テート・モダンでアートを味わう。フリーダ・カーロに捧げる料理
England [London]
2026.07.09
text by Yuka Hasegawa
メキシコを象徴する伝統的なソース「モレ」と、トウモロコシの皮で包んで蒸し上げる伝統料理タマルで構成したメインの一皿「フリーダのモレ(Frida’s Mole – Short Rib Tamal)」。夫ディエゴ・リベラとの愛、そしてメキシコの伝統とクラフトマンシップを表現している。photograph by Ana Blumenkron
2026年6月下旬、ロンドンを代表する現代美術館「テート・モダン」で、大規模展覧会「フリーダ Frida:The Making of an Icon」が開幕し話題を呼んでいる。20世紀を代表するメキシコ人画家、フリーダ・カーロの30点を超える代表作に加え、愛用品や写真、ジュエリー、さらには彼女に影響を受けたアーティストたちの作品200点以上などを展示。単なる回顧展ではなく、妻、知識人、革命家、ファッションアイコンと、様々な顔を持つフリーダが、いかに世界的な文化現象となっていったのかを紐解く意欲的な内容となっている。
注目を集めているのが、同展と連動してテート・モダン6階のレストランで提供されている特別メニューだ。手がけるのは、ミシュラン一ツ星を冠し、「世界のベストレストラン 50」に毎年ランクインしているレストラン「KOL」を率いるメキシコ人シェフ、サンティアゴ・ラストラ(Santiago Lastra)氏。
「テート側からは、“フリーダ・カーロ展に合わせたメニューを作ってほしい”とだけ依頼されたのですが、私は、メニューも展覧会の一部にしたいと考えました」
まずラストラ氏は、フリーダが滞在したことがあるというパリを訪れ、彼女の日記や関連書籍を読み漁った。さらにメキシコへ足を運ぶなど10日間かけてフリーダの足跡を辿り、メニューのコンセプトを醸成していったという。
メニューは3皿で構成されている。肉厚な質感と深いフレーバーを持つヘリテージトマトのセビーチェと、自家製トスターダにキャベツ由来の青いソースをブラシで塗りながら味わう前菜は、まるで絵を描くような趣向。ラストラ氏ならではの遊び心に満ちている。メインは、フリーダの夫で、メキシコを代表する壁画家ディエゴ・リベラ氏の好物で、彼女がよく夫に作ったというメキシコの伝統料理モレ・ポブラーノを使った一皿。そしてデザートは、フリーダの晩年の作品、有名なスイカの絵《Viva la Vida》をモチーフとした、赤、緑、白の3種類のソルベ。
「多くの病や痛みを抱えながらも、人生を愛し、ユーモアを忘れなかったフリーダの生命を謳歌する精神が宿ったこのスイカの作品を、料理で表現してみました」
メキシコには「死者の日」という伝統行事があり、亡くなった人が生前好きだった料理を用意し、その人を迎える習慣がある。ラストラ氏のメニューもまた、もしフリーダが戻ってきたなら食べてくれるかもしれない、そんな想像から生まれた。
「このメニューは、フリーダの好きなもので構成した、メキシコが生んだ偉大な芸術家へのトリビュートです」と氏は語る。
アートを「見る」から「味わう」へ。食を通してフリーダの生涯に寄り添った今回の試みは、ガストロノミーが文化や記憶、そして人の人生を伝える豊かな表現手段となり得ることを、静かに物語っているようだ。
◎SANTIAGO LASTRA X TATE A MEXICAN MENU INSPIRED BY FRIDA KAHLO
6月25日~8月31日までの期間限定特別メニュー
特別メニューはランチタイム、ディナータイム(金曜、土曜のみ)に提供
オンラインで要予約
66ポンド(展覧会のチケット込み、Tateメンバーは41ポンド)
https://www.tate.org.uk/whats-on/tate-modern/frida-kahlo-the-making-of-an-icon/santiago-lastra-x-tate
*1ポンド=213円(2026年6月時点)
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