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JOURNAL / 世界の食トレンド

オープンファイヤーレストランが続々開店。物価高騰で外食は“特別な体験”に

Germany [Berlin]

2023.07.20

オープンファイヤーレストランが続々開店。外食は“特別な体験”に

text by Hideko Kawachi / photographs by Gianni Plescia

夏になるとBBQを楽しむ機会が多いドイツ。今年は“体験型”ともいえるオープンファイヤーレストランが次々とオープンしている。背景にはインフレによる食品価格の高騰(昨年比+22%)や光熱費の値上がり、人手不足などにより料理の値段が跳ね上がり、外食が特別なエンターテインメントとなっていることもあるだろう。

中でも予約が取れない店として人気なのが「エンバー(Ember)」だ。2023年6月、ベルリン市内にオープンしたばかりの同店は、なんと工事中のビルのルーフトップにある。工事現場の足場をくぐって、ギシギシ揺れるエレベーターに乗り、最上階に到着するとテラスから香ばしい香りと煙が漂ってくる。

オーナーシェフ、トビアス・ベックはアルゼンチンの薪火料理の“火の神”フランシス・マルマンの下で学び、食材を直火で調理する魅力に開眼。その後、日本の焼き鳥やウナギの炭火焼きの調理技術に触れたいと、数カ月、金沢の居酒屋で研修した。


(写真)シェフのトビアス・ベックは29歳。日本から持ち帰った炭火コンロに炭を入れて団扇であおげば、香ばしい香りが客席まで漂ってくる。

(写真)シェフのトビアス・ベックは29歳。日本から持ち帰った炭火コンロに炭を入れて団扇であおげば、香ばしい香りが客席まで漂ってくる。

メニューはコース1種類とサイドメニューのみ。メインのサバは薪火の炎で皮目を焦がし、提供する前にソースと共にさっと炙る。サワードウで作るフラットブレッドは炭火台にのせて鍋で蓋をして焼くことで、食感のコントラストと小麦の甘さを引き出す。焼き鳥は甘めのたれを何度も刷毛で塗り、花椒とゴマで仕上げ。口の中で肉汁が弾ける人気のサイドメニューだ。全面ガラス張りの客席からはテラスで調理している様子が見え、燃え上がる炎に歓声が上がる。

料理を堪能して帰宅すると、体から燻製のような深く甘い香りが漂った。味覚だけではない、五感を刺激する忘れ難い体験を提供する――それがオープンファイヤーレストランなのだと実感した瞬間だった。

(写真トップ)自分たちで溶接して作った鉄のテーブルの上で薪を組んで、火を熾す。薪には近隣の森から届くブナやリンゴなどを使い、食材によって使い分ける。「肉や魚は直火で焼くと表面がパリッとなり、火の中に滴る脂がおこす煙が香りのカギとなる。原始的だが最大限に食材の力が引き出される調理法だと思う」

(写真)新鮮なサバは強い炎で皮目をさっと焦がしてからソースと一緒にステンレス皿にのせ、熾火の上で熱して香りを立てる。

(写真)新鮮なサバは強い炎で皮目をさっと焦がしてからソースと一緒にステンレス皿にのせ、熾火の上で熱して香りを立てる。

(写真)ラムのタコス。オイルマリネした仔羊肉を、薪の香りを纏わせながらゆっくり火を入れてほぐし、スパイシーなチャツネや歯応えを残したパプリカと共に焼きたてのトルティーヤにのせた。

(写真)ラムのタコス。オイルマリネした仔羊肉を、薪の香りを纏わせながらゆっくり火を入れてほぐし、スパイシーなチャツネや歯応えを残したパプリカと共に焼きたてのトルティーヤにのせた。

(写真)教室を思わせる簡素なスツールとテーブルを並べて客席に。手前のテラスにテントを張ってキッチンにしている。

(写真)教室を思わせる簡素なスツールとテーブルを並べて客席に。手前のテラスにテントを張ってキッチンにしている。



◎THE EMBER ROOFTOP 
住所非公開
18:30~23:30
日曜~水曜休
要予約
4皿のコース 68ユーロ(ドリンク別)
https://ember-ofc.com/

*1ユーロ=157円(2023年6月時点)

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