バー業界の人手不足を解消 タップで注ぐカクテル&缶入りプレミックスに注目
Germany [Berlin]
2023.11.13
text & photographs by Hideko Kawachi
(写真)カクテルの香りや味を、フレッシュなまま瓶やタンクに閉じ込める方法を開発したというベルギー発のプレミックス「WEEKEND®」。見本市「バー・コンヴェント・ベルリン」ではボトル製品の他、タップで6種類のカクテルを提供していた。
ヨーロッパ最大級のバー専門フェア「バー・コンヴェント・ベルリン(BCB:BAR CONVENT BERLIN)」が2023年も開催。10月9~11日の3日間で、世界91カ国から1万5000人以上のバー関係者が集まり、大変な盛り上がりを見せた。
大手メーカーから小さな蒸留所まで544社のスタンドがひしめき合う中、多く目に留まったのは意外なものだった。それは、ビアホールでよく目にするビールサーバーの注ぎ口「タップ」。ほぼ全てのスタンドにバーテンダーが常駐しているのに、ハンドルを倒すだけでドリンクが出るタップ? その背景にあるのは、昨今の人手不足だ。
サステナブルな働き方のためには、定番カクテルはタップ提供にしてもよいのでは、と提案していたのは、北欧のバーシーンを牽引するオスロの「ヒムコック(Himkok)」マネージャー、マロシュ・ズルス(Maros Dzurus)さんだ。ヒムコックは蒸留所を併設して自家製スピリッツを作ったり、リンゴ農家とジュース(サイダー)を開発したりするなど、単なるバーに留まらない総合的な活動を行う先駆的存在。様々なフェスを企画する彼らは、イベントなど大勢の客に速く、均一のクオリティで提供しなければいけない時にタップが便利だという。
缶入り・ボトル入りカクテルもここ数年でポピュラーな存在に。今回、60社近いメーカーがプレミックス(Prepared mix=あらかじめ混ぜた)・カクテルを出展していた。ポップなミニ缶をブース前に並べ、会場ではタップで提供していた「ココリコ(COCKORICO)」は、フランス・リヨン発のプレミックス・カクテルメーカー。創業2019年、これまでフランス国内のみで展開していたが、ペルノ・リカール社の後押しの下、23年から世界展開に乗り出した。
ガソリンスタンドのようなタップで目を引いた「ディスカーデッド・スピリッツ(Discarded Spirits Co.)」は、捨てられたバナナの皮やコーヒーかすなどを使ったゼロウェイストに取り組むスピリッツブランド。実は、タップやプレミックスの導入は、カクテルを作る時に出るゴミも少なくて済むというメリットもあるのだ。
どんな業界でもサステナブルな意識が求められる昨今。タップやプレミックスは、一時のブームに留まらず、未来のバーの主流になるのかもしれない。
◎BAR CONVENT BERLIN
https://www.barconvent.com/
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