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JOURNAL / JAPAN

【ようこそ発酵蔵へ】若き四代目が復活させた醤油造り

福岡・糸島「ミツル醤油醸造元」

2023.08.28

【ようこそ発酵蔵へ】若き四代目が復活させた醤油造り

text by Noriko Hane / photographs by Sakura Takeuchi

連載:ようこそ発酵蔵へ

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。今回は一度途絶えた技術を自身の代で復活させた、福岡の醤油醸造元を紹介します。

生揚(きあげ)醤油の自社醸造に踏み切った時、道具や設備は残っておらず、すべてを一から揃えた。

生揚(きあげ)醤油の自社醸造に踏み切った時、道具や設備は残っておらず、すべてを一から揃えた。

麹と塩水を3600Lの木桶に入れて、機が熟すのを待つ。時々撹拌して、状態を確認。

麹と塩水を3600Lの木桶に入れて、機が熟すのを待つ。時々撹拌して、状態を確認。

底をメッシュ状にして熱や湿度の管理をしやすくした麹箱。

底をメッシュ状にして熱や湿度の管理をしやすくした麹箱。

もろみを袋に入れて重ね、圧搾させる「舟搾り」。

もろみを袋に入れて重ね、圧搾させる「舟搾り」。

醤油以外の麹製品も手がける。「米麹」907円/500g、「あまざけ」416円/180g。

醤油以外の麹製品も手がける。「米麹」¥907/500g、「あまざけ」¥416/180g。


思いは変えず、手法を変える。

日本の伝統食品、と聞くと、長年にわたって引き継がれたものを思いがちだが、そればかりではない。世代交代したことで、息を吹き返したケースもある。

福岡県糸島の「ミツル醤油醸造元」がそれだ。現在の醤油業界では、各工場で醤油を醸造するのではなく、生揚(きあげ)醤油と呼ばれる中間製品を購入し、味を調え瓶詰めをして販売する方式が主流だ。「ミツル醤油醸造元」も1960年代に自社で醸造するのを辞めて、その方式に切り替えた。高品質な醤油が安定供給され、コストの面でも優れた仕組みだ。しかし、醤油屋なのに醤油を醸造していない家業の状態に疑問を持ち、40年以上途絶えていた自社での醤油造りを復活させたのが、四代目の城慶典(じょう・よしのり)さんだ。

二代前で切り替えてしまったため、醤油を醸造する技術や知識が自分の蔵に残っていない。そのため城さんは大学の醸造科学科で学び、全国各地の醤油醸造元で修業する。最新の理論と昔ながらの実践を同時進行で身につけた格好だ。そうして2009年自社での醤油醸造をスタート。2013年に初リリースとなった。

「生成り、」と名づけられたその醤油は雑味のないクリアな味わい。主張し過ぎない、ふくよかな香りが心地よく広がる。代が変わり手法は変われど、屋号に込められた「満たされる、満足していただける物作りを」の思いはしっかりと受け継がれている。

もろみを搾って火入れしただけの「生成り、」。右から「濃口」¥1,234/300ml 、「うすくち」454円/100ml。「再仕込み」¥1,566/300ml 「無肥料・無農薬」¥648/100ml。各種 1.8L、720ml、300ml、100mlがある。(価格はすべて税込み)

もろみを搾って火入れしただけの「生成り、」。右から「濃口」¥1,234/300ml 、「うすくち」¥454/100ml。「再仕込み」¥1,566/300ml 「無肥料・無農薬」¥648/100ml。各種 1.8L、720ml、300ml、100mlがある。(価格はすべて税込み)



◎ミツル醤油醸造元
福岡県糸島市二丈深江925-2
☎092-325-0026
http://www.mitsuru-shoyu.com/

(雑誌『料理通信』2018年12月号掲載)

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