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FEATURE / MOVEMENT

ARITAが見据えるこれからの400年

究極の器で至福の佐賀の食
井上萬二窯編

1970.01.01

text by Kei Sasaki / photographs by Hide Urabe



加飾を抑え、形で美を追求する白磁の世界を極める。




今年創業400年を迎える有田焼の世界で、「白磁の第一人者」といわれる井上萬二さん。1995年、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定、1997年には紫綬褒章も受章している有田を代表する作家のひとりです。「年齢は重ねても、今も少年のような気持ちで作陶に向き合っています」と話す井上さん。その表情は温和ですが、表情も声も溌剌としていて、87歳という年齢を少しも感じさせません。今から40年以上前に、アメリカ・ペンシルヴァニア大学の要請で作陶指導を行った経験もあり、以来、25回に渡り渡米し、日本の伝統工芸のあり方を伝え続けてきた国際派の作家でもあります。



JR有田駅から車で約5分。井上萬二窯は、南山丁(なんざんてい)の静かな住宅街の中にあります。



有田にいるときは、1日の大半を仕事場で過ごすという井上さん。ろくろ場や窯は、自宅からもすぐ。井上さんと息子の康徳さんの作品を鑑賞できる展示室も併設されています。現在は、康徳さん、そして6年前に弟子入りした孫の祐希さんとともに作陶を行っています。

先人たちから受け継いだ技と今の感覚でものをつくる。




1929年、窯元に生まれた井上さんは、海軍飛行予科練習生として少年時代を過ごし、復員後、柿右衛門窯に学び、ろくろの名人といわれた初代奥川忠右衛門の下で技を磨きました。佐賀県の窯業試験場に13年、技官として勤め独立。87歳になった今も、創作意欲は衰えることを知らず、東京銀座・和光での展覧会開催は2016年で連続40回を数えています。

井上さんの作品は、形を突きつめ、無色のなかで美を表現する。

ものづくりの話を伺うと、まず「白磁こそが私の原点」という言葉が飛び出しました。「人間が器をつくり始めて以来、染付や赤絵などさまざまな加飾で美を表現してきました。けれども白磁は加飾をしない。形を突き詰め、無色の中でさまざまな美を表現するのが白磁の世界です」。無色透明の釉薬によって独特の艶をまとった白磁は、シャープな中に深みや温もり、気高さが宿ります。いわば形そのものが模様であり、デザインそのものといえる世界。






「作品というものは、決して偶然の産物であってはならないと考えます。アイデアやセンスだけでは本物は作れない。模倣など論外。大切なのは、先人たちがつないできた技を正しく受け継いで、今の感覚でものをつくることです」。陶芸作家は卓越した技術と、ものを生み出す創造性を併せ持った人間でなくてはならない。そこに「心」が重なることで、初めて作品が生み出されると井上さんは言います。 10年後、20年後の伝統は今しかつくれず、それを続けることでしか長い歴史は紡げない。半世紀以上、有田の歴史を見つめ続けてきたトップランナーの言葉は、創業400年の節目を迎える今、大きな意味を持つように感じられます。

「美でありながら用である」のが器の理想。





人間国宝の作品ともなると、花器や壺、大皿など観賞用の美術品に多くの注目が集まります。しかし井上さんは「有田焼は食文化とともにあるもの」と、言葉に力を込めます。1300℃もの高温で焼く磁器は、衛生的にもすぐれ、強度もある。器として使われることで、有田焼は400年の歴史を絶やさずつないで来られたのです。

「西洋を見ても中国を見ても、磁器の文化は土地の食文化と切り離すことができません。同様に有田焼は、和食の文化と切っても切れない関係にあります。例えばナイフやフォークを使って食事をする西洋の器は、大きくて重いものが多いですが、和の器は手に持ったときに感じる重量感、手や口に触れたときの心地よさなどがより重要になりますよね」。

高温で焼かれる磁器は衛生的にも優れ、強度もある。有田焼は日常使いの器として、戦後、日本の食卓を支え続けた。

器のニーズは、産業としての有田焼を支え、発展させてきました。同時に、戦後、器づくりに機械が導入され、量産化が進んだことで、伝統工芸としての有田焼は危機的な状況に陥りました。製造の合理化が、技術や伝統の継承なくしてものづくりをすることを可能にしてしまったからです。「機械が悪く、手仕事がいいという、単純な話ではありません。機械を使うときでも、手でものをつくるときと同じように考え、工夫したなら、手づくり以上に精巧なものができるはずですから」。

まずはすべてを作品としてつくること。それこそが大切だと井上さんは話します。「確かな技術と己の美的感覚で、最高の作品をつくる。これが作家の使命です。それを料理に活かすのは、料理人の技。互いの切磋琢磨があって、和食の文化は今日の発展を見たのではないでしょうか」。大正時代の民藝運動以降、工芸品は“用の美”という言葉で語られますが、「美でありながら、用でもある」ことが器の理想だと井上さんは言います。

器の表情が、料理の印象を決める
~料理家・渡辺麻紀さん~




器の使い手である料理人は、有田焼をどのように捉えているのでしょうか。料理家の渡辺麻紀さんは、「器は料理をより美しく引き立ててくれるものであってほしい」と、話します。器を選ぶ際の一番のポイントは、まず「自分が好きで、よくつくる料理に合うかどうか」。器の表情が、料理の印象を決める最後の要因になるからです。





シャープな中に温もりの感じられる井上萬二窯の器は、料理を盛るとその特徴が一層際立つ。

一方で器からインスピレーションを受けて、料理をつくることもあるといいます。「この器を使いたい。1枚の美しい器に導かれて料理をつくり始めることは、とても楽しい作業です。同時に、料理次第で器を殺しかねないという怖さもある。野菜の切り方ひとつ、あるいはわずかな薬味をのせるかのせないか。器の見え方は、そんな些細なことにも左右されます。私たち料理をする人間は、いつもそのことに自覚的でありたいと思っています」

味付けのために必要だから使う食材と、器との相乗効果を考えて使う食材。それらを的確に足し引きして、器に盛り付けた料理を目で見たときの美しさ、驚きも加味して「おいしさ」をつくる。それが「器を活かす料理人の仕事」と、渡辺さんは考えているようです。





400年を祝祭ではなく、警鐘のときに。

井上さんは有田焼創業400年の節目を「単なる祝い事で終わらせてはいけない」と言います。むしろ「警鐘の年である」と話します。「有田焼が長い歴史を重ねてこられたのは、無名の陶工たちの名品が今も残っているから。我々も、心して、平成の伝統を生み出すべく努力しなければなりません」

第二次世界大戦後、「焼けば売れる」といわれるほどの焼物ブームが訪れ、有田もその活況に沸きました。しかし、大量生産のための合理化、機械化は、人から人へ、手仕事を伝える有田の伝統を、捻じ曲げてしまった事実も否めません。「現代の世にあって、有田焼を産業として維持しながら、工芸としての高みを目指していくことは容易なことではありません。材料や燃料を買わねば作陶できないし、陶工に賃金も払わなければなりません。私たちが若い頃と違って、丁稚奉公の若者などいない時代です。そうした、現代の生産体制を受け入れ、維持しながらも、月に10日だけでも、自ら学び、創作に挑む時間を確保し、情熱を燃やすことが必要だと私は考えます」

警鐘の400年に向けて。井上さんは20年前からある取り組みを始めていました。年間20個の新作づくりを自らに課し、2016年の4月には予定通り400個の作品をつくり上げたのです。
「CREATE(創造)する心とCHALLENGE(挑戦)する心なしに有田の伝統は守れない」。昭和ひとケタ生まれの名匠は、自らの身をもってそのことを指し示し続けているのです。

究極の器で至福の佐賀の食!
佐賀県が誇る人間国宝と三右衛門の器をUSE(使う)!




佐賀の食材にこだわったメニューを、佐賀県が誇る人間国宝と三右衛門の器をUSEして(使って)提供します。“使う”をコンセプトにしたUSEUM ARITAならではの貴重な体験です。

会期      2016年8月11日(木)~11月27日(日)

場所      九州陶磁文化館 アプローチデッキ 「USEUM ARITA」

営業時間    10:00~16:30  ※月曜休館/月曜日が祝日の場合は会館

メニュー    朝御膳、昼御膳、スイーツセット

お食事時間帯 メニュー 税サ込価格
10:00~11:00 ブランチタイム 人間国宝、三右衛門の器を使った和食の「朝御膳」をお楽しみ頂けます。 1,500円
11:30~12:45 ランチタイム 人間国宝、三右衛門の器を使った和食の「昼御膳」をお楽しみ頂けます。 2,500円
13:00~14:15
14:30~16:30 カフェタイム 有田焼創業400年事業「ARITA EPISODE 2」開発商品はどで、スイーツとドリンクのセットがお楽しみ頂けます。 1,000円




予約受付ダイアル(USEUM ARITA内)
0955-41-9120
受付時間:10:00~16:30

お問い合わせダイアル((株)佐賀広告センター内)
0952-27-7102
受付時間:平日10:00~16:30



■USEUM ARITAでは、佐賀の食材を使った料理を、井上萬二窯(井上萬二氏)、弓野窯(中島宏氏)、今右衛門窯(今泉今右衛門氏)、柿右衛門窯(酒井田柿右衛門氏)、中里太郎右衛門陶房(中里太郎右衛門氏)という佐賀を代表する究極の器で体験頂くことができます。
待ち時間無く、快適にお席にご案内させて頂くために事前予約をお勧めしております。
■予約は、朝御膳(10:00~11:00)と、昼御膳(11:30~12:45/13:00~14:15)のお席のみとなります。
■御膳・昼御膳は、井上萬二窯セット、弓野窯セット、今右衛門窯セット、柿右衛門窯セット、中里太郎右衛門陶房セットのいずれかでのご提供となります。器は予約時にはお選び頂くことが出来ませんので、予めご了承ください。
■朝御膳・昼御膳・スイーツセットは、各日提供数を限定していますので、無くなり次第終了となります。
■20名以上のご予約キャンセルにつきましては前日50%、当日100%のキャンセル料が発生いたします。
■USEUM ARITAへの入場は無料です。





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