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ピッツァ職人のメソッドから探る

イタリア・ナポリ生まれの粉「カプート」の魅力 vol.3

Feature / MovementOct. 6, 2018

text by Izumi Shibata / photographs by Hide Urabe

武蔵小山「ラ・トリプレッタ」
太田賢二さん




ナポリ生まれの「カプート」は、地元はもちろん、世界中のピッツァイオーロの信頼を集めている小麦粉。「カプート」の輸入代理店「モンテ物産」の協賛によるプロ向けのセミナーから、その魅力を探ります。今回の講師はナポリで働いた経験があり、かつ生地に対する理論的なアプローチでも知られる「ラ・トリプレッタ」の太田賢二さんです。

ラ・トリプレッタで現在メインとして使っている粉は、カプートの「サッコロッソ」。出会いは、ナポリの修業時代でした。「ナポリのピッツァイオーロたちは、極力適当なんです(笑)。それでいて仕上がりに失敗がない」。太田さんは、そうした感覚的な生地作りにも対応する懐の深さが、カプートの特徴と捉えます。伝統的な製法をとりながら、安定した高品質を誇るカプートは、ピッツァイオーロたちを下支えする存在です。



今回の参加者は25人。まずは座学から。太田さんの論理的な話を、熱心にメモする参加者たち。



キーワードは「グルテン」と「発酵」




「ピッツァは生地を伸ばしてから焼くまでの工程が目立ちがちですが、前提となる生地作りこそが大事」と太田さん。店では、低温で長時間発酵させる製法で生地を作りますが、発酵時間の異なる3種類の生地を併用するのが特徴です。基本となる「メイン」に加え、早めに発酵する「早熟型」、時間をかけて発酵させる「超熟型」の3種類をタイミングに応じて仕込みます〈※1〉。

〈※1〉3種の生地の発酵時間
メイン……約24~48時間。朝作り、翌日昼~翌々日の昼まで使用。
早熟型……約8~35時間。朝作り、当日の夜~翌日の夜まで使用。
超熟型……約48~80時間。月曜の朝に作り、水曜日の昼~木曜日の昼(あるいは夜)まで使用。毎週火曜の定休日をまたいで用いる。

いずれの生地も、主体となる小麦粉はサッコソッロ。また、水1ℓに対して小麦粉1550~1650g、塩50~55g、イースト1.5~3gという配合や、ベンチタイムは1時間という点も共通です。では何が違うかというと、サッコソッロの10~20%量を目安に加える、サブの粉。「具体的にどの粉を使うのかを知る前に、ピッツァ生地ができあがるメカニズムを理解してほしい」と、ポイントとなる「グルテンの形成」と「発酵」についての考えを話してくださいました。



ゴムを使い、グルテンの性質を説明。具体的なイメージで、科学的な話をわかりやすく。



小麦粉と水が混ざり、こねて力が加えられると、グルテンが作られます。「グルテンとは網目構造をしたタンパク質で、網目を形作る繊維の1本ずつがバネのように伸び縮みする。力を加えれば加えるほど、グルテンの網目は細かくなり、かつ、バネは強く張ります」。生地で言うと、硬く締まった状態だ。「ただし、放置するほどバネはゆるみ、網目も粗くなる。一度こねた生地が、ベンチタイムや発酵段階でやわらかくなるのはそのためです」。

発酵についても、科学的な視点で説明していきます。「発酵とは、イーストが生地に含まれている糖を分解して、炭酸ガスとアルコールに転化することです」。小麦粒の外皮に近い部分に多く含まれる灰分(かいぶん)と呼ばれる物質の中には、発酵をサポートする酵素(生地中のデンプンを糖に変える)や微量栄養素が含まれています。「灰分は風味のもととなるほか、発酵を促進する働きも持っているのです」。

こうした、小麦粉の「タンパク質が多い=グルテンを形成しやすい」、「灰分が多い=発酵を促進」という特性を踏まえて、店では前述の3種類の生地でサブの粉を使い分けます。発酵を促したい「早熟型」は、灰分の多いカプートの「ティーポ・ウノ」を多めに配合。一方「超熟型」は、発酵速度を抑えつつ、生地がダレないようグルテンをしっかりめに作りたい。そこで、ティーポ・ウノは極少量のみとし、タンパク質を多く含む「マニトバ」を多めに加えています。「メイン」の生地は、上記2つの粉を、バランスよく配合しています〈※2〉。

〈※2〉3種の生地で用いる小麦粉の内容
メイン……サッコロッソに対し、ティーポ1を10〜15%、マニトバを5%未満。
早熟型……同、ティーポ・ウノを最大20%(マニトバは入れない)。
超熟型……同、ティーポ・ウノを最大5%、マニトバを最大10%。



成形前の生地。手前が「メイン」生地で奥が「超熟型」。見た目と、触れた感じはほぼ変わらない。



「3種3様の発酵過程を経させながら、同じ終着点に辿り着く生地に。そこが職人の腕の見せ所です」。これだけ発酵時間が違っても、どれも狙った状態に仕上がるのは、灰分、タンパク質ともにバランスよく含み、長期熟成に向くサッコロッソをベースに組み立てているからだと彼は考えます。また、種類ごとに小麦粉の個性・風味が立っているものシリーズの魅力です。

店では、平日は1日100〜200枚、土日は200〜300枚のピッツァを焼くのが標準。しかし時には、予期しない客足の増減もあります。「それでも売り切れ仕舞いにはしたくないし、生地を余らせて捨てるなんてことも絶対にしない」。その根底には、「ナポリピッツァは庶民の日常に根ざした食べもの。店に行けばあるのがあたり前」という太田さんの強い思いがあります。「バンバン焼き、手頃な価格で提供し、かつ現地に負けないクオリティを実現してこそ、ナポリピッツァと名乗れるのだと思っています」。そんな考えのもと、試行錯誤を経て行き着いたのが、発酵時間の異なる3種類の生地を併用する今の方法なのです。



「自分の生地はゆるい方だと思う」と言う通り、成形前の生地はやわらかい。窯の中に入れた時、グルテンの網目の密度が最適になるよう狙う。



「生地が軽い」とは、どういうことか?

太田さんが作るピッツァは、生地のおいしさ、とりわけ「軽さ」に定評があります。「生地を軽く焼きあげるには、『生地が軽いとはどういうことなのか』を理論で理解することが大事です」。

「まず『生地が膨らむ』とは、発酵で発生したガスが、グルテンの網目に取り込まれることです。網目が細かいほど、かつバネが引き締まっているほど、焼いた際に水蒸気が閉じ込められる。生地にも火が入りにくい。これが、重いと感じる生地です」。では、その逆は? 「網目がきつすぎなければ、窯の中で生地がしなやかに伸び、水蒸気が適度に抜ける。これが、僕の考える軽い生地です」。

グルテンの網目の細かさは、「どれだけ生地に力を与えたか」によって決まります。「とくに、伸ばす時に触りすぎた生地は、網目が詰まる。それが、重さの原因になる」。窯の中での生地の伸びをよくするためには、成形時に必要以上に手で触らないことがポイントに。「つまり、最初から『極力少ない手数で伸ばせる生地』を作っておくことが大事。最終的に軽い焼き上がりを実現するにはどうすればよいか、逆算してトータルで考えます」。



生地を伸ばすのにかかる時間はわずか4〜5秒ほど。その間、生地を触るのも4〜5回ほどという手早さ。



ピッツァパーラの上で、最終的な大きさに伸ばす。円形であることにはこだわらない。あくまでも極力触らずに窯に入れることに意識を向ける。



ピッツァは薪窯で、ナポリの伝説のピッツア窯職人、ステファノ・フェラーラ氏が自ら手がけた、内径130㎝の大型の窯。一般的な窯の3倍弱の量である7tもの石を積んでいるため、蓄熱量が段違い。



現在のピッツァ作りに自信を持ちつつも、分析を怠らない太田さん。「ナポリの職人たちは感覚でピッツァを作れるけれど、日本人である自分はそうはいかない。だから、理論的な分析と裏付けが必要なのです」。また、「自分の生地はまだ向上する余地があると思うし、変化もすると思う」とも。日本人が作るナポリピッツァの可能性を広げ続けます。



縁全体が盛り上がり、ほどよい焼き色の仕上がり。裏もしっかりと焼けており、一口食べれば粉の風味が力強く香る。



ふっくらとした気泡を見せる断面。ほどよくモチモチとした、抜けのよい印象の生地。



講習会を終えた後は、店内にて懇親会を開催。プロのピッツァ職人同士、話がはずんだ。



カプート社の小麦粉「サッコロッソ(25kg)」。生地の強さや伸び、弾力などのバランス力に優れ、長時間発酵にも適している。



食物繊維が豊富な胚芽や外皮を多く含み、古き良きイタリアの味を再現できる「ティーポ・ウノ(5kg)」。100%の使用はもちろんブレンド粉としても活躍する。



優れたたんぱく質を多く含み、弾力のある伸びの良い生地に仕上がる「マニトバ(25kg)」。ピッツァ生地はもちろん、ババやパネットーネなど、発酵を必要とするお菓子作りにも使用される。



太田賢二さん
静岡県出身。ナポリ「マリーノ」で働き、帰国後はピッツァの技術指導をする立場も経験。2014年、武蔵小山に「ラ・トリプレッタ」をオープン。18年4月、同駅の反対側にピッツァ・フリッタがメインの店「パレルモ プラス」を開く。






◎ La TRIPLETTA
東京都品川区小山3-13-12
☎ 03-6451-3537
11:30~14:00LO、17:30~22:00LO
火曜休
東急線武蔵小山駅より徒歩2分






「カプート」に関するお問い合わせ先
◎ モンテ物産株式会社

☎ 0120-348566
平日9:00~12:00/13:00~17:30(土・日・祝日を除く)









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