手摘みで支えるクオリティ
野趣ある風味の「あおもりカシス」
未来に届けたい日本の食材 #01 カシス
2021.02.25
変わりゆく時代の中で、変わることなく次世代へ伝えたい日本の食材があります。手間を惜しまず、実直に向き合う生産者の手から生まれた個性豊かな食材を、学校法人 服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長、服部幸應さんが案内します。
連載:未来に届けたい日本の食材
青森市が日本一の生産量を誇るカシス。ヨーロッパではルネサンスの頃から親しまれてきた果実ですが、高い抗酸化作用があることで最近注目を集めています。「あおもりカシスの会」の会長として生産者を束ね、品質向上とブランド化を推進する「はやし農園」の林健司さんを訪ねました。
青森にカシスがやって来たのは、1965年、弘前大学の先生がドイツから苗木を持ち帰ったのが始まりです。植えてみたら、青森の地でもよく実る。ビタミンCを多く含むこともわかって、青森で普及させようということに。うちはもともと栗農園だったのですが、父が、おもしろいものがあるから植えてみないかと勧められて栽培を始めました。
ヨーロッパでは品種改良が進んで、大粒で、機械で摘んでも潰れにくいようになっていますが、青森では改良を加えることなく、当時のままの品種を栽培しています。だから、野趣溢れる独特の風味や酸味が生きているのだと思います。
ヨーロッパでは品種改良が進んで、大粒で、機械で摘んでも潰れにくいようになっていますが、青森では改良を加えることなく、当時のままの品種を栽培しています。だから、野趣溢れる独特の風味や酸味が生きているのだと思います。
現在、あおもりカシスの会のメンバーは100人ちょっと。会では、極力、農薬を使わない栽培に。私自身は農薬を一切使わない自然栽培で育てています。このあたりは標高が200m。朝晩の寒暖差が大きく、栽培に適しているんですね。冬は3mもの雪に全面覆われて、カシスの木はぺったんこになりますが、雪が溶ける4月頃、また、すっくと立つ。枝が柔らかく、しなやかなんです。
あおもりカシスは、粒が小さくて皮が厚いのが特徴。収穫は7月半ばの2週間が佳境です。1房の中で熟すスピードが違うので、1粒1粒、丁寧に手摘みをし、選別しています。これが意外と時間がかかる。でも、この手摘みがあおもりカシスのクオリティを支えているんです。短い旬の時期には生食もするし、ジュースにもしますが、傷みやすいので、ほとんどはすぐに急速冷凍します。東京のレストランやホテル、パティスリーにも届けていますが、会でもピュレやジャム、パウダーなどをオンラインで販売しています。ブラウニーや南部煎餅カシス味などの開発も進めています。
あおもりカシスは、粒が小さくて皮が厚いのが特徴。収穫は7月半ばの2週間が佳境です。1房の中で熟すスピードが違うので、1粒1粒、丁寧に手摘みをし、選別しています。これが意外と時間がかかる。でも、この手摘みがあおもりカシスのクオリティを支えているんです。短い旬の時期には生食もするし、ジュースにもしますが、傷みやすいので、ほとんどはすぐに急速冷凍します。東京のレストランやホテル、パティスリーにも届けていますが、会でもピュレやジャム、パウダーなどをオンラインで販売しています。ブラウニーや南部煎餅カシス味などの開発も進めています。
せっかく旬の時期にいらしたのですから、搾りたてのジュース、飲んでみてください。果実と水を同量合わせて煮て、甜菜糖を加えたものです。濃厚でおいしいでしょ。暑い時期にこれを飲みながら仕事すると、夏バテしない。カシスは、抗酸化成分であるポリフェノール、中でも、眼精疲労の軽減や目の下のくまの緩和にも効果があるといわれるアントシアニンを多く含んでいて、健康にも美容にもいいものなんですよ。
あおもりカシスは、農林水産省が地域ブランドを保護する「地理的表示保護制度」の登録第1号。これからも会を挙げて、カシスの品質向上に努めていきます。
あおもりカシスは、農林水産省が地域ブランドを保護する「地理的表示保護制度」の登録第1号。これからも会を挙げて、カシスの品質向上に努めていきます。
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