野菜とフムスと豆腐マヨネーズで作る、食べ応え抜群のべジサンドイッチ
プラントベースの始め方26
2023.01.10
photographs by Tsunenori Yamashita
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
教えてくれたシェフ
東京・南青山「パーラー エイタブリッシュ」和田仁美さん
食べ手目線を意識 見た目と味で気分を上げる
目にも鮮やかな色とりどりの野菜。どんな味か好奇心をくすぐる、形も調理法も様々なフィンガーフード。「エイタブリッシュ」のパーティボックスは、そのビジュアルでまず人の心をグッと掴む。ケータリングというより、まるでギフトだ。
ボックスは、ガーデンサラダ、グリル&スチーム野菜、サンドイッチ&ブレッド、前菜からメインディッシュにもなるフィンガーフード、マフィン&バナナブレッドの5種類。仕入れ状況により内容は変わるが、「どのボックスを組み合わせても満足していただけるよう、食材の重複を極力避け、味の起伏を意識しています」とシェフの和田仁美さん。もちろんすべて、動物性食材を一切使わないヴィーガン料理。さらにオーダーがあれば、サンドイッチを玄米の巻きずしにしたり、醤油の使用を避けるなどグルテンフリーにも対応する。スイーツに至っては常時、小麦不使用だ。ベジタリアンの外国人も多い外資系企業のランチミーティングや、食トレンドに関心の高いモデルや演者がいるスタジオのロケ弁、アパレルメーカーの展示会の食事など、その需要は広がりを見せる。
代表(2019年当時)の清野玲子さんが、前身となる「カフェエイト」をオープンさせたのが2000年。ケータリングを始めたのは、その4年後のことだ。日本におけるヴィーガンレストランの先駆けでありながら、ケータリングに目を付けたのも早かった。「来店するお客様以外の方にも食べてもらいたいという思いで始めました」。デザイナーでもある清野さんは当時、ロケ弁を頼む側の立場だった。その時の苦い経験から自店のケータリングで大切にしたのは、「食べる人の気分を上げること」。それは見た目の美しさであり、食材そのもののおいしさや、味わいのバリエーションを楽しんでもらうことでもある。
たとえばガーデンサラダ一つとっても、年中同じ定番の葉物が入っているわけではない。生産者から直接届けられる無農薬野菜は旬が短いため、その内容は時期によって異なり、ユニークな在来種が加わることも。季節の果物もふんだんに使い、瑞々しい酸味と甘味を添える。また動物性食材は不使用でも、それを意識させない食べ応えや満足感は、レストランクオリティそのものと言える。肉の代わりに豆類を多用する。揚げる、焼く、蒸す、漬ける、包むなど調理法の変化で楽しませる。随所にスパイスを利かせて風味のアクセントにする。ナッツチーズや豆腐マヨネーズなど自家製の調味料も味わいの幅を広げるのに欠かせない存在だ。
「ケータリングがきっかけでレストランに来てくださったり、その逆もよくあります」。“上がる”ケータリングは、店に好循環を生んでいる。
<植物性食材だけでおいしくなるコツ>
1 フムスは硬めに仕上げる
2 ケータリングの場合、パンは強めに焼く
3 味を調えるメープルシロップは、ダークなタイプを選ぶ
野菜とフムスと豆腐マヨネーズで作る、食べ応え抜群の「べジサンドイッチ」の作り方
[材 料](8人分)
【フムス(作りやすい分量)】
茹でたヒヨコマメ(または缶詰)・・・200g
ニンニク(みじん切り)・・・小さじ1
ショウガ(みじん切り)・・・小さじ2
タヒニ(練りゴマ)ペースト・・・小さじ2
E.V.オリーブ油・・・大さじ4
レモン汁・・・大さじ1.5
塩、コショウ・・・各適量
【ナスのマリネ】
ナス・・・2個
醤油、レモン汁、E.V.オリーブ油・・・各適量
【組み立て】
パン・・・8枚
豆腐マヨネーズ(※作り方は下へ)・・・適量
キュウリ・・・1本
サニーレタス・・・適量
パプリカパウダー、セルフィーユ・・・各適宜
[1]フムスを作る
ヒヨコマメをフードプロセッサーで少し粒が残る程度までペーストにし、その他の材料を加えて混ぜる。レモン汁、塩、コショウで味を調える。
POINT:フムスの硬さはヒヨコマメの茹で汁の量で調整ができる。サンドイッチに挟む場合は、時間がたっても崩れにくいよう硬めに仕上げる。ヘラですくっても垂れないくらいが目安。
[2]ナスをマリネする
ナスは厚さ7㎜の薄切りにする。E.V.オリーブ油を絡めて馴染ませ、グリルパンで焼く。バットに広げ、同量の醤油とレモン汁、E.V.オリーブ油を回しかけてマリネする。
[3]キュウリを薄切りする
キュウリはパンの長さに合わせて2㎜程の薄切りにし、水気を拭く。
[4]パンを焼き、豆腐マヨネーズを塗る
パンを焼き、水分が滲まないよう片面に豆腐マヨネーズを塗る。キュウリ、ナスのマリネ、サニーレタスの順に重ねる。もう一枚のパンにフムスをたっぷり塗る。カットした時にきれいに見えるよう中央はやや厚めに。2枚のパンを組み合わせ、上から軽くおさえて切る。
[5]セルフィーユとパプリカパウダーを散らす
盛りつけてから、仕上げにセルフィーユとパプリカパウダーを散らす。
POINT:仕上げのトッピングで華やかに
「豆腐マヨネーズ」の作り方
[材 料(約350ml分)]
ジャガイモ・・・50g
木綿豆腐(水切り)・・・1丁
白ワインビネガー・・・90ml
塩・・・小さじ2
E.V.オリーブ油、キャノーラ油・・・各60 ml
メープルシロップ・・・適量
[材料のポイント]
精製糖を使わないヴィーガンでは甘味料としてメープルシロップを多用するが、コクを出すための隠し味としても有効。店で使っているのは、黒蜜のような色と香りのダークなシロップ。
[1]ジャガイモを切る
ジャガイモは皮を剥き、軟らかく茹でて小さく切る。
[2]フードプロセッサーでペーストにする
木綿豆腐をフードプロセッサーでペースト状にし、白ワインビネガーと塩を加える。
[3]ジャガイモ、油を加える
ジャガイモを加えて塊がなくなるまで回す(回し過ぎに注意)。さらに撹拌しながら油類をゆっくり糸を垂らすように注ぎ混ぜる。
[4]メープルシロップを加える
メープルシロップで味を調える。
卵を使わず、ジャガイモと木綿豆腐をベースに作ったヴィーガンマヨネーズは、作っておくと様々な料理に活用できる。作る時は豆腐をしっかり水切りするのがポイント。
【ヴィーガンケータリングに便利な食材】
万能選手のタヒニペースト
主に中近東の料理でよく使われるタヒニペースト。日本の練りゴマは焙煎ゴマを使っているのに対し、タヒニは生ゴマをペーストにしているため、香りは控えめだが味は濃厚で、主役にも隠し味にもなる。
ボリュームアップにはテンペが活躍
大豆の発酵食品であるテンペは肉の代用品として便利。そのまま切って使ったり、ミンチにして挽き肉代わりにも。それ自体の味は淡白なので、香ばしく揚げたりスパイスを利かせるなどすると良い。
◎パーラー エイタブリッシュ
東京都港区南青山5 -10-17 2F
☎03-6805-0597
10:00~18:00
不定休
東京メトロ表参道駅より徒歩5分
https://www.8ablish.com/
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため要請に合わせて営業時間が変わることがあります。
(雑誌『料理通信』2019年12月号掲載)
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