HOME 〉

JOURNAL / JAPAN

【ようこそ発酵蔵へ】原材料も道具も、昔ながらのやり方で仕込む「味噌」

徳島・鳴門「井上味噌醤油」

2024.11.25

text and photographs by Hiromi Nakao

連載:ようこそ発酵蔵へ

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。徳島・鳴門の港町で150年続く、創業以来変わらぬ製法で味噌を造り続けている「井上味噌醤油」を訪ねました。

プロダクトデザイナーを志していた7代目当主の井上雅史さん。「素晴らしいものづくりが身近にあることに気付いた」と言い、伝統を継承しながら、科学的な分析によるおいしさの裏付けにも力を入れる。
受け継がれた道具と天然の蔵付き酵母のみで醸す。
若き樽職人、湯浅啓司さん。この新樽の製作を機に、仕込み木樽を専業とし、腕を磨く。

原材料も道具も、昔ながらのやり方で。

四国の東の玄関口鳴門の港町で150年続く井上味噌醤油は、創業以来変わらぬ製法で味噌を造り続けている。7代目当主の井上雅史さんは原材料や手順はもちろん、道具も代々受け継がれてきたものを使い、継承した製法を忠実に守っている。麹菌は「もろぶた」を使った技術で生育。種をつけた後は40時間寝ずの番で様子を見守り、手入れをしながら麹菌をじっくり育てていく。

「蔵に伝わる麹づくりは先人が失敗と成功を重ね、天然醸造と向き合ってきた上での技術。安易に変えてしまわないよう心がけている」と、雅史さんは言う。

原材料はすべて国産。大豆は大きな和釜で半日かけてふっくら炊き上げ、糀と塩と混ぜ木樽に仕込んでいく。後は鳴門の自然環境にゆだねて天然醸造する。現在蔵にある木樽は15本。そのうちのひとつは若き樽職人、湯浅啓司さんと2015年に作ったもの。同じ徳島に住む湯浅さんは時折蔵を訪ね、新樽とともに古い樽のメンテナンスもしている。「先祖から大切な道具を受け継いできたように、この新樽も後世へと繋げていきたい」とまっすぐに語る雅史さん。

こうして醸された味噌は5種類。長年の地元客だけでなく評判を聞きつけた遠方から、最近ではパリの星付きレストランのシェフからの引き合いもあるという。顔の見える距離感を大切にしながら「昔ながらの良い味をお届けしたい」と目を輝かせる。

左から「白味噌」1,728円、天日塩や最上級の大豆を創業当時と同じ技術で仕込んだ「常盤味噌」1,836円、「御膳味噌」1,296円、5年以上熟成させる「御膳ねさし」は2年待ち。いずれも内容量500g。


◎井上味噌醤油
徳島県鳴門市撫養町岡崎字
二等道路西113番地
☎088-686-3251
https://tokiwamiso.com/

(雑誌『料理通信』2020年3月号掲載)

料理通信メールマガジン(無料)に登録しませんか?

食のプロや愛好家が求める国内外の食の世界の動き、プロの名作レシピ、スペシャルなイベント情報などをお届けします。