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JOURNAL / JAPAN

日本の食 知る・楽しむ

明神甘酒「天野屋」 since 1846

連載 ― 世界に伝えたい日本の老舗 服部幸應

May 01, 2016

明神甘酒は400円。甘塩っぱい久方味噌を合間につまみながら飲むと、甘味がさらに引き立つ。すっきりとやさしい後味は老若男女にファンを持つ。酒粕から造る甘酒とは違うため、アルコールはゼロ。

text by Michiko Watanabe / photographs by Toshio Sugiura

神田明神の鳥居横に店を構える「天野屋」は、今、大ブームの発酵食品の元祖的存在です。名物は芝崎納豆に味噌、そして甘酒。昔懐かしい小物に囲まれた喫茶でいただく甘酒は、滋味に富み、体にすーっとしみ渡っていくようです。甘味は、お米の甘味。そして糀の力からなります。その秘密は地下に広がる土室に? 6代目、天野亀太郎さんにお話を伺いました。

100%お米から造られる自然の甘味

初代がここに店を構えることになった理由は、なんと仇討ち。仇を捜して京都から出て来たまではよかったけれど、結局見つからず、定住することにしたようです。江戸総鎮守である神田明神には江戸中の人が訪れる。近くで商売を始めれば、そのうち仇も見つかると思ったのかもしれませんね。

当初はどぶろくからスタートしたそうですが、明治時代、酒税法が厳しくなったのを機に、甘酒だけに絞ったと聞いております。

店は神田明神の鳥居のすぐ横。右側はテイクアウト用の甘酒(350 円)や納豆、味噌、土産物のショップ、左側が甘味処になっている。

甘酒の歴史、実はとても古いんです。西暦700年代には中国から日本に入ってきています。ただ、中国にはもう残っていないそうですね。まずは甘酒をどうぞ。ほんのり甘いでしょう。でも、加糖しているわけではありません。自然の甘味です。

添えてありますのは、なめ味噌の久方味噌。もちろん、自家製です。醤油、みりん、ショウガ、炒り大豆などを混ぜております。甘酒は温かいものばかりでなく、きりっと冷やした冷やし甘酒や、夏場は氷甘酒もご用意しています。

天野屋は甘味処としても人気。手入れの行き届いた坪庭、鉄道模型やたくさんの振り子時計が壁に並び賑やか。年季の入ったテーブルや椅子も味わい深い。


海外からのお客さんに質問を受けることが多いため、店の入り口には英語でメニュー解説を貼っている。

土室は以前は90坪弱ありましたが、今使っているのは10坪ぐらいでしょうか。温度18〜20℃、湿度98%以上をキープしています。甘酒造りは、4日かけて米糀を造るところから。

1日目。まず、うるち米を洗って水に浸ける。2日目の朝、水をきって蒸籠で蒸す。体温ぐらいまで冷めたら、糀菌を植え付けて地下の土室へ。毛布にくるんで寝かせます。夕方になったら、ご飯を広げてほぐし、翌朝の発酵に備えます。

3日目の朝から、38〜40℃、湿度90%以上の発酵室で20時間かけて一次発酵。途中、何度かほぐし、4日目の朝、糀として完成します。次に、糀と同量のご飯を合わせ、60℃の部屋で10時間おくと、甘酒ができ上がります。

そこからさらに、常温で2日ほどおいて、お客様にお出ししています。毎日、こまめに面倒を見なくてはいけないため、職住接近でないと続けるのが難しい仕事です。長く家を空けることもできません。

6 代目の天野亀太郎さん。糀相手の仕事は24 時間。朝から夜中まで面倒をみながら、日々、店の味を守り続ける。

甘酒と並ぶ人気が芝崎納豆。びっくりしましたか。かなりの大粒でしょう。豆をしっかり味わいたい人のための納豆です。産地は北海道、青森、秋田など。大豆は水に浸した翌日、圧力釜で蒸し、納豆菌をふりかけて熱いうちに小分けします。室温40℃、湿度98%以上で20時間おいて完成です。最近はこの納豆を用いた、おつまみ納豆やふりかけも好評いただいております。東京土産にいかがですか。

超大粒の芝崎納豆は1パック368 円。豆を味わいたい人のための納豆。海苔に巻いてお酒のおつまみにも。



◎天野屋
東京都千代田区外神田2-18-15 
☎03-3251-7911 
10:00~18:00(祭日は~17:00)
日曜休(12~3月無休)
JRお茶の水駅より徒歩3分

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