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JOURNAL / 世界の食トレンド

Australia [Sydney]

乳製品好きが注目するエシカルな酪農牧場

2021.06.21

  • text by Akiko Ganivet



  • 酪農国家オーストラリアでも動物愛護を謳うヴィーガンは増加中だが、乳製品だけはやめられないという人は少なくない。アニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮した牛乳「カインドミルク」を生産しているビクトリア州「ハウナウ牧場」では、2021年4月よりフェタやブルーチーズも販売し始め、注目を集めている。

    オーナーのキャシー・パーマーさんは、元々音楽関係の仕事をしていたが、動物愛護活動家としても活躍していた5年前に、酪農家の夫とハウナウ牧場を始めた。

    一般的な放牧兼牛舎飼いの酪農牧場では、子牛は生まれてすぐに母牛から引き離され、代用乳(粉ミルク)が与えられるか、オスの場合はすぐに屠畜されてしまうケースが多い。完全放牧のハウナウ牧場では、子牛は母牛と暮らし、草が食べられるようになる生後4カ月まで母牛の乳で育つ。人工授精によって、将来的に乳牛となるメスの子牛の出産を促すが、その間も、母子共にできるだけ手厚く育てている。

    牧場拡大や生産量を上げるために頭数を増やす牧場が多い中、「ハッピーな牛の面倒を見るには100頭が上限」とパーマー夫妻は決断した。64エーカー*に及ぶ草原に戯れる牛たちは、「気の合う仲間を見つけて子育てを楽しんでいる」とキャシーさんは話す。

    他の牧場で飼われていた周囲になつかない“荒れた牛”を引き取ることも。愛情を込めて育て、立派に育つ様子を、ソーシャルメディアを通じて発信するという。ネットでは、ハウナウ牧場のような「エシカルな生産者を応援したい」という共感の声も高まっている。

    *平米に換算すると25万8999平方メートル。サッカーコート約36面分。

    (写真)ハウナウ牧場が販売するミルク(7.65豪州ドル/2リットル)とチーズ(9.5~15豪州ドル)。一番人気は、クリーミーでカマンベールに似たウォッシュチーズ(15豪州ドル)。経営のコスト削減など課題はまだ残るが、次の挑戦はサワークリームの生産だ。




    ◎How Now Dairy
    https://hownowdairy.com.au/

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