HOME 〉

RECIPE

野菜や果物の端っこを「ウスターソース」に変えるプロの知恵

レスキューレシピ【捨てないレシピ編】

2023.03.02

野菜や果物の端っこを「ウスターソース」に変えるプロの知恵

text by Kei Sasaki / photographs by Hide Urabe

連載:レスキューレシピ

日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生鮮食品においても、豊作で余ったり、規格外、傷、スレがあって売り物にならず、行き場のない食品が日々廃棄されているのです。家庭内で料理中に出る端材や余らせがちなパーツも、新たな魅力を見出し、活用法を考えることで捨てる量を減らせます。食材を無駄にせず、おいしく食べるための活用術をシェフの技に学びます。
*農林水産省「日本の食品ロスの状況」(令和元年度)

目次






教えてくれたシェフ:東京・西麻布「ル・ブトン」杉山将章さん

杉山将章さん

東京・西麻布のビストロ「ル・ブトン(Le Bouton)」オーナーシェフ。「オー・バカナル」「モレスク」などを経て、2013年現店開業。「ボタン」を意味する店名には、「人と人とをつなぐ場所でありたい」という想いを込める。『ミシュランガイド東京』ビブグルマン。


「うちだけの味」を作る自家製調味料

さて何を食べようか、と、黒板メニューをじっくり眺めると、ビストロ料理に混じって時々「あれ?」というものに引っかかる。たとえば「豚のコラーゲンパリパリ焼き」。聞けばフロマージュ・ド・テットを春巻きの皮に包んで焼いたものなのだが、上にはソースがかかっている。

「自家製のウスターソースでお好み焼き風にしてみました」と、杉山将章シェフ。え、ウスターソース? 「ハムかつにも添えてお出しします。とんかつのせん切りキャベツみたいに、ルーコラにも合うんですよね」 

このハムかつ、岩中豚を使った自家製ロースハムを厚切りにして揚げたなんとも贅沢な一品。馴染みのある味やスタイルで、ビストロをもっと親しみやすい場所に、というのが杉山シェフの考え。自家製調味料は、そのお助けアイテムだ。

フロマージュ・ド・テットを春巻きの皮に包んで焼いた「豚のコラーゲンパリパリ焼き」にウスターソースをかけてお好み焼き風に。

フロマージュ・ド・テットを春巻きの皮に包んで焼いた「豚のコラーゲンパリパリ焼き」にウスターソースをかけてお好み焼き風に。

たとえば裏メニュー(と言いながら、かなり人気)のスパゲッティ・ナポリタンは、トマトケチャップもタバスコも自家製。米酢やワインビネガーを使って作るタバスコは、酸味がフレッシュで、トマトの凝縮感があるケチャップの味によく合う。脚付きのガラスの器に盛り付けられた昭和なプリン・ア・ラ・モードには、「お好きなだけどうぞ」とピッチャーで自家製の練乳を添える。9種ものアイスクリームやソルベ(も、もちろん自家製)から好みの2種が選べるのだが「特にイチゴのソルベに合うんですよ」とのこと。いわく「氷イチゴ感覚で」。いちいちツボをついてくる。

「うちだけの味を作りたいんです。それに、スーパーで数百円で買える調味料がはっとするおいしさだったら、きっと印象に残ると思うんです」

思い入れのある素材を余すところなく使い切る

自家製調味料の裏テーマは、食材の二次利用だ。ウスターソースの材料は、野菜や果物の端っこやお店で出せなくなったもの。「うちでは果物をチャツネ状にして冷凍していますが、そのまま使ってもOKです」と、杉山シェフ。練乳に使う牛乳は生クリームでも同様に作れるから、使い切れない時は合わせて作ってもいい。砂糖を加えることで保存性も高まる。 

リゾットに使う鮑を蒸した時に出る煮汁や貝の酒蒸しの余分な汁は、煮詰めて“なんちゃって”オイスターソースに。ドレッシングやバターソースの隠し味に活用している。「これだと思う食材を選んで使っているので、少しも無駄にしたくない。いい素材は端っこや皮までおいしいし、いいダシも出ますから」 

市販品で気になる化学調味料や添加物もゼロ! 気取らず、親しみやすく、と作ったほっこり系メニューが、キリッとしたプロの味になる

ル・ブトンの自家製調味料。ケチャップ、マスタード、塩レモン、アンチョビー、ウスターソース、タバスコ、練乳、XO 醤、オイスターソース

ル・ブトンの自家製調味料。ケチャップ、マスタード、塩レモン、アンチョビー、ウスターソース、タバスコ、練乳、XO 醤、オイスターソース


「ウスターソース」材料と作り方

[材料](作りやすい分量)
季節の果物・・・適量
タマネギ・・・1/2個
ニンジン・・・1/2個
根セロリの皮・・・適量
干シイタケ・・・2~3個分
ニンニク・・・2~3片
ショウガ・・・1片
キャトルエピス・・・大さじ1
黒コショウ・・・5~6粒
丁字・・・4粒
醤油・・・200ml
バルサミコ酢・・・150ml
黒糖・・・大さじ2

<材料のポイント>

チャツネ

果物の端やピークを過ぎたものを冷凍しておき、まとまったら少量の水で煮詰めてチャツネ状にして使ってもよい。

[作り方]
[1]干シイタケを戻す
干シイタケを600mlの水に一晩浸して戻しておく。

[2] やわらかくなるまで煮る
鍋に野菜、果物、干シイタケと戻し汁、スパイスを入れ、野菜がやわらかくなるまで30~40分煮る。 

[3]調味料を加える

調味料を加える

ニンジンに串が通るくらいになったら醤油とバルサミコ酢、黒糖を加え、中火で5分沸かす。 

[4]ミキサーにかける

ミキサーにかける

冷ましてからミキサーにかけてホールスパイスの粒がなくなるまでしっかり回す。

[5]冷蔵保存する
保存容器に移して冷蔵保存する。


「ル・ブトン」店舗情報


ル・ブトン

◎ル・ブトン
東京都港区西麻布2-15-1
☎03-3797-3837
18:00~22:00LO
日曜、第1、3月曜休
東京メトロ表参道駅より徒歩10分
https://lebouton.food-site.net/

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2016年4月号掲載)

料理通信メールマガジン(無料)に登録しませんか?

食のプロや愛好家が求める国内外の食の世界の動き、プロの名作レシピ、スペシャルなイベント情報などをお届けします。