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JOURNAL / 世界の食トレンド

農家が育てた作物を餌に、耕作放棄地で魚を養殖。スウェーデン発完全循環型プロジェクト

Sweden [Skåne]

2025.06.19

農家が育てた作物を餌に、耕作放棄地で魚を養殖。スウェーデン発完全循環型プロジェクト

text by Sakiko Jin
耕作放棄地に作られた陸上養殖場。広大な土地の施設はサステナビリティを考慮して太陽エネルギーや風力エネルギーなどのグリーンエネルギーで操業している。

スウェーデン南部スコーネ地方にある「Gårdsfisk(ゴーズフィスク)」は、2020年に創業し、耕作放棄地を活用した魚の陸上養殖会社だ。

創業当初は耕作放棄地に巨大な水槽施設を設け、自分たちだけで運営していたが、当初の目標の一つでもあった、地域循環型産業に一歩一歩確実に発展している。陸上養殖に興味を持ち、自らも参加したいという農家が増えたことに加え、その農家が育てる野菜や穀物を魚の餌としているのだ。養殖した魚の加工も契約農家が参画し、現在商品ラインナップはフィレ、ミンチ、フィッシュボール(冷凍)をはじめ、全7アイテムまで広がっている。

餌作りから、飼育、加工、販売まで全ての工程がスコーネ地方にある契約農家内で行われるため、魚は全て、スウェーデン国産の認証印*が付いている。WWF(世界自然保護基金)のシーフードガイドでは、魚の種類、漁法共にサステナビリティ評価が高い“グリーン印”を獲得している。

*Svenskt Sigill:サステナビリティを考慮した質の良い食料品と生花に付与されるスウェーデンの認証制度

ルードストリンマ(ティラピア)のフィレ
ルードストリンマ(ティラピア)のフィレ。皮目が赤くキンメダイを思わせる白身魚だ。99スウェーデンクローナ/250g。
ナマズ系のクラリアス
ゴーズフィスクの看板魚でもあるナマズ系のクラリアス。背身で85スウェーデンクローナ/250g。

商品ラインアップの増加に伴い、魚の加工からパッケージ化までの過程、水使用量の効率化などを推進。また魚の糞がどれだけの栄養素を持って、どれだけ農作物の肥料として使えるかも重要な研究対象の一つになっている。

魚を食べたい、でも過剰漁業などを考えると――と躊躇する消費者も安心して購入できるように、参画している農家はゴーズフィスクの考えに賛同した未来の環境を考える作り手でもある。100%完全循環型産業もそう遠くはない未来だろう。

巨大な水槽施設
バイオフィルターで新鮮な水を保有できる水槽は様々な面で管理が行き届くのも利点。ナマズ系のクラリアスとレッドスナッパー2種を主に飼育する。混泳に耐えられる魚種を選び、共食いの心配もない。

Gårdsfisk
https://www.gardsfisk.se

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