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JOURNAL / JAPAN

日本 [神奈川] 日本の魅力 発見プロジェクト ~vol.11 小田原 ②~

歴史の余韻をなぞる町 小田原の歩き方~もう少し足を延ばせば更なる魅力が~

2019.02.14

カランカラーンという鐘の音がセリの始まる合図である。黄、赤、緑色の帽子を被っている人たちが一箇所に集まる。セリの方法は、市場によって異なるが、小田原漁港では言葉、『声やり』『手やり』で決まる。一つのセリは1分ほどで終わり、セリ落とされた魚は、すぐに運ばれて行く。

<見どころ><味わいどころ>
小田原魚市場 ~相模湾からの贈り物~


さすが、ブリ御殿が建ち、多くのかまぼこ店がしのぎを削っていた明治時代の小田原には、かまぼこ通り付近に魚市場が3つもあった。大正時代に魚市場の合併が進んだことにより小田原魚市場が誕生し、その後、昭和43年に現在の小田原漁港へ移転した。

セリが始まる前から、大勢の人々が市場の中をせわしなく動いている。黄の帽子(買受人)、赤の帽子(買受人の補佐)を被っている人だけが、セリに参加できる。緑の帽子は見習いである。そして紺の帽子は、市場の関係者、つまりは売り手側だ。セリが始まる前に、落としたい魚を事前にチェックしている。主に近海の定置網で獲られた、多様な魚種が水揚げされる。



カランカラーンという鐘の音がセリの始まる合図である。黄、赤、緑色の帽子を被っている人たちが一箇所に集まる。セリの方法は、市場によって異なるが、小田原漁港では言葉、『声やり』『手やり』で決まる。一つのセリは1分ほどで終わり、セリ落とされた魚は、すぐに運ばれて行く。

「小田原早川漁村」の田川修三さん。



港に隣接するお食事処「小田原早川漁村」では、その日水揚げされた魚がメニューに並ぶ。例えば、ヤガラ、タチウオ、イボダイ、カマスのお刺身、地元ではスミヤキと呼ばれるクロシビカマスの煮付け。そして鮮度が落ちるのが早いため、漁港でしか食べることができないソウダガツオは、タタキにして「まご茶漬け」と呼ばれる地域の食べ方で頂く。さらにカマスのフライは、これまで食べたことがないほどフワフワの身。2度揚げすることによって衣がカリっと仕上がっている極上のもの。

小田原に来て、その日にこの地で水揚げされた魚を使ったご馳走を食べて始まる一日は、人生最高の日の一つとして心に残るだろう。


小田原早川漁村は、宮崎駿のアニメ「千と千尋の神隠し」に出てきたような建物で、飲食4店舗、物販1店舗が入っている。「旨いもん屋台」は、手軽なメニューが中心の店で、「小田原地魚大作戦」プロデュースの「とろサバ棒」も食べられる。80分食べ放題で海鮮バーベキューを楽しめる「漁師の浜焼きあぶりや」。相模湾で獲れる地魚をメインにした海鮮丼専門店の「海舟」。そして、カフェの湘南茶屋「ばんがさ」。「お土産処」では、干物や、小田原かまぼこなどの地元の商品が並んでいる。まさに、漁港グルメのテーマパークのような店である。

小田原魚市場
http://www.odawara-uoichiba.co.jp/
小田原市早川1-10-1
☎ 0465-22-8131(鮮魚部)
※ 魚市場見学の場合は、事前に小田原市のホームページより小田原市役所資産海浜課へ連絡が必要。

小田原早川漁村
https://gyoson.com/
小田原市早川1-9 (小田原漁港すぐそば) 
漁村の浜焼あぶりや ☎ 0465-24-7804
旨いもの屋台    ☎ 0465-24-7805
海鮮丼屋 海舟   ☎ 0465-24-7802
土産処かねよし   ☎ 0465-24-7806
10:00~22:00 ※営業時間は店舗によって異なります。 年中無休

小田原城から徒歩約20分/小田原駅から車で約10分



<味わいどころ>
鈴廣かまぼこの里  ~“昔ながら”を当世風に楽しむ~


小田原から箱根登山鉄道で2駅、「風祭駅」の近くにある鈴廣かまぼこの里には、鈴廣本店など様々な施設がある。鈴なり市場の「かまぼこバー」では、様々なかまぼこを食べ比べしながら、地ビールを味わえる。がしかし、ここでのメインイベントは、かまぼこについての豆知識を学べる「かまぼこ博物館」にある体験教室内で、かまぼこ職人さんの指導のもと、白身魚のスリミを板に乗せるかまぼこ作りの体験だ。


右手に持ったかまぼこ専用包丁ですり身を練り、左手に持った板にかまぼこ専用包丁を使ってすり身をのせていく。職人さんの模範演技を見ている時には簡単そうに見えても、実は本当に難しい。かまぼこつくり体験でよくわかった。この作業がしっかりできていないと空気の穴があいてしまう。滑らかな口ざわりのプルンとした弾力は、優れた職人技の賜物なのだ。

かまぼこ作りの後は、ちくわ作り体験。すり身を、手で棒に巻いていく作業は、想像よりもはるかに難しい。棒に巻き終えたら、すぐに焼いてくれる。焼き立てのちくわが食べられるのが嬉しい。



鈴廣かまぼこの里
https://www.kamaboko.com/sato/
小田原市風祭245
☎ 0465-24-3191
箱根登山鉄道「風祭駅」下車すぐ / 小田原駅から車で約10分
9:00~18:00(施設により異なる)
1/1休、臨時休館日あり(要確認)



<見どころ>
柏木美術鋳物研究所 ~繊細な音色の裏に隠された匠の歴史~


小田原駅東口から東の方角へ歩いて約15分。静かな住宅街の中に、柏木美術鋳物研究所はある。『新編相模国風土記稿』によれば、北条氏二代目の城主である北条氏綱の時代に、現在の大阪府にある河内国から移り住んだ山田治朗左衛門が新宿鍋町で鋳物業を営んだのが、小田原鋳物の始まりであるという。現在、小田原に唯一残っている鋳物工場の柏木美術鋳物研究所が、小田原鋳物の伝統の灯を守っている。



砂張(さはり)という名の、銅に錫を混ぜた合金で作る鋳物は、室町時代から桃山時代にかけて茶人から高く評価されていたが、今では柏木美術鋳物研究所を含めて日本に数軒しか工房は残っていない。

小田原鋳物の伝統を担う鋳物師、柏木照之氏の音色こだわりは文字通り筋金入りで、細かな金属の配合や、形、磨き方などに工夫を重ねている。一つの風鈴を作るにも、何回も何回も型を作り直すこともある。深い瞑想に導かれるような、えも言われぬ余韻が素晴らしい。店舗には、風鈴やお鈴だけでなく、型と磨きの技術の結晶でもある様々な細工物も販売されている。



柏木美術鋳物研究所
http://www.k-imono.com/
小田原市中町3-1-22
☎ 0465-22-4328 9:00~17:00   第2・4・5土曜、日曜、祝日休
小田原駅から車で5分



<見どころ>
江之浦測候所(えのうらそっこうじょ) ~小田原に生まれた未来の遺跡~


世界的な現代美術家、杉本博司氏が「構想10年、施工5年」の月日をかけて、相模湾を望む1万1500坪の斜面に実現した江之浦測候所は、小田原駅から真鶴方面へ、海沿いの道を車で20分ほど。電車ならば、小田原から東海道線に乗り、二駅目の根府川(ねぶかわ)駅で下車、無料送迎バスが便利だ。測候所という名前だけを聞いて、その全貌を想像するのは難しい、想像を超えた施設である。杉本氏の作品である写真や彫刻と、氏が若い頃から集めた作品や素材のコレクションを展示する美術館で、相模湾や小田原の自然を体中で楽しめる庭園で、空を展望する場所である。場所も、展示してある作品、建物、建材、工法など空から海に至るまでの全ての空間と、そして置かれている石一つ一つまでもが、杉本氏の美意識が創りあげた芸術品なのだ。



根津美術館にあった明月門が移築されている。

冬至光遥拝隧道と光学硝子舞台 ©小田原文化財団/Odawara Art Foundation

冬至の日、陽の光が70メートルのトンネルを貫く。

「人は、太古の昔、太陽の動きで自分の場所を知り、太陽の運行の規則性を認識することが人間の意識の始まりの行為だった」と説明する公益財団法人小田原文化財団 事務局長 ホイル治子さん。江之浦測候所には太陽の動きを感じる場所が他にもある。

夏至光遥拝100mギャラリー先端 ©小田原文化財団/Odawara Art Foundation
杉本博司氏が、人類の文明の始まりと滅びた後の美しさをも想定しながらそれを追体験する場所として作りあげた江之浦測候所。測候所という名前は、ここが宇宙と自分との距離を測るための場所であるからだとか。北条氏が鳴らした鈴の音の余韻が響き続ける小田原の地に、江之浦測候所ができたことにより、未来へと響き続ける鈴の音が新たに鳴らされたことを感じさせる。



小田原文化財団 江之浦測候所
http://www.odawara-af.com/ja/
小田原市江之浦362-1
☎ 0465-42-9170
火曜、水曜休(臨時休館日あり)
※ 見学は3時間の完全予約・入れ替え制。インターネットによる事前予約または、見学希望日当日の午前9時より電話予約。
JR東海道本線 根府川(ねぶかわ)駅から無料送迎バスあり。





Vol.11 小田原
歴史の余韻をなぞる町 小田原の歩き方
~もう少し足を延ばせば更なる魅力が~

(神奈川県小田原市 小冊子PDF)
(神奈川県小田原市 【印刷用】PDF)

※本プロジェクトは、経済産業省関東経済産業局が実施する「平成29年度地域とホテルコンシェルジュが連携した、新たなインバウンド富裕層獲得のための支援事業」と連携して、グランド ハイアット 東京 コンシェルジュ/明海大学ホスピタリティ・ツーリズム学部教授 阿部佳氏のアドバイスを得て実施しています。







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