HOME 〉

PEOPLE / 寄稿者連載

「農家」として

目黒浩敬さん連載「アルフィオーレの農場日記」第3回

2016.04.11

独学の大切さ。

就農して3年目の春を迎えました。
レストランをやっていた頃は、なんでも挑戦してみたくて、不耕起、無農薬、無肥料で、野菜を中心に8年間、耕作放棄地を機械も使わず、鍬一本で、2反歩程度を開墾して、50種類程度を育てていました。
レストランをしながら野菜を栽培することは、決して楽なことではありませんし、すべて自家製がいいということでもないと思うのです。
それでは、なんで野菜を栽培する必要があったのか?

それは、周りに私が求める方法で作ってくれる農家さんが少なかったからなのです。周りにそういう農家さんがたくさんいたら、私は今、農家として野菜もブドウも栽培していなかったかもしれません。

野菜を育てるのも、料理を作るのも、私は基本独学です。


連載:目黒浩敬さん連載





なぜ、独学なのか?

最初に“一般的な基本”をたくさん取り入れてしまうことは、とっても危険だと思うからです。
画一的なものを作るのであれば、個人よりも企業そして生産性を求めればいいのです。

自分でやるから気づく。





私はいつも、小さいからこそやれることを考えています。
手で地道にやることによって、普段見過ごしてしまいそうな小さな変化には、機械では気づけません。
ブドウ畑に生えている草の種類や量、生物の種類の変化。
一年経てば、全く同じ場所の状況が異なっていることに気づきます。

ブドウの生育具合も然り。
現在、14種類のブドウを試験的に育てている段階ですが、生育が遅い品種や場所、逆に生育の良いもの、様々な経過で進んでいます。
果樹は、普通なら当たり前に使う薬も使わずに育てています。

あえて使っていないのは、使用しないでブドウを育ててみないと、病気になる原因も正確に突き止められないと思うからです。
もしかしたら、葉の管理などがしっかり行えるのであれば、農薬に頼らずとも、健全に育てられるかもしれない。
結果、より良いワインができると思うのです。

カンに頼るなんてことではなくて、対象となるものに常に意識を傾けて、ほんの少しの変化にも気づき、相手が何を欲しているのかを考えるということです。
その結果として、ボルドー液や農薬を施すのであれば、それでも良いと思っています。

当たり前に疑問を持ち続ける。





こうしなくてはならないと言われている、当たり前だと思っていることにも疑問を持つ。それが大切だと思うのです。
そこから考えなくては、本質に辿りつけないということなのです。

私自身、まだまだ未熟なことばかりです。
だからこそ、いろんな挑戦もしていきたいと思っています。
今後、アルフィオーレ農園という場所に、たくさんの雇用が生まれたり、コミュニティができてきたりしても、やっぱり自分自身が一番辛い経験を重ねてこそ、伝えていくことにも本質を見出せるんだと思うのです。

一つ一つの積み重ねがより大きな力になることは、誰でも理解できる。
でも、それを継続していける人は少ない。
自然や、人間の営みや、環境にとって、継続できることを、日々突き詰めていければと思います。

目黒浩敬(めぐろ・ひろたか)
1978年福島県生まれ。教師を目指して大学に入るが、アルバイトで料理に目覚め、飲食店などで調理の基本を身に付ける。2004年渡伊。05年、仙台市青葉区に「アルフィオーレ」を開店するも、いったん閉めて、2007年現在地に再オープン。自然志向を打ち出した創作イタリアンとして評価を得る。2014年から宮城県川崎町の耕作放棄地にぶどうを植樹。2015年、店を閉め、農場づくりに本格的に取り組み始める。 https://www.facebook.com/hirotaka.meguro



























料理通信メールマガジン(無料)に登録しませんか?

食のプロや愛好家が求める国内外の食の世界の動き、プロの名作レシピ、スペシャルなイベント情報などをお届けします。