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FEATURE / MOVEMENT

缶コーヒーの常識が変わった!高級品種「ゲイシャ」を味覚のスペシャリストがテイスティング

2024.10.07

【PROMOTION】
text by Noriko Horikoshi / photographs by Atsushi Kondo

1994年に発売以来、進化を続けてきた缶コーヒー「UCC BLACK無糖」が30周年を迎えるにあたり、2024年10月、高級品種「ゲイシャ」を使った新作が登場。コーヒー、チョコレート、ワインのスペシャリストが、その味わいに迫ります。

目次







【コーヒーのスペシャリスト】福岡「豆香洞(とうかどう)コーヒー」後藤直紀さん

【コーヒーのスペシャリスト】
福岡「豆香洞(とうかどう)コーヒー」後藤直紀さん

コーヒーカルチャーの旗手として注目される焙煎士。独学と東京の老舗「バッハコーヒー」で焙煎を学び、2008年福岡県大野城市に自店をオープン。店舗経営の傍ら、焙煎士として競技会の審査員や企業・団体向けの製品開発にも携わる。世界中のコンペティションでの受賞歴多数。


【チョコレートのスペシャリスト】東京・富ヶ谷「Minimal - Bean to Bar Chocolate -」山下貴嗣さん

【チョコレートのスペシャリスト】
東京・富ヶ谷「Minimal – Bean to Bar Chocolate -」山下貴嗣さん

大学卒業後、「Bean to Bar」との出会いをきっかけにチョコレートの世界へ。2014年に独立開業した富ヶ谷本店に続き、19年には「Minimal The Baking 代々木上原店」、23年には「Patisserie Minimal 祖師ヶ谷大蔵店」「Minimal The Specialty 麻布台ヒルズ」もオープン。良質なカカオ豆を求めて年間4カ月は赤道直下のカカオ産地を駆け巡る。


【ワインのスペシャリスト】東京・六本木「HIBANA」永島農(あつし)さん

【ワインのスペシャリスト】
東京・六本木「HIBANA」永島農(あつし)さん

六本木「サバティーニ」他、イタリア料理の名店でサービスとイタリアワインの知識を深め、代官山「キアッケレ」、表参道「フェリチタ」支配人を経て2017年9月に四谷に紹介制のワインバー「HIBANA」をオープン。24年、六本木に移転。専門のイタリア以外にも世界各地のワインや自然派ワインに通暁。


【コーヒー産地のスペシャリスト】UCC上島珈琲株式会社 農事調査室室長 中平尚己さん

【コーヒー産地のスペシャリスト】
UCC上島珈琲株式会社 農事調査室室長 中平尚己さん

1991年UCC入社。2002年、社内認定資格「UCCコーヒーアドバイザー」の第1号に。「CQI認定Qグレーダー」「SCAA 公認カッピングジャッジ」などの国際資格も取得。07年より「UCCコーヒーアカデミー」専任講師を務め、18年より現職に。


常温で、グラスに注いで、冷やして。缶コーヒーをテイスティング

UCC BLACK無糖 ゲイシャブレンド リキャップ缶275g
UCC BLACK無糖 ゲイシャブレンド リキャップ缶275g
https://www.ucc.co.jp/black/

―― 本日はコーヒー、チョコレート、ワインのスペシャリストをテイスターにお迎えしていますが、みなさんは日頃、どのようにコーヒーを楽しんでいらっしゃいますか?

永島 イタリアワインと関わりが深いこともあって、日常的にはドリップコーヒーより、マシンで淹れるエスプレッソを飲むことが多いですね。深炒りタイプのものを好んで飲みます。

山下 僕はスペシャルティコーヒーが大好きで、家でも外でもスペシャルティばかり。いろいろな豆を買って飲みますが、個人的にはバチバチに酸のきいたタイプ(笑)が好み。豆香洞さんの豆も大好きで、よく買うんですよ。

後藤 それは、ありがとうございます。自分の場合はコーヒーを純粋に楽しむというより、つい仕事目線でチェックしてしまいがち。それもつまらないので、最近はコーヒー好きの初心に立ち返って、インスタントから缶コーヒーまで幅広く楽しむことにしています。

山下 僕は正直なところ、缶コーヒーはほとんど飲まないかな。

永島 私も飲む機会がないですね。

中平 ということは、缶コーヒーのテイスティングは、みなさんにとって初めてということになるでしょうか。どんなコメントがいただけるか楽しみです。

―― まずは常温で、ボトル缶から直接飲んでみてください。

山下 口当たりが柔かくて、飲みやすいですね。缶コーヒーにはイガイガした苦味のイメージがあって、それが個人的に苦手だと感じていたのですが、これは喉の奥まで引っ掛かからず最後の余韻まですーっと抜けていく。とてもおいしいと思います。

永島 本当に、自分がイメージとして持っている缶コーヒーの味がしない。ポジティブな意味で缶コーヒーっぽくないことに、びっくりしました。

後藤 おいしいです。ドリップコーヒーといわれて出されても、多分わからないのでは。酸味もちょうどよいですね。ゲイシャは浅めの焙煎で香りが出るタイプなので、酸味のコントロールが難しいイメージがあったのですが。これは酸味より甘さを感じる。とてもいいバランスだと思います。

――次にグラスに注いでテイスティングを。缶と飲み比べてみて、いかがですか?

永島 意外ですが、缶で飲むほうがおいしく感じます。味わいも香りも缶のほうがいい。容器から直接飲むことを想定して、そのための味に完結させているのでしょうか。だとしたら凄いことですね。ちょっとびっくりしました。

山下 僕も缶の味のほうが好きです。特に、香りの立ち方は圧倒的に缶がいい。

後藤 香りやボディ感、コーヒーらしい凝縮感は缶のほうがダイレクトに伝わりますね。一方で、グラスに注いだときの軽くて明るい味に変化する感じも、それはそれで面白い。いろいろな飲み方が試せるという点で、非常にユニークだと思います。

中平 冷やした状態でも飲んでみてください。だいぶ印象が変わりませんか?

永島 違いますね。ワインと同じように、少しずつ温度を上げながら味わいの変化を楽しめそうな雰囲気を感じます。ただ、とても豊かな表現力をもつコーヒーなので、冷やし過ぎはもったいないかな。逆に、冷たいのを飲むならグラスのほうが楽しめそうですね。

山下 冷やすと緊張感が出てきて、味の幅がきゅーっと狭まる印象。でも、だんだんとほどけていく感じもちゃんとあって、時間が立つほどに香りに甘さが出てくる。温度もそうですが、缶コーヒーが時間でこんなに変わるんだということに、まずびっくりしてしまいます。

後藤 香りだけでなく、味も時間が立つにつれ凝縮された感じに変わっていく。トップクオリティのコーヒーほど、時間を置いたときに味のバランスがまとまり、飲んだ後の余韻も長くなる傾向がありますが、これがまさにそうですね。


標高1800m。厳しい自然環境が育む甘味、酸味、余韻

―― みなさんが、缶コーヒー“らしくない”と感じる、その味わいの違いはどこからくるのでしょう?「BLACK無糖」で使われているゲイシャの産地から教えていただけますか?

中平 グァテマラのサンタ・クララという農園で、2015年から契約栽培の取り組みを始めました。ゲイシャの原産国はエチオピアで、コスタリカからパナマに渡って評価が高まり、種がさらに世界に広まって産地ごとの自然環境を反映する個性をもつに至った流れがあります。もともと華やかな香りが特徴の品種ですが、グァテマラ産はよりトロピカルフルーツのニュアンスが強く、角の取れたやさしい果実感が持ち味です。

山下 グァテマラは上質なカカオの産地でもあって、カカオ豆ではベリー系や柑橘系の酸と、チョコレート感のあるしっかりしたボディが特徴です。農園の標高はどれくらいですか?

中平 1800mと高いですね。ゲイシャは標高の高い場所でしか育ちません。サンタ・クララ農園でのゲイシャ栽培は初めての試みだったこともあり、軌道に乗るまでは試行錯誤の連続でした。もとから収穫効率が悪い品種で、実付きもよくありません。そのぶん、力強い風味、甘味、酸味が生まれ、高級品種として認知されたとも言えますが。

永島 ワインで言えば、樹齢の高い古木のブドウと似ていますね。やはり実付きは少ないのですが、根を地面まで張って深いエキスを吸い上げるため、しっかりした酸味のある高品質のワインになります。

中平 コーヒーの木の場合は、老木より若木のほうが酸も甘味も力強く、評価が高い傾向があります。ワインと逆ですね。サンタ・クララは火山地帯にあって、植物が育ちにくい火山灰土壌ならではの難しさもありました。木の状態も、丈夫というより見るからにひ弱な外観で(笑)。ただし、適度なストレスがかかることで光合成が活性化し、そこで生成されたグルコースが華やかな香りやフルーティーな酸味に変換されるような、プラスの影響を生みだすともいわれます。

永島 お話を聞いて、シチリアのエトナを思い出しました。ここも活火山の麓の地で、主要品種のネレッロ・マスカレーゼが海抜1200mの高地で栽培されています。酸が特徴的なところもゲイシャと共通しますね。ゲイシャのコーヒーには淡めの色調、きれいな酸、のびやかで余韻が長いイメージがあり、個人的には北イタリアのネッビオーロ的な印象をもっていたのですが、環境的には南のほうが近いのかもしれません。


缶コーヒーで“ゲイシャらしさ”を引き出す焙煎、ブレンドとは?

―― 収穫後の最初のプロセスが、生豆を焙煎する工程ですね。缶コーヒーでグァテマラ産ゲイシャの特徴を引き出すための焙煎とは、どのようなものでしょうか?

中平 缶コーヒー用の焙煎は、ドリップ式と同じ方法では味が出ません。特にゲイシャについては、いかに風味を損なわずに焙煎を終了できるかの見極めが難しい。現状では焙煎温度を上げて、炒る時間もやや長めに設定して、いわゆる“2ハゼ”が起こる焙煎度合を採用しています。

後藤 それは、けっこう勇気がいりますね! ゲイシャは繊細な儚さのある豆で、そもそも「ゲイシャで缶コーヒーがつくれる」こと自体が驚きといっていい。焙煎を少しミスっただけで“らしさ”がなくなってしまうし、高価な豆でもあるから、本来の香りを残すには浅めの焙煎が無難という考え方が共通認識にあると思います。そのへんのバランスはどう取られているんだろう?と気になっていました。

中平 浅炒りで缶コーヒーを作ると酸っぱくなってしまいますので。とても技術がいるところです。

―― ゲイシャらしさを出すためのブレンドも、いろいろ試されたと聞きました。

中平 グァテマラ産ゲイシャ100%から検討を重ねて、焙煎の度合いや時間に差をつけながら、何通りも組み合わせてトライ&エラーを重ねました。ゲイシャらしさを出すことも重要ですが、いかに「ゲイシャの缶コーヒー」としての完成度を高められるか。従来のブラック缶コーヒーとは「明らかに違う」と感じられることを意識した結果、このブレンドに行き着いたということ。ゲイシャ以外のものをブレンドすることが、結果的にゲイシャのよさをより引き出す効果につながったともいえます。

後藤 このコーヒー特有の甘味の心地よさも、実はバランスありきで、単純に「ゲイシャだから」というものではないでしょう。ゲイシャは個性があってバランスがとりにくい品種ですから、ブレンダーの腕が問われるところ。このブレンドは完成されているし、とてもおいしい。素晴らしいです。


香りや味を足さない。理化学的なアプローチで「コーヒーだけで表現する」

―― 抽出についても、缶コーヒーならではのアプローチがあったのでしょうか?

中平 コクを残しながらも甘味を引き出すため、2種類の温度帯で段階的に抽出した液体を、1缶の中に詰め込んでいます。機械での抽出はドリップと違って数十分単位の長さなので、温度と時間との積算が味わいの設計に大きく影響します。

山下 だから、この立体的な香りと味の奥行が生まれるですね。大規模ロットの製品で、これだけの香りを残すのはチョコレートでも難しいこと。繊細な香りはまず飛んでしまいますから。缶コーヒーの場合は、缶に詰めた後の流通の時間が長いぶん、もっと大変でしょうね。

中平 香りは、やはりコーヒーの生命線です。プレミアムな缶コーヒーの場合、香りづけに香料を使うものも多いのですが、UCCは焙煎や抽出を含めた理化学的なアプローチで仕上げようとする。「コーヒーはコーヒーだけで表現したい」というコーヒー屋のプライドですね(笑)。特に「BLACK無糖」に関しては、その意識が強いかもしれません。

後藤 香料が入ると、一口目はおいしく感じても、コーヒーの香りがずっと口の中に残る。コーヒー好きな人ほど違和感がありますよね。

山下 チョコレートも同じ。香料の香りは平面なので、同じ強度で香りが続くと不自然さを感じてしまいます。“ゲイシャブレンド”は素材由来の自然な香りだから、消えていく変化やグラデーションが楽しめるのがいい。


変化を楽しむ。時間をかけて味わいたい缶コーヒー

―― この缶コーヒーにふさわしい飲み方、楽しみ方を提案するとしたら?

後藤 糖分やカフェイン補給のために飲む缶コーヒーとは、まったく別ジャンルの飲み物になりますよね。ドリップコーヒーやレギュラーコーヒーと同じ感覚で楽しめるけれど、わざわざ淹れなくても缶を開ければすぐ飲める。しかも、時間がたってもおいしい。アウトドアにも最高ではないでしょうか。

山下 仕事をしながらのお伴にもなりそうだし、食卓に並べて食後にゆっくり楽しむのもありかな、と。

永島 温めたものも飲んでみたいですよね。グラスに移すと甘さが開く感じがあったので、きっと温めてもおいしいはず。

中平 香りは温かいほうが立つでしょうね。

山下 温度帯や時間経過を楽しめる缶コーヒーなんて想像したこともなかったけれど、最初に缶を開けたときと今とで、もう全然味が変わっている! 缶コーヒーは忙しい中で飲むファストな飲み物のイメージが強かったのですが、これはガブガブ飲まずにゆっくり飲みたい。

永島 缶コーヒーには珍しい余韻の長さも楽しみたいですね。ワインは香りを人為的にコントロールできる部分があるので、新樽の香りや酵母由来の香りにマスキングされてしまうこともありますが、本当に素晴らしいワインは余韻ですべてがわかります。真っ当につくられたワインは例外なく余韻が長く、きれいで不自然さがない。ナチュラルかアンナチュラルかの条件ではなく、余韻の長さと美しさがワイン選びの指針になります。コーヒーも本質のところは同じではないでしょうか。

後藤 何でも共通するんですね。

山下・中平 本当にそうですね。


UCC BLACK無糖 ゲイシャブレンド リキャップ缶275g

UCC BLACK無糖 ゲイシャブレンド リキャップ缶275g
https://www.ucc.co.jp/black/

[お問い合わせ先]
UCC上島珈琲 お客様担当
TEL 078-304-8952
https://www.ucc.co.jp/customer/

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