キーワードは“おばあちゃん”。フィレンツェに誕生した心休まるオールデイ・カフェ
Italy [Firenze]
2024.08.26
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text by Manami Ikeda
(写真)アフタヌーンティは「ワンダ・カフェ」のこだわりの一つ。紅茶のセレクション、エレガントなティーセット、自家製の焼き菓子までエンリカ自身が心を配っている。photo by Olivia Magris
女性が働くことが当たり前になった現代、マンマの味という言葉は影が薄れ、代わりにノンナ(おばあちゃん)が頻繁に言われるようになった。手間と時間をかけて家族のために食事を作るのはもはや、おばあちゃんの世代に限られているようだ。そして、そんなノンナと過ごした時間が原点になって料理の道を志す人も少なくない。
フィレンツェ生まれのエンリカ・デッラ・マルティーラもその1人。子供の頃、おばあちゃんがクリスマスプレゼントとして渡してくれたレシピが何よりも嬉しかったという彼女は、ホテル学校などには通わず、そのレシピと、長じてから旅したNY、ロンドン、フランスでの体験を元に独学で腕を磨いてきた。料理人が通常歩むコースからは外れているが、人気料理対決番組「マスターシェフ」に出場するなど、着実に実績を積んでいる。

2024年3月、初めて自身の店としてオープンした「ワンダ・カフェ(Wanda Caffè)」も、おばあちゃんの家で寛ぐような気分を味わえることが一番大切なコンセプトだという。メニューは朝食からランチ、アフタヌーンティ、アペリティーヴォまで一応カテゴライズされているが、1日のどんな時間帯でも好きなものがオーダーできるようになっている。アボカドトースト、スマッシュバーガー、パンケーキといったインターナショナルなアイテムと共に、本日のパスタ料理、おばあちゃん直伝「ヴィテッロ・トンナート」、「パッパ・アル・ポモドーロ」などもある。そして、戦後のハイカラ料理の象徴「チキンカレー」は、おばあちゃん料理の定番中の定番だ。
どの料理も丁寧に作られた家庭の味を思わせ、何よりも食後感が軽い。老舗のどっしりした伝統料理とはまた違った“イタリアの味”が楽しめる希少なスポットだ。


◎Wanda Caffè
Via Pisana, 12/14r Firenze
☎055-0161009
https://www.wandacaffe.com
*1ユーロ=160円(2024年8月時点)