<番外編> パオロ・マッソブリオの日本滞在記
vol.1 鎌倉「ラッテリア べべ カマクラ」
2017.02.20
初来日したマッソブリオさんを、さて、どこにお連れしようか?
まず向かったのは鎌倉です。
イタリアで修業した日本人シェフたちが、現地で学んだことを日本でどんな形で表現しているのか、マッソブリオさんに見てほしい。
そして訪れたのが、ナポリでピッツァの修業をした兄と、プーリアでチーズ作りを学んだ弟が営むピッツェリア兼ラッテリア。
店に入るとショーケースには自家製のモッツァレラ、ブッラータ、マスカルポーネ、リコッタなどが並び、奥の薪窯では自家製のチーズを使ったピッツァを焼いています。
店主でチーズ職人の弟、山崎大志郎さんと一緒に、さっそく工房へ。
マッソブリオ:牛乳はどこから仕入れているんですか?
山崎:ここから車で30分くらいの牧場から仕入れています。
マッソブリオ:そこでは、どういう形で牛を飼っていますか?
山崎:牛舎です。50頭ほどの牛がいます。
マッソブリオ:品種は?
山崎:ホルスタインです。イタリアの牛とは乳質が違うけれど、日本の風土に合った牛の乳でつくる日本のモッツァレラを作っています。
マッソブリオ:そこの50頭の牛からとれる牛乳は、全て山崎さんが買っているのですか?
山崎:いえ、牧場でもジェラテリアを経営されているので、そちらで使うぶん以外の牛乳を分けてもらっています。
マッソブリオ:ラッテリアとピッツェリアを一緒にするという発想も、牧場でジェラテリアを経営するというのも、考え方が進んでいますね。こちらでは何種類のチーズを作っていますか?
山崎:モッツァレラ、リコッタ、ブッラータ、ストラッチャテッラ、カチョカヴァッロ、マスカルポーネの6種類です。味見をされますか?
マッソブリオ:ぜひ。
そして山崎さんが「チーズと一緒に」と出してくれたイタリアの土着ブドウ品種、フィアーノ・ディ・アベリーノのワインボトルを見て、マッソブリオさんから驚きの声が。
マッソブリオ:数あるフィアーノのワインから、どうやってこの造り手の1本を選べるのか……。リストに載せられる数は少ないのに、すばらしいセレクションですね。
山崎:こちらがモッツァレラとリコッタです。
山崎:ブッラータはオレガノとオリーブオイル、アンチョビーを少しと、パルマ産プロシュートと一緒に出しています。
山崎:カチョカヴァッロは両面を焼いて、ブラッドオレンジのマルメッラータを添えています。
マッソブリオ:とてもおいしいです。山崎さんはイタリアでチーズの魅力に目覚めたのですか? それとも、もともとチーズ好き?
山崎:イタリアへは料理人として修業に行ったのですが、たまたまプーリアを旅した時にチーズのおいしさを知って。それから一旦帰国して日本で働いたけれど、どうしてもチーズを学びたくてプーリアに戻りました。
イタリアではチーズは、日本のお豆腐のような存在なんですね。
新鮮な豆腐を醤油や鰹節をかけてそのまま食べるように、作りたてのチーズを買ってきてオリーブ油やオレガノをちょっと振って食べる。
そんなふうにチーズを楽しんでいるのが、とてもいいなぁと思って。
うちの店でもモッツァレラはボウルに浮かべて、近所の人が容れ物をもって買いに来られるようにしています。
マッソブリオ:そういう部分をいいなと思えるなんて、日本人の感性には驚かされます。イタリアで限られた期間修業しただけで、どうしてこんなに深いところまで理解できるのだろう……。
――短い時間で2人の間には多くの共感が生まれた様子。
すばらしい出会いに目を輝かせながら、マッソブリオさんは次なる目的地へ。