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FEATURE / MOVEMENT

時代とともに進化する料理コンクール

第55回<ル・テタンジェ賞>国際シグネチャーキュイジーヌコンクール2022最終審査報告

Dec 01, 2022

(左から)ファイナリストとして試食審査に臨んだ「銀座レカン」太田明宏さん(2位)、「東京會舘」神戸宏文さん(1位)、「ホテルニューオータニ東京」但馬彰典さん(3位)。photographs by Association De La Culture Française

シェフとしての資質を鍛えるコンクール

シェフを目指す若手料理人の登竜門、<ル・テタンジェ賞>国際シグネチャーキュイジーヌコンクールは、老舗シャンパーニュメゾン「テタンジェ」によって1967年に誕生。数あるフランス料理のコンクールの中でも、その難易度の高さから“ガストロノミーのエベレスト”とも称され、歴代の優勝者には故ジョエル・ロブションをはじめとするスターシェフが名を連ねる。その第55回日本予選が2022年10月末に開催された。

今年の大会テーマは「豚肉」。豚肉の好きな部位を選び、一皿原価50ユーロ以内で、数種類のガルニチュールを添えて温製料理として完成させる。全国から応募のあったレシピから書類選考を経て、3名のファイナリストが試食審査に臨んだ。

面白いのは試食審査にあたり実際に調理するのは、ファイナリスト本人ではなく、日頃、同じ厨房で働く別の料理人であること。彼らがファイナリストのレシピを再現し、その味が審査される。

「フランス料理の調理場においてシェフは指揮者。時間内に完成度の高い料理を、人を動かしていかに仕上げるか。コンクールはシェフになる資質を鍛える場でもあります」と話すのは、審査員の一人で2013年の国際コンクール入賞者である「帝国ホテル 東京」の鎌田英基シェフだ。レシピの優劣だけでない、シェフとしての資質を見極める数時間。料理人6名、メディア関係者3名による試食審査が終わるとその場で点数が集計され、初めてファイナリストたちが姿を現した。

審査結果発表で3位、2位の名前が呼ばれると、ようやく掴んだ優勝に思わず涙を浮かべた「東京會舘」神戸宏文さん。「優勝には、それを支えてくれた多くの人がいることを伝えたい」

見事1位に選ばれたのは、前回と前々回の日本大会で惜しくも2位に終わった「東京會舘」神戸宏文(かんべ・ひろふみ)さん。意識したのは「無駄のないレシピと作業工程」だという。「豚ロース1本をメイン、ソース、ガルニチュールと無駄なく活用すること。シャルキュトリーの技術も盛り込んでいますが、作業工程を複雑にし過ぎず、効率的においしいものを作れるよう考えました」

現代のシェフたちは、若手のモチベーションをあげ、労働時間のコントロールも求められる。若手料理人の登竜門として、時代に即して進化する老舗コンクールの一端を垣間見る結果となった。

本選は2023年1月末にロンドンで開催予定。フランス、ドイツ、日本、スイス、ベルギー、スウェーデン、オランダ、イギリスの代表が、世界基準で自分の実力を試しに集う。パンデミックで長らく不自由を強いられたレストラン業界の若手にとって、“ガストロノミーのエベレスト”は今も歩むべき道を指し示すものであり続けている。


◎「テタンジェ」に関する情報
https://www.sapporobeer.jp/wine/taittinger/

◎フランス文化を識る会
https://www.acfrance.com/

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