栄養価が高くてサステナブル。食用カタツムリは未来の重要な食糧となるか?
Sweden [Vingåker]
2024.12.26
text by Sakiko Jin / photographs by CALE Jonstorp Escargotsfarm
古代ローマ時代より、そのおいしさと栄養価の高さから人々を魅了してきた食用カタツムリ。フランス語でエスカルゴと称し、大昔は珍味として、また中世ヨーロッパでは高級食材としてその名を轟かせていた。
スウェーデンで唯一の食用カタツムリ農園「カーレ・ヨンストルプ・エスカルゴファーム(CALE Jonstorp Escargotsfarm)」が、ストックホルムから南下すること約180km、スルムランド(Sörmland)州のヴィングオーケル(Vingåker)という小さい町にある。ベルギー人のカリーナがスウェーデン人のレーナと出会い、金融業界での長いキャリアを捨ててスウェーデンに引っ越し、農園を始めたのだ。
カリーナの出身国であるベルギーは、お隣のフランス同様、食用カタツムリとは馴染みが深い。第2次世界大戦前後は多くの家庭が自家菜園と共に食用カタツムリも育てていたという。
カーレ・ヨンストルプファームで扱っているのはグロ・グリ種(学名:Helix Aspersa Maxima)。味が良くスウェーデンの気候に合うためだ。1回の交尾で約100個の卵を産み、7カ月後には大人になり食べられる。8℃以下になると冬眠に入ってしまうので、5月から10月の初めが旬だ。
食用カタツムリの肉は脂肪分ゼロ、ミネラル、特にマグネシウムや鉄、そしてプロテインが豊富で栄養価が高く、牛肉や豚肉の代わりに十分なり得る。サステナ面でも生育に広大な土地を必要としないばかりではなく、水や飼料もたくさんは要らない。また糞尿もそれほど出ないのでカーボンフットプリントがかなり削減されるのだ。
養殖カタツムリは生育環境を厳密に管理することが出来るため、病原菌の心配がなく、徹底した衛生管理が出来るのも利点だ。同ファームではカタツムリの飼料は小麦粉と野菜。小麦粉は同地域で栽培される高品質の小麦粉、野菜は自分たちの農園で育てている。
カリーナの母国ベルギーでは年間275トンのカタツムリが食される。リサーチにリサーチを重ね、ベルギーにある食用カタツムリの養殖学校でも勉強したカリーナ。スウェーデンの農園に一目惚れし自身の夢を叶えると同時に、当時のスウェーデンのレストランでは缶詰ものしか使われていなかった現実に、市場のポテンシャルをも見出した。カリーナのスウェーデンでのカタツムリ旋風は始まったばかりだ。
◎CALE Jonstorp Escargotsfarm
https://calejonstorp.se