酢酸アカデミーから誕生したイタリア初バルサミコ酢のノンアルコール飲料
Italy[Saronno]
2024.05.09
text by Mika Hisatani / photographs by Acetyca
(写真)自然な酢の色を反映した琥珀色のドリンクは、とてもナチュラルな味わい。果汁やリキュールと混ぜればカクテルにもなる。
北イタリア・ロンバルディア州サロンノにある「アチェティカ(Acetyca)」社は、酢酸菌に特化したバイオテクノロジーの研究と酢酸文化の普及を目的としたベンチャー企業。フードコンサルタントで実業家のパオロ・トゥッチと、料理人のベアトリーチェ・グッツィ、レッジョ・エミリアのバルサミコ酢生産者「アチェタイア・サン・ジャコモ(Acetaia San Giacomo)」のアンドレア・ベッツェッキが立ち上げた。
同社初の商品が、酢を使ったノンアルコール飲料「アチェティコ(Acetyco)」だ。イタリアが誇る伝統食材バルサミコ酢の新しいアプローチでもある。原材料に、アチェタイア・サン・ジャコモの有機リンゴと白ブドウを木樽で長期発酵させた有機ビネガーを使用。マンダリンやレモンなどの柑橘エキスも加え、フレッシュでほろ苦い印象をもたらしている。焼きリンゴの香りやきめ細かな酸がもたらす爽やかな飲み口が特徴だ。
アチェティコは、古代ローマ人が喉の渇きを癒すために飲んでいた「ポスカ(水と酢を混ぜた飲み物)」に基づいている。ローマ軍のエネルギー補給と健康を保つ秘訣とも呼ばれていた。しかし最近の若年層は酸っぱい味わいを避ける傾向にあり、糖分や脂肪が含まれている食品や飲み物がより求められる。
さらに、近年のコンテンポラリーなイタリア料理は、日本の“旨味”や北欧の“塩味”など、地中海料理のルーツではない要素で溢れているとトゥッチ氏は指摘する。二ツ星シェフ、ダヴィデ・オルダーニの酢を使ったミラノ風サフランのリゾットや、ローマの女性シェフ、サラ・チコリーニの赤ワインビネガーをしのばせたアマトリチャーナなど、酸味を押し出すのではなく、味のバランスを調整するため酢を使う程度だ。酢は古くから存在するイタリアの伝統食品なのに、オリーブオイルやワインのように語られることも少ない。同社ではあえてスポットの当たらない“酸”を研究し料理界に一石を投じたいという。
アチェティコは、平日のランチなどアルコールが憚られるシーンの新しいドリンクとしてもおすすめだが、日本の飲食業界に精通しているトゥッチ氏は、「居酒屋で最初の1杯はビール、2杯目以降はアチェティコという楽しみ方ができるのでは」と提案する。「揚げ物にはもちろん、漬物がこの酸味と合いそうだ!」と頬を緩める。
様々なシーンに応用できるバルサミコ飲料アチェティコ。現代版ポスカになり得るか!?
◎Acetyca
https://acetyca.com/
*1ユーロ=167円(2024年4月時点)