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FEATURE / MOVEMENT

ARITAが見据えるこれからの400年

今を生きる私たちに寄り添うようなARITAの活かし方を「オルトレヴィーノ」古澤千恵さんに学ぶ

1970.01.01

text by Kei Sasaki / photographs by Hide Urabe

400年の歴史を刻んだ有田だからできること




ソムリエで料理人である夫の古澤一記さんと鎌倉でエノガストロノミア「オルトレヴィーノ」を営む古澤千恵さん。一記さんとともにイタリアで暮らした10年で、すっかりイタリアのアンティークに魅せられ、アンティークコーディネーターを一生の仕事にすることに決めました。時代の異なる、しかしどこか同じトーンを持った「オルトレヴィーノ」の家具やテーブルウエアは、すべて千恵さんのセレクト。大きなテーブルからリネンのナプキンまで、店で使われているものの多くは、購入し、持ち帰ることができます。ほかにも、食を中心にイタリアの暮らしを伝える書籍の執筆や、店舗やオフィスのインテリアプロデュースなど幅広い分野で活躍しています。「オルトレヴィーノ」の唯一無二の世界観は、千恵さんの仕事あってこそなのです。

古澤千恵さんの器選び、テーブルコーディネートは、器の世界をさらに押し広げてくれます。



テーブルコーディネートの考え方




「テーブルコーディネートは、単なる器選びにとどまりません。料理と器の相性、器同士の組み合わせ、卓上、その他空間のしつらえなど、すべてを指します。それら全体がうまく調和して、初めて“料理が引き立つ”ということになります」。料理と器の関係について尋ねると、千恵さんはそう答えました。器は、その土地の食文化と切っても切り離せないもの。例えば洋食器は手で持ち上げることはないけれど、和食器は手で持つことも、口をつけることもあります。現代の日本人のライフスタイルは、ダイニングテーブルで食事をし、畳の部屋で寛ぐといった和洋折衷型。食卓にも、和洋の料理が一緒に並ぶことが日常です。

さまざまな器を用いながら、統一感を持った食卓をつくるためには、どうしたらよいのでしょうか。

「陶器や磁器はもちろん、木や石など自然の素材からつくられる器には、和洋の垣根を越えて親和性のあるものがたくさんあります。素材の色やテクスチャー、サイズや季節感を見極めて選び並べると、きちんとまとまり、思いのほかモダンなテーブルコーディネートになることが多いですよ」。

和食器にアンティークの洋皿を重ねると、新しい風景がテーブルの上に広がりました。

染付など一見、純和風な図柄のものも、十分、洋皿やワイングラスと一緒に使えるというのが千恵さんの考え。例えば「器を重ねてみるだけで、見え方が違ってきますよ」。イタリアの食卓では器を重ねるのが一般的。大皿の上に中皿を重ね、その上にテーブルナプキンとカトラリーをセットします。「オルトレヴィーノ」でもおなじみのスタイルです。

「中皿で前菜を食べ、中皿が下げられるとパスタ皿でパスタが運ばれてくる。最後に大皿でセコンドを食べます」。これを和食器で。同じ作家の器を重ねても、相性がよさそうな洋皿と重ねてもOKとのこと。思い切って重ねてみると、なるほど、それだけで、ワイングラスやカトラリーとの相性がよくなることも。何を盛り付けるか、料理の発想も広がります。

ここで話はようやく料理と器の関係に。器選びについては。「“この料理を盛り付けたい”とイメージが沸くものを選びます」と、千恵さん。「料理にないものを器に求めて、器にないものを料理に求めます。料理があって器があり、器があって料理がある。ふたつが合わさることで、1+1=2以上、何倍もの広がりのある新しい世界が生まれるのが、器の楽しみ。そんな世界の一端をお見せできたらという気持ちで仕事をしています」。

和食器も、洋のニュアンスに変身




有田焼や唐津焼など佐賀県には、窯元ごと、作家ごとにいろんな器があります。それはすなわち「和洋折衷でも、いろんなスタイルが生まれ得るということ。佐賀の器を含む、日本の食器の楽しさではないでしょうか」と、千恵さん言います。「染付の皿なら、器に使われている絵具の中から色をひとつ決めて、それを基調色にするのは、一番シンプルな考え方。テーブルセッティングから器、料理まで、色で一貫性を演出できます」。


たとえば、乳白色の地に赤色の絵具で描かれた図柄が印象的な柿右衛門窯の器を用いるなら、赤を基調色に。テーブルクロスからお椀、カトラリーまで赤で揃えます。皿は重ねて使うことで、なるほど、洋のニュアンスに。「同じ柿右衛門窯でも緑色を拾うとまた、まったく別の表情になる。染付の器の面白さです」。


今右衛門窯の小皿は、ブルーのクロスと木地の器を合わせることで、北欧調にまとめられています。
「まず手にした時に、和食器そのものという第一印象でした。しかしながら、じっくり眺めているうちに伝統的な和の絵柄にもかかわらず、とても親しみやすい絵柄であることに気が付きました。私たちのライフスタイルに合う、すなわち現代の食卓に充分馴染む器であるのです。様々な活かし方ができますが、今回は北欧風のアレンジにしました」と、千恵さん。ティーポットに台座を合わせるなどして、高低差を生み出すことで、動きを出すのもテーブルコーディネートのテクニックだといいます。


中里太郎右衛門陶房の唐津焼の飯碗は、手に取った瞬間「トスカーナの田舎家の食器棚にもありそう」と、感じたとか。いい意味の土っぽさを持つ、ぽってりとした陶器の皿は、実際、彼の地でよく使われるもの。釉薬の質感が同調するイタリアの古いデザート皿を敷き皿にし、オリーブのボードなどを合わせれば、イタリアの食卓の風景が浮かび上がります。


弓野窯の青磁には、もっとも「日本的なわび・さび」を感じたといいます。余分なものをそぎ落とした後に初めて、独特の陰影が浮かび上がるイメージ。合わせたのはイタリアの古い大理石の皿や常滑焼の急須。敷き皿に使った錫の皿はイタリアで1700年代に使われていたもの。どれもが青磁に通じる静の美、陰影の美を持った器たちです。小鉢と皿を重ねた下に、さらに籐の皿を重ねたのは「青磁の額縁にするつもりで」と、千恵さん。額縁としての器を重ねることで、主役の器をひとつの絵のように見せるのも、コーディネートの考え方だといいます。



新たな400年は、古いものを使い継ぐことから。




「有田焼は現代の食卓にも映える。それがわかると、古い貴重な器が家庭の食器棚に眠っているという有田の人々がうらやましくなりました。なんだかイタリアみたいだな、と」。千恵さんはそう話します。

「イタリアでは、おばあちゃんが使っていた皿が大事にしまってあって、とっておきのときに使う家庭が今でも多いんです」。「この皿はね……」という物語を添えて、ひと昔、ふた昔前のものを、時代が一周回った今に使っておかしくないよう、あれこれ考えながら“使い継ぐ”イタリアの人々。「焼き物の町として400年の歴史を刻んできた有田ならば、同じことができるんじゃないかなと感じました。昔ながらの和食器という先入観を取り払い、今を生きる私たちの感覚で新しさを見出し、古いもの、昔ながらのものを、上手に生活に取り入れて楽しむこと。そこから有田焼は、さらに古くて新しいものとして続き、広がっていくのではないかと」
アンティークコーディネーターならでは、千恵さんらしい視点です。

究極の器で至福の佐賀の食!
佐賀県が誇る人間国宝と三右衛門の器をUSE(使う)!




佐賀の食材にこだわったメニューを、佐賀県が誇る人間国宝と三右衛門の器をUSEして(使って)提供します。“使う”をコンセプトにしたUSEUM ARITAならではの貴重な体験です。

会期      2016年8月11日(木)~11月27日(日)

場所      九州陶磁文化館 アプローチデッキ 「USEUM ARITA」

営業時間    10:00~16:30  ※月曜休館/月曜日が祝日の場合は会館

メニュー    朝御膳、昼御膳、スイーツセット

お食事時間帯 メニュー 税サ込価格
10:00~11:00 ブランチタイム 人間国宝、三右衛門の器を使った和食の「朝御膳」をお楽しみ頂けます。 1,500円
11:30~12:45 ランチタイム 人間国宝、三右衛門の器を使った和食の「昼御膳」をお楽しみ頂けます。 2,500円
13:00~14:15
14:30~16:30 カフェタイム 有田焼創業400年事業「ARITA EPISODE 2」開発商品はどで、スイーツとドリンクのセットがお楽しみ頂けます。 1,000円




予約受付ダイアル(USEUM ARITA内)
0955-41-9120
受付時間:10:00~16:30

お問い合わせダイアル((株)佐賀広告センター内)
0952-27-7102
受付時間:平日10:00~16:30



■USEUM ARITAでは、佐賀の食材を使った料理を、井上萬二窯(井上萬二氏)、弓野窯(中島宏氏)、今右衛門窯(今泉今右衛門氏)、柿右衛門窯(酒井田柿右衛門氏)、中里太郎右衛門陶房(中里太郎右衛門氏)という佐賀を代表する究極の器で体験頂くことができます。
待ち時間無く、快適にお席にご案内させて頂くために事前予約をお勧めしております。
■予約は、朝御膳(10:00~11:00)と、昼御膳(11:30~12:45/13:00~14:15)のお席のみとなります。
■御膳・昼御膳は、井上萬二窯セット、弓野窯セット、今右衛門窯セット、柿右衛門窯セット、中里太郎右衛門陶房セットのいずれかでのご提供となります。器は予約時にはお選び頂くことが出来ませんので、予めご了承ください。
■朝御膳・昼御膳・スイーツセットは、各日提供数を限定していますので、無くなり次第終了となります。
■20名以上のご予約キャンセルにつきましては前日50%、当日100%のキャンセル料が発生いたします。
■USEUM ARITAへの入場は無料です。





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