冷燻装置もDIY!ねっとり絶品スモークサーモンの作り方
【DIYレシピ】東京・小金井「TERAKOYA」間 光男さん
2023.05.01
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photographs by Hideo Sawai
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。今回は、スモークサーモンの名店にお手製の冷燻ボックスで作るスモークサーモンを。家でもアウトドアでも、燻製づくりにチャレンジしてみては。
教わるテクニック:冷燻
教えてくれたシェフ:東京・小金井「TERAKOYA」間(はざま)光男さん
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1954年創業、東京・小金井のフランス料理店「TERAKOYA(テラコヤ)」3代目オーナーシェフ。1965年東京生まれ。幼少より初代オーナーの祖父から食の英才教育を受け、料理の道をめざす。料理専門学校卒業後、TERAKOYAにて修業を開始。海外トップシェフとのコラボレーションや専門誌に執筆多数。国内外で開催される料理学会に日本代表として招聘されるなど、幅広く活躍している。
一斗缶と保冷剤で名店の味を再現⁉
燻製の方法には、80℃以上の高温で食材を一気に燻す「熱燻」、50~90℃で燻製をかける「温燻」、そして、15~30℃の低温で数日~数週間、時間をかけて燻製する「冷燻」などがあります。刺身のようなフレッシュでとろける食感が醍醐味のスモークサーモンを作るには、食材に火を通さず煙をまとわせる冷燻を。
冷燻をするには、煙の熱を冷まし、庫内の温度を低く保つために大がかりな設備や装置が必要で、家庭で再現するのは難しいと思われがちですが、今回、間光男シェフが考案したのは、一斗缶を使ってDIYできる冷燻装置。食材と火元の間が近くても、市販の保冷剤を設置して立ち上った煙を一気に冷やす仕組みです。
塊のウッドを使うのもポイント。燻製チップではなく、ウッドをじわじわ燃やすことで、熱の上昇を抑える効果があります。庫内温度40℃以下をキープし、約2時間で冷燻製ができます。
(間シェフ考案<冷燻スモークボックスの作り方>はこちらから)
身も骨もやわらかいので身割れに注意
火を通さない冷燻は素材が勝負。新鮮なサーモンを用意しましょう。サーモンは“身割れ”しやすく、おろすのが難しい魚なので、「丁寧に扱うこと」と間シェフ。丸ごと1本を三枚におろす場合は「まず皮だけ切ってから身を切るといいですよ」。サーモンは骨もやわらかいので、背骨を切らないように、力を加減して。おろし方をマスターすれば、正月の新巻き鮭にも応用できますよ。切り身で作る場合は、皮つきがベストです。
燻す前にマリネする際の塩加減は、サーモンの重量に対して4.5%、コショウはほんの少しでOKです。多めの塩をして燻製前に洗い流す作り方もありますが、ギリギリの塩分量にすることで、洗い流さす必要がなく、旨味をしっかり残せます。
2時間燻した後、さらに冷蔵庫で1日寝かせると、薫香をまとい、ねっとりした、お店顔負け、絶品スモークサーモンの完成です。
冷燻スモークサーモンの極意
1 サーモンは丁寧に扱い、身割れを防ぐ
2 ギリギリの塩加減にして旨味を洗い流さない
3 水をかけて低温をキープする
[材料](作りやすい分量)
サーモン(内臓を取り除いたもの)・・・1本
粗塩・・・サーモンの重量の4.5%
白コショウ・・・少量
黒コショウ・・・少量
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[作り方]
[1]頭と尾を落とす
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サーモンを三枚におろす。サーモンは鱗を引いて水洗いし、水気を拭き取る。エラと胸ビレの後ろから包丁を入れ、頭を落とす。尾は、付け根のくびれたところで切り落とす。
[2]腹ビレから包丁を入れる
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腹→背→背→腹の順に開く。まず腹ビレのあたりから背骨に沿わせるように包丁を入れ、背骨から身を離す。
[3]皮を先に切る
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背を手前、尾を右に向け、尾側からまず皮を切る。
[4] 尾から頭に向かって包丁を入れる
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包丁が背骨にあたるくらいまで深めに入れ、出刃包丁の傾きに合わせて尾から頭側へ包丁を入れる。
[5]背骨にあたるまで切り込みを入れる
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背骨の手前の傾斜(背骨は山型をしている)に包丁を入れ、尾から頭側に向かって、背骨にあたるまで切り込みを入れる。
[6] 背骨から身を外す
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身を持ち上げながら、骨の傾斜にそって尾から頭側へ向かって包丁を動かし、背骨と身を切り離す。
[7] 皮を先に切る
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腹を手前、尾を右に向け、尾側から腹ビレの手前に向かって写真のように包丁を入れ、まず皮を先に切る。
[8] 切り込みを入れる
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再び同じ方向から、今度は包丁を深めに切り込みを入れる。
[9] 背骨から身を外す
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5、6と同様のやり方で包丁を入れ背骨と身を完全に切り離す。
[10] 3枚におろした状態
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3枚におろした状態。腹側の白っぽいところは脂。店ではこの大きさでスモークにかける。今回はスモークボックスに入る大きさ(300g)にカット。
[11] 骨を抜く
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背骨の上あたりを触ると骨に当たるので、これを骨抜きですべて抜く。
[12] 塩・コショウをまぶして一晩おく
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塩とコショウは身:皮=4:6の比率でまぶす。身の厚いところは強く、薄いところは弱めに。ラップに包んで冷蔵庫に一晩おく。水分が出る。
POINT:ギリギリの塩分量にすることで、塩を洗い流さず、旨味を残す。
[14] スモークウッドを点火する
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バーナーでスモークウッドを炙って火をつける。アルミ皿など耐熱容器にのせる。
POINT:チップではなく塊のウッドを使い、熱の上昇を抑える
[15] スモークボックスをかぶせる
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スモークウッドに、一斗缶スモークボックスをかぶせる。
[16] サーモンをセットする
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12のサーモンを、皮を下にして網におき、スモークボックスに入れる。
[17] 2時間燻す
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蓋をして温度計を差し込み、2~2時間半燻す。コインで隙間を作って酸素の流入を調整する。40℃以下をキープし、途中熱くなり過ぎたら、一斗缶の外側に水をかけて冷やす。
[18]一晩おいてから切る
燻したらラップに包み、冷蔵庫で一日寝かせる。
[19] 皮を引き、血合いを取り除く
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皮を引いて、血合いを包丁で取り除く。好みの厚さにスライスする。
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塩気がサーモンの旨味を引き出し、燻香が品よく香る。店ではレモンの葉(左上)を指でくしゅくしゅともんで、指先から香るレモンの清涼感と共に味わうスタイル。ホワイトバルサミコ酢を使ったビネグレットソースで。
<冷燻スモークボックスの作り方>
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スモークボックス・・・1個
保冷剤・・・大1~2個
スモークウッド・・・1個
ガスバーナー・・・1個
焼き網・・・1枚
蓋用段ボール・・・1枚
①スモークボックスを作る
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工具を使って一斗缶の蓋と底を抜き、棒を2本中に渡して、網を吊り下げる。
②保冷剤をセットする
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煙を冷やすため、スモークボックスの網の上に保冷剤をセットする。
③スモークウッドに点火する
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耐熱容器(アルミ箔を巻いた皿でもOK)にスモークウッドを置き、バーナーで端の一カ所を炙って火をつける。
POINT:チップは温度が上がりすぎるので適さない。
④スモークウッドにかぶせる
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スモークウッドの上に②の装置をかぶせる。
⑤サーモンをセットする
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スモークボックスの口に合わせて、焼き網の両サイドを曲げておく。サーモンを、皮を下にして網におき、スモークボックスに入れる。
⑥蓋をする
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◎TERAKOYA
東京都小金井市前原町3-33-32
☎042-381-1101
12:00~15:00 18:00~22:00
月曜、第1火曜休(要予約)
JR武蔵小金井駅より徒歩5分
http://www.res-terakoya.co.jp/
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2014年11月号掲載)
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