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JOURNAL / 世界の食トレンド

フランス、イタリアだけじゃない。スウェーデンが誇る原産地呼称製品

Sweden[Stockholm]

2024.04.25

フランス、イタリアだけじゃない。スウェーデンが誇る原産地呼称製品

text by Sakiko Jin
(写真)PGIチーズ「スルムランズ・エーデル」の素となる乳は、セーデルマンランド県内で放牧された指定牛のもので、他の牛に比べて脂肪分とプロテイン含有量が高い乳牛だ。photo by Johan Carlson

ヨーロッパには原産地呼称保護(PDO)と地理的表示保護(PGI)が飲料・食料合わせて約3500銘柄ある(スウェーデン農業委員会調べ)。フランスのシャンパーニュやイタリアのパルマハムは言わずと知れたPDOの例だ。

スウェーデンにはPDOとPGIが合わせて21製品あり、世界的にも知られているのは「アブソリュート・ウォッカ(Absolut Vodka)」でも知られるスウェーデンウォッカ(PGI)だろう。南部スコーネ地方の焼き菓子「スコンスク・スペットカーカ(Skånsk Spettkaka)」や、中部に位置する町グレンナ(Gränna)の赤白の縞模様のねじりキャンディ「エクタ・グレンナ・ポルカグリーサル(Äkta Gränna Polkagrisar)」もスウェーデンを代表するPGI製品だ。


新鮮な卵とジャガイモでんぷん、砂糖が原材料の「スコンスク・スペットカーカ」

(写真)新鮮な卵とジャガイモでんぷん、砂糖が原材料の「スコンスク・スペットカーカ」。材料を緩いペースト状に混ぜて絞り袋に入れ、回転する機械に絞りかけて焼き上げる。高温のオーブンを前に、一層が完全に焼き上がってから次の層を手作業で絞るため、時間も労力も半端ない。photo by Eriksgården

アメリア・エリクソン(Amelia Eriksson)というスウェーデン人女性が発明したキャンディ「エクタ・グレンナ・ポルカグリーサル」は、1859年にグレンナの町から製造の許可を得た。

(写真)アメリア・エリクソン(Amelia Eriksson)というスウェーデン人女性が発明したキャンディ「エクタ・グレンナ・ポルカグリーサル」は、1859年にグレンナの町から製造の許可を得た。1945年に南のヘルシンボリからストックホルムまでの高速道路ができ、販売と知名度にさらなる拍車をかけた。photo by Grenna Polkagriskokeri AB

2023年、新たにPGIの認定を受けたのは「スルムランズ・エーデル(Sörmlands Ädel)」と呼ばれる青カビチーズだ。ストックホルムの南に位置するセーデルマンランド県内の4種の決められた乳牛からの乳を72℃で15分間殺菌し、脂肪分は最低3.5%。牛乳、乳酸菌、青カビ菌、ホエイプロテインと塩のみで作る。程よい酸味があり、他の青カビチーズに比べるとマイルドな味だ。

PGIに比べてより厳しい基準が設けられているPDOには、北欧らしく魚卵製品もある。2010年に認定を受けた「カリックス・ルイロム(Kalix Löjrom)」だ。マス科の魚である「シークルイヤ(Siklöja)」は、スウェーデン北部の町ハパランダとピーテオ間だけで漁獲されるもの。漁猟期間は9月20日から10月25日までの日曜日から木曜日まで、週5日間の決められた時間のみだ。魚が水揚げされてから24時間以内に処理を施し、魚卵は全て手で取り除かれなければならず、塩分は4%と決まっている。

スウェーデンが誇るオレンジ色の魚卵製品「カリックス・ルイロム」

(写真)スウェーデンが誇るオレンジ色の魚卵製品「カリックス・ルイロム」は、1kgの値段が2000~3000SEKにもなる、まさに金の卵だ。photo by Håkan Stenlund

PDOもPGIも製品の品質や評価が原産地に由来することを表示し、知的財産権の一つとしてEU圏内で保護する制度だ。フランスやイタリアに比べるとまだ遅れをとっているスウェーデンではあるが、認定申請への品は毎年増えている。

世界に誇れるスウェーデンの知的財産になり得る産物がまた新たに生まれるか楽しみだ。



◎Smaka Sverige Jordbruksverket
スウェーデンを味わう~スウェーデン農業委員会
Instagramアカウント:@smakasverige

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