辛味と旨味の名脇役! スパイシーな万能調味料「アリッサ」
【DIYレシピ】「ピニョン」吉川倫平シェフ
2023.10.05
photographs by Tsunenori Yamashita
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。今回はモロッコの調味料「アリッサ」。スパイスの代わりに料理に添えたり、煮込みなどに加えても。
目次
教えてくれたシェフ:東京・神泉「ピニョン」吉川倫平シェフ
油を使わず、香味野菜とトマトペーストで旨味を凝縮
アリッサは主役ではなく、あくまで添えもの。もともと店のメルゲーズ用に自家製で作りました。モロッコでは、香辛料の効いたメルゲーズに、好みで刺激を足せるようアリッサを添えるのは定番。ただ、唐辛子の辛味だけではなく、旨味を含ませたレシピにしています。
旨味の正体は、香味野菜とトマトペースト。ミキサーにかけた野菜とスパイス、トマトペーストを加熱して炒めることで、角が取れた丸い味わいが生まれます。スパイスは好みの配合でいいと思いますが、何かひとつ“効かせるスパイス”を決めるとインパクトを付けやすい。店ではクミンを多めに配合しています。野菜で旨味、スパイスで刺激を出したら、仕上げに刻んだフレッシュの香菜を加えることで、爽やかな香りをプラスします。
油を使うレシピも多いですが、僕は使いません。理由は、長期保存したいから。油を使うと長期保存に向くと思われがちですが、油は時間が経つと酸化してしまい、どうしても味が変化してしまう。辛味調味料は一度に大量に使うものではないので、油を使わない方が安心して保存できるでしょう。
料理には、刺激やインパクトを足したい時に、スパイス代わりに活用するのがいいと思います。ただ、刺激の強い調味料なので、素材の味を消さないよう、加減を見ながら調整してください。
自家製「アリッサ」の極意
1 油は使わず長期保存用に。
2 香味野菜はじっくり炒めて旨味を引き出す。
3 スパイスはホールとパウダー、フレッシュを組み合わせて。
材料と作り方
[材料](作りやすい分量)
赤唐辛子・・・30g
香菜・・・1束
ニンニク・・・3片
紫タマネギ・・・1個
トマトペースト・・・50g
コリアンダーシード・・・4g
クミンシード・・・6g
クミンパウダー・・・6g
塩・・・4g
チリパウダー*・・・適量
*メキシコ料理の混合スパイス。店ではGABANを使用。
[材料のポイント]
油は使わず保存性を高める
保存性が高いと思われがちな油は、酸化するとアリッサの味に影響してしまうため未使用。トマトペーストと香味野菜で旨味のある味わいに。
フレッシュの香菜をプラス
仕上げにフレッシュの香菜を刻んで加えることで、香り高いアリッサに。爽やかな刺激を残すため、他の材料を炒め、火を止めた後に混ぜ合わせる。
[作り方]
[1] 赤唐辛子の種を抜く
赤唐辛子を半分に割り、中の種を抜く。
[2] 野菜を切る
香菜は細かく刻む。ニンニクと紫タマネギは適当な大きさに切る。
[3]材料を入れる
フードプロセッサーにニンニクと紫タマネギを入れる。
[4] スパイスを加える
香菜以外の材料を全て加える。
[5] 材料を粉砕する
フードプロセッサーを回し、材料が細かくなるまで攪拌する。
[6]水を足して回す
油分や水分が少ないため、回りにくい場合は少量の水を足して、再び攪拌する。
[7]状態を確認する
ゴムベラでならし、滑らかになるまで伸ばしながら攪拌する。粉砕した状態がこちら。
[8]フライパンで炒める
フライパンに7を入れ、中火で焦がさないように5分ほど乾煎りする。野菜から水分を飛ばしていくイメージで。
[9]香菜を加える
火を止めて香菜を加え、混ぜ合わせる。粗熱が取れたら瓶に移し、冷蔵庫で保存する。
[10]完成!
仕込み時間:30分
食べごろ:半日後~
保存方法:冷蔵庫
展開例
トッピングにはもちろん、料理のスパイスとしても大活躍。他の食材の味を消してしまわないよう、加減を見ながら調節してください。
メルゲーズにアリッサを添えて
ピリリとスパイスの効いたメルゲーズには、肉の旨味を引き立てる爽やかな辛味のアリッサをそのままトッピング。
魚介のフリット アリッサソース
マヨネーズと和えて、辛味の効いたソースに変身。ビールを加えた衣でサックリ揚げたワカサギやカキなど、淡白な魚介のアクセントに。
左)ジャガイモとケールのサラダ・・・ゴロゴロのジャガイモと、クセのあるケールが、アリッサの辛味に負けずバランスよく馴染む。ローストしたカシューナッツの食感も秀逸。
右)サバのロースト タブレ添え・・・サバの表面にオリーブ油で伸ばしたアリッサを塗ってローストすることで、魚の旨味とアリッサの旨味が香ばしく絡む。塗り過ぎには注意。
「ピニョン」の店舗情報
◎ピニョン
東京都渋谷区神山町16-3
03-3468-2331
18:00~23:30LO
日曜休
各線渋谷駅より徒歩10分
Instagram:@pignontokyo
(雑誌『料理通信』2016年4月号掲載)
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