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「ル・パン・コティディアン」アラン・クモン氏インタビュー

パンに未来を託して

Sep. 29, 2014

text by Chiyo Sagae



ベルギー生まれのベーカリーレストラン「ル・パン・コティディアン」。
現在、世界17カ国220店舗、日本では6店舗が展開され、オーガニック中心の素材で作られるパンと料理が支持を集めています。
1990年の開業以来、料理人だった創設者のアラン・クモンさんが目指してきたもの、それは何よりも店名「Le Pain Quotidien=日々の糧」に込められています。



「ル・パン・コティディアン」誕生のエピソード

1990年、最初の店をブリュッセルに開こうとした時、店で提供するためのパンを捜したのですが、自分の求めるパンがどうしても見つかりませんでした。
子供の頃に食べたパン――石臼で挽いた全粒粉やライ麦など麦本来の味を備えた粉や自家製酵母で作る大きな丸い田舎パン、それはすでに失われていたのです。
ならば、自分で焼くしかない。
自らパンを焼き、4~5種のタルティーヌとサラダを出す14席の店を開きました。
家賃の安い小さな空間。あるのは長いテーブルたった1つ。今ではターブルドット(コミューナルテーブル)が世界中の「ル・パン・コティディアン」のスタイルですが、実は考え抜いてそうしたわけじゃない。仕方がなかったんです(笑)。







「食は日々の良薬」

パン屋だけど、その場で食べられる。と、近所で働く男性は、毎朝、朝ごはんを食べに来てくれるんですね。こうなると、もう、店は彼の家の一部になります。つまり、「ル・パン・コティディアン」が彼の「日々のテーブル」なんです。
人が毎日口にするものは、暮らしを、身体を、健康を担う「日々の糧」です。中国の伝統医学で「食は日々の良薬」と言いますが、まさにその通り。
私自身は、質素で良質な食事を摂るべきとの考えからベジタリアンで、自宅で野菜を育て、ブドウからワインを造っています。商用の外食でわずかな肉や贅沢な食事をすれば、身体の調子が崩れるのが顕著にわかる。それくらい、毎日の食事って大切なことなんです。
だから、「ル・パン・コティディアン」ではできる限り、ビオ(オーガニック)の素材を使いたい。ビオが今では流行のように映りますが、マーケティングであってはならない、と私は思います。これは、世界中の農業が考えるべき未来を担う選択です。










「日々、何をたべるか」は国の問題でもある

今、世界の農業は2つの道を邁進しています。
一つは、安価に土地の生産性を優先する農業。もう一つは、有機農法。
前者はどうしても高額の機材を導入して農薬を大量に撒く単一農業(一品目広範囲の作付け)にならざるを得ない。農業従事者も消費者も健康不安を抱えることになり、国庫(健康保険など)を脅かす原因にもなるのではないか、と心配です。
それよりも、後者を選び、良質な食物を必要十分なだけ消費して、健康を維持する人々が増えるほうが、長い目で見れば、国家にとっても(未来の国庫に)有利な選択であるはずです。
人々が「日々何を食すか」に意識を払うことは、個人の生き方の選択であると同時に、政治的選択でもあると、私は思っています。



豊かな食と貧しい食は紙一重

「簡素・良質な食材で作るシンプルな食事を少量摂る」という意識は、皮肉にも、何も考えないことよりお金がかかるかもしれません。
しかし、先進諸国においては、ビオ食材によるこうした食事(ある意味「貧しい食」)に出費を厭わない人が増えています。
その一方で、インドの決して裕福ではない家庭で、妻や母親が、自家栽培の野菜を使って、質素な食事を作っていたりする。世界的に最も意識の高い人々がお金をかけてわざわざ選択するような食事が、インドの片隅にあったりするという現実……。








世界は向かい直そうとしている

かけがえのない「ビオ・ディヴェルシテ=生物の多様性」を尊重する農業とその恵みを受けた豊かな食。
それが、私が思う「日々の糧」です。
こうした方向に世界は向かい直そうと動き出していると、私は信じています。





私の考えを最も象徴するタルティーヌとは

2013年に出版された『Le Pain Quotidien Cookbook』から、クモンさんの考え方を最も象徴するタルティーヌをご紹介いただきました。

「Ma madeleine de Proust/私の“プルーストのマドレーヌ”(*)」です。フロマージュ・ブランを塗ったスライスパンにラディッシュと紫タマネギをのせたもの。ブリュッセロワ(ブリュッセルっ子)にとって典型的なオープンサンドですね。毎日食べても飽きのこないシンプルなおいしさであり、私にとっては、毎日曜の朝、蚤の市に出かけた広場のカフェでつまむもの。ベルギー人なら誰もが知る、日々のタルティーヌです。

*“プルーストのマドレーヌ”とは、“懐かしの味覚”を意味します。マルセル・プルースト著『失われた時を求めて』の中で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸して食べた時、走馬灯のように過去の記憶が蘇ったというエピソードに基づいています。



 










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