日本 [香川] 日本の魅力 発見プロジェクト ~vol.12 小豆島 ②~
オリーブ、そうめん、醤油、レモン。香りで巡る小豆島案内
2019.05.27

4代目藤井保壽氏と5代目藤井寿美子氏
蔵つき酵母が醸す鮮烈な醤油の香り
「牛」のお腹から後ろ足にかけてのエリアは、醤油や佃煮を作る工場が軒を連ねる「醤の郷(ひしおのさと)」と呼ばれる。廃墟同然の大坂城を改修するよう徳川幕府二代将軍秀忠が命を下した際、石の採掘場として海路で運搬ができる小豆島が選ばれた。採石のために小豆島を訪れた紀州藩が持ち込んだ湯浅醤油に魅せられた島民は、湯浅で醤油つくりを学び、小豆島は「醤油の島」となる。明治の頃には、最大で400軒ほどの醤油蔵があったが20軒ほどになった現在でも、醤油の生産量全国5位の香川で生産される約半数が小豆島産である。木樽仕込みの醤油は、全国醤油総生産量のたった1%で、その約1/3が、なんと小豆島産だ。
小さな蔵が守る「醤の郷」の醤油づくり

4代目藤井保壽氏と5代目藤井寿美子氏
金両醤油 藤井家は、赤穂(現在の兵庫県赤穂市)から、塩づくりのために小豆島へ渡った人々の主治医として移住。その後、塩をつくり回船問屋を営んでいたが明治13年(1880年)から醤油つくりを始めた。

直売所の隣にある醤油蔵へ一歩足を踏み入れると、鮮烈な醤油の香りに包まれる。天井を見上げると梁(はり)は「蔵つき酵母」で真っ黒だ。この酵母が創業以来、約140年もの間、金両醤油の人々とともに醤油をつくっているのだ。「小さい蔵だからこそできるこだわりの物づくりをしたい」と語る五代目社長の藤井寿美子さんは、女性ならではの視点から、新しい商品開発にも積極的に取り組む。パッケージデザインも自ら行う。

金両醤油株式会社
http://kinryo-shoyu.co.jp
香川県小豆郡小豆島町馬木甲842-1
☎ 0879-82-3333
9:00~17:00 無休
小豆島オリーブバス坂手線「安田」下車、徒歩3分

「この蔵には、ここで育まれた百数十種類のヤマロク醤油独自の菌が棲み、それらが醤油をつくります。我々の仕事は、善い菌がバランスよく生育する環境を守り、発酵の状態を見極めながら、菌が醤油をつくる手助けをすることです」と語るのは、ヤマロク醤油5代目の山本康夫氏。

ヤマロク醤油は、丹波黒豆を使用した「菊醤(きくびしお)」と2倍の原料と歳月をかけた再仕込み醤油「鶴醤(つるびしお)」の2種類のみ。「大豆と小麦と塩だけで『旨い醤油』をつくるのが私の目標です。再仕込は完成まで4~5年かかり、すぐに出来栄えを確認できないため、仕込む毎に真剣勝負です」。

「100年以上前のご先祖様が木桶を作ってくれたおかげで今、醤油つくりができている。自分たちも新しい木桶を作り、子や孫の世代に本物の木桶仕込みの醤油を残したい」木桶職人がほとんどいない現状に対し、山本氏は自ら木桶を作ることを決意。小豆島でも腕利きの大工である友人二人を誘い、『木桶職人復活プロジェクト』を立ち上げた。
ヤマロク醤油
http://yama-roku.net/index.html
小豆郡小豆島町安田甲1607
☎ 0879-82-0666
9:00~17:00 無休
草壁港から車で7分 / オリーブバス「安田」バス停下車、徒歩20分
※もろみ蔵見学は随時可能。

内陸、牛の「リブ(脇腹)」の辺りにある小豆島の絶景ポイント、渓谷の美しさで知られる「寒霞渓」までの道幅は狭く急なため、ロープウェイで上ることをお薦めする。島々が浮かぶ瀬戸内海を山頂から望む景色は、小さな島ながら、その雄大さに圧倒される。春夏秋冬を通して季節に応じた自然の美を楽しむことができる
寒霞渓(かんかけい)
http://www.kankakei.co.jp/index.html
小豆郡小豆島町神懸通乙327-1(寒霞渓ロープウェイこううん駅)
☎ 0879-82-0904(寒霞渓ロープウェイ)
8:30~17:00(季節によって異なる)
草壁港からバスにて15分「紅雲亭」下車。
レモンの香りが呼び込んだ小豆島の新たな風

「たわわに実をつけた庭のレモンの木に呼び寄せられました」と語るのは、牛のお腹の当たり、2011年にオープンした丘の上のイタリア料理店「リストランテ フリュウ」渋谷信人氏。山形出身の渋谷氏は、首都圏のレストランで経験を積んだ後、近所でとれた野菜や魚などを素材として料理を作る夢を小豆島で叶えた。「身土不二(しんどふじ)」則ち「体に最も良いのは、旬のものを食べること」という理念の下、穏やかな瀬戸内海でとれる海の幸や良質な土壌がもたらす野菜に恵まれている小豆島で、地元の人や旅人に「小豆島イタリアン」を提供している。

繁忙時には家族の手を借りることはあるが、基本的には渋谷氏が料理を作り、自ら給仕する。店内の壁と、料理を乗せる皿は白を基調に。シンプルなだけに、渋谷氏のこだわりを際立たせている。

渋谷氏は、友人のソムリエで、バーテンダーだった市川雅史氏とともに「ミノリジェラート」をオープン。小豆島産のフルーツや野菜、オリーブ、醤油、日本酒などのジェラートを楽しむことができる。「これでアイスクリームを作ってみて」と近所に住む人が、自分で作った野菜や果物を持ち込むこともしばしば。小豆島と小豆島に魅せられた人々をブレンドしてできた極上のカクテルのような店である。

リストランテ フリュウ
http://furyu.co/
小豆郡小豆島町草壁本町872-2
☎ 0879-82-2707
11:30~14:30(ランチ)、17:30~21:00(ディナーは予約のみ)
木、第1・第3水休 草壁港から徒歩5分

ミノリ ジェラート
http://minorigelato.com/
小豆郡小豆島町草壁本町1055-2
☎ 0879-62-8181
10:00~19:00 木、第1・第3水休
草壁港フェリーターミナルの前 / 草壁港バス停からすぐ
- 1
- 2