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RECIPE

「高太郎」の名物“お通し” 毎日おいしい「ひたし豆」のススメ

フェーズフリーな食材レシピ

Mar 10, 2022

photographs by Kouichi Takizawa

乾物や漬物など、常温で長期保存でき、ビタミンやミネラルなど栄養価も高い食材は、備蓄食品にも向く優れもの。普段から食事に取り入れ、使い慣れることで、「いざという時に賞味期限が切れていた」「食べ慣れない味で食が進まない」という問題も避けられます。「いつも」と「もしも」をつなぐフェーズフリー*な食材を、おいしく活用するレシピを教わります。


常備したい食材:大豆
教えてくれたシェフ:東京・渋谷「高太郎」林高太郎さん

東京・渋谷の和食店「高太郎」店主。香川県出身。池尻大橋「KAN」の料理長等を経て、2011年に現店開業。野球ボールサイズのボリューミーなメンチカツ、くん玉ポテトサラダ、手打ちうどんなど、アレンジを加えた料理を厳選された日本酒と楽しめる、予約困難な人気店。著書に『うまい!にはワケがある 「高太郎」のご馳走つまみ」(家の光協会)』など。

オープン以来、お通しは毎日「ひたし豆」

2011年3月末オープン。以来、ずっとお通しで「ひたし豆」を出し続けている渋谷の和食店「高太郎」。でも、お品書きの中に豆料理はない。「選べるところに豆料理があると、好きな人しか選ばないでしょ。豆を普段食べない人にこそ、食べてほしい。お通しにすれば、全員が避けて通れませんから(笑)。それでこのスタイルに」

店主の林高太郎さんが、日本の地大豆に気付いたのはある1軒の豆腐屋がきっかけだった(いま、店で出している豆腐も、そこから仕入れている)。豆から立ち上る馥郁とした甘い香り、なめらかな舌触り・・・聞いたことのない名前の地大豆で作られていた。

オープン前、店の柱を何か持ちたい、と考えていた時に、ちょうど地大豆の存在を知った林さんは、「だしを飲んでほしい」という思いもあり、地大豆をひたし豆にして出すことに。ただし毎日「ひたし豆」では季節感も薄く、お客さんがすぐに飽きてしまう。そこで、季節の野菜を添えることにした。「夏はゴーヤ、秋はきのこ、冬は根菜、春には山菜を添えます」。現在、地大豆を10種ほど常備し、その内2、3種を組み合わせてひたし豆を作っている。

豆の芯まで完全に冷まして保存する

作り方のコツは食感の仕上げ方。豆は火を消した後も残った熱がじわじわと豆をやわらかくしていく。やわらかすぎると瑞々しさが感じにくく、硬すぎると豆を噛むことが苦痛になってしまう。「これは保存にも大きく影響することですが、煮汁が冷めたらOKではなく、豆の芯までしっかり冷ましてから、蓋つきの保存容器に入れてください。豆の芯に熱が残ったまま保存すると、後から蒸気が上がって蓋の裏側に水滴がつく。この水分が豆に落ちると、腐敗の原因になります」

地大豆は噛むとすぐ甘味が、その後に枝豆のような香ばしい香りが立ち上ってくる。そういえば、ふだん豆を食べない人でも夏の枝豆は別という人も多い。ひたし豆は、箸で一粒一粒つまむ枝豆料理、と考えれば飽きられないのも、うなずけるのだった。

「高太郎」が常備する“地大豆”より

日本では数が特定できないほど多種の地大豆が栽培されている。「高太郎」では、東北地方の地大豆を扱う宮城の国産大豆専門店「大豆カンパニー」から常時10品種を取り寄せる。その一部を紹介する。

豆の特徴がそのまま名前になっているものも。左側は、水に浸し、2〜3倍の大きさになったもの。林高太郎さんは地大豆を扱うようになって、ますますその世界に魅せられ、地大豆で味噌も仕込む。「香りがちがいますね」

 


「高太郎」ひたし豆の材料と作り方

[材料]
岩手みどり(乾燥)・・・100g
小糸(乾燥)・・・100g
だし(昆布とかつお節)・・・約720ml
昆布・・・5cm×5cmを1枚
醤油・・・大さじ1
塩・・・少量

[作り方]

[1]大豆を戻す
大豆をたっぷりの水で一晩戻す。

[2]アクを引く
水は変えず、そのまま強火にかける。最初のアクが写真くらいまで出たら中火に落とし、アクを引く。

[3]茹でる
豆が湯の中で踊るくらいの火加減にして、40~50分を目安に茹でる。
POINT:やわらかくなりすぎないように茹でる。

[4]水洗いする
ザルにあけて湯を切り、軽く水洗いする。鍋も洗う。


[5]だしで煮る
鍋に豆、だし、昆布、塩、醤油を入れて火にかけ、沸いてきたら火を止めて20〜30分粗熱をとりながら味を含ませる。

[6]氷水で冷やして熱をとる
氷水で豆の芯まで熱をとる。だしが冷めても、豆の芯まで熱がとれているとは限らないので、十分時間をかける。

[7]冷蔵庫で保存する
タッパーに入れ、豆がだしから顔を出さないよう、クッキングペーパーで覆い、蓋をして冷蔵庫へ。
POINT:一晩おくと、さらに豆がだしを吸う。3~4日で食べきる。


この日のひたし豆は「岩手みどり」と「小糸」を使用。やさしい甘味の後に枝豆のような香ばしい香りが続く。夏ならゴーヤ、秋はきのこ、冬は根菜、春には山菜、と季節の野菜を添え、飽きの来ない一品に。


◎高太郎
東京都渋谷区桜丘町28-2
三笠ビル1F
☎03-5428-5705
月~金曜:16:00~22:00LO
土、日曜:14:00~21:00LO
月曜、第1、3火曜休
各線渋谷駅より徒歩5分

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

*フェーズフリー(Phase Free)は、防災の専門家として活動を続けてきた佐藤唯行氏が2014年に提唱した考え方。

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