替え、「牛肉(好きな部位/温製料理)」をテーマ食材に、自由に表現したレシピを提出。厳正な書類審査によって3名の挑戦者たちを選出し、大会当日は日本大会事務局から依頼した料理人が挑戦者のレシピと写真をもとに調理。その味を6名の著名料理人と2名のメディア関係者が審査する「試食審査」が10月28日に行われた。


試食審査員8名の料理が手際よく仕上げられていく。

85年の同世界大会で日本人初の優勝者となった審査委員長の堀田大氏曰く、「私が挑戦した当時から、審査員たちには挑戦者の国籍も店名も明かされず、純粋に味だけで評価されるコンクール。料理人としての自分の立ち位置を見るのにとてもいい機会です」。


試食審査員は、フランス人シェフ3名、日本人シェフ3名で構成された。

今回、最終審査に選ばれた3名の挑戦者たちは、フランス料理歴12~15年という、まさに今、自分の実力はどれくらいかを世界基準で試したいと願うキャリアの持ち主だ。
試食審査員の一人「レストラン ラフィナージュ」の高良康之シェフは、「コンクールは日常の仕事の延長にあるべきもの。時代が変われば皿の中の表現も変わっていくが、年々選手たちの表現力と料理のクオリティが上がってきている」と語った。


試食とは別に用意されたアラカルト用の盛り付けをチェック。

試食審査が終わるとその場で各審査員がつけた点数が集計され、初めて挑戦者が姿を現した。見事1位に選ばれた「パレスホテル東京」アシスタントシェフの堀内亮さんは、フランスの三ツ星レストランで修業時代、同僚が「ル・テタンジェ賞」に挑戦する姿を見て自分も帰国したら挑戦しようと心に決めたという。


優勝者「パレスホテル東京」アシスタントシェフ・堀内亮さん


2位「(株)東京會舘(レストラン プルニエ)」調理長代理・神戸宏文さん


3位「(株)ひらまつ(アルジェント)」副料理長・石井知之さん

「店で一緒に働くメンバーにコンクールに参加する旨を伝えて試作を重ねていると、だんだんチームの意識が変わっていくのを感じました」と堀内さん。世界大会で勝てる料理をと、6年間のフランスでの経験を一皿に込めたと話す。

2022年1月末にパリで開催予定の世界大会に向け、試食審査員の一人でありMOF(フランス国家最優秀職人章)受章者の「トゥールダルジャン東京」エグゼクティブ・シェフ、ルノー・オジェ氏が堀内さんのメンターにつき、これから料理にいっそう磨きをかけていく。
先行きの見えない世の中で、“ガストロノミーのエベレスト”は変わらず料理人にその頂を示し続けていた。





◎「テタンジェ」に関する情報
https://www.sapporobeer.jp/wine/taittinger/

◎フランス文化を識る会
https://www.acfrance.com/



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