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SDGs

「KURKKU FIELDS」-後編

生命と生命が連関し合うエコシステム。

2019.12.24

text by Chiyo Sagae /photographs by Hide Urabe

30haの敷地で展開される農業、食、アート、プレイ&ステイ、自然、エネルギーという6つのカテゴリーを通して持続可能な営みが体感できるサステナブルファーム&パーク「KURKKU FIELDS」。ここで繰り広げられるのは、生命と向き合う仕事。しかも互いに連関し合って、見事なエコシステムを作り出しています。

TOP写真:太陽光発電によるエネルギー事業、オーガニックガーデンの有機野菜の出荷ほか、農園全体の経済循環を担う新井洸真さん。



単体で成り立つ要素はない

「クルックフィールズ」の営みの中心にあるのはまぎれもなく食です。訪れた人が足を運ぶダイニングで、目にし、口にする料理やチーズ、ピッツァ、パンなどの香りと風味に引き込まれるところから、すべては始まります。

ダイニングの裏手には自家培養酵母で生地を作るベーカリー、シフォンケーキの工房もすぐ側に、ハムやソーセージを手作りするシャルキュトリーは少し歩いた所にあります。それらの窓の外に広がる農場と牛舎、放牧されている牛や山羊たち、ぐるっと回った奥には養鶏場が。農場とキッチン、そして食材工房との距離の近さがもたらす食のパワーを、人は食べることで体感するのです。

クルックフィールズの強みは、農業と食の多種多様なプロフェッショナルがここに集うこと。広いフィールドを分かち合うと同時にみんなでひとつのエコシステムを作り出しています。どれひとつとして他のセクションと関わらずに単体で成り立つ要素はありません。先に挙げた料理や食材のみならず、ヤギや水牛、鶏などの家畜も、微生物も、働く人もダイニングで食事をするお客様さえも。そう気づかせてくれたのは、ここで生き生きと働くスタッフのみなさんでした。


微生物がつなぐ食と農業の循環

「オープンの1カ月ほど前から、ミミズを活用したコンポストを始めたんですよ」
そう言いながら、農園全体の統括を担う新井洸真さんがダイニングの外に設置した木箱を見せてくれました。腐葉土や落ち葉を入れた箱の中で、ミミズはダイニングの食物残渣を分解します。数カ月後には養分豊富な有機肥料になります。ダイニングの排水は、柳や菖蒲、水草が浄化を図るバイオジオフィルターを通して小川として農園を巡ります。所々の水溜りにはメダカやアメンボウが生息し、豊かな水辺の生態系を育んでいます。下水の質が良ければ、排水までもが生命を育む――こうした小さな驚きや学びに、新たな視界が開ける思いがします。「敷地の自然循環の仕組みはパーマカルチャーデザイナーの四井真治さんにデザインしていただいているんですよ」と新井さん。

目に見えない微生物や菌の働きに助けられながらクルックフィールズならではの味を生み出すのは、ベーカリーを預かるブーランジェの藤田麻依さん。「代々木VILLAGE by Kurkku」のベーカリー「プルクル」での経験を生かし、ここでは有機栽培の野菜や植物を使った発酵種に挑みます。健やかに育った糖度の高いニンジンの発酵種で焼くカンパーニュの力強さといったら。桑の実、ローズマリーの酵母もあります。チーズ作りから派生するホエーの酵母で発酵させるクリームパンは世代を超えて人気の品です。


本格的なカンパーニュほか、低温長時間発酵の食パン、ホエーパンなど、どのタイプのパンもクオリティが高い。

産みたての鶏卵でパティシエの小林真理さんが作るシフォンケーキ。良質な卵がもたらす味と食感がすばらしい


クリームパンのカスタードクリーム、押すと跳ね返すような食感が際立つシフォンケーキ、どちらも農園の採れたて卵が決め手です。養鶏場の石川雅史さんを訪ねれば、米ぬかやおからを混ぜて作る自家製の発酵飼料と畑の野菜をついばむ純国産種の「岡崎おうはん」「もみじ」が柵の中で元気に跳ね回ります。

「鶏舎の土は、手で触れると温かいんですよ」。発酵飼料の効果で鶏糞は乳酸菌を含み、その乳酸菌が土を発酵させ、ふかふかで温かくする。発酵の力はこんなところでも発揮されているのでした。


養鶏を担当する石川雅史さん。1500羽を平飼いする。何より鶏にとって快適な環境作りを心掛ける。

日本随一のモッツァレッラを作る竹島英俊さんが飼養する水牛、飼育を始めたばかりというブラウンスイスも、チーズ製造のみならず、オーガニックファームやエディブルガーデンの堆肥に役立つ存在です。人の手をかけ、真摯に取り組む有機農業には、ミクロが支える生命の循環があります。

水牛の飼養からチーズ製造まで一貫して行う竹島英俊さん。イタリア仕込みの技術で本格的なモッツァレッラチーズを作る。

小麦、有機野菜、シャルキュトリー、チーズと農園の恵みが凝縮するピッツァ担当の相澤夏希さん。



骨まで再利用する土地のジビエ

クルックフィールズの食をさらにオリジナリティ豊かにしているのが、岡田修、綾乃さん夫妻が手がけるシャルキュトリー。ジビエを得意とするフレンチシェフの修さんは、イノシシや鹿を調理するうちに自らも狩猟免許を取得。クルックフィールズの立ち上げを機に、野生鳥獣肉処理管理者の資格を取得し、イノシシの解体からソーセージやハムの製造までを一手に引き受けています。ジビエを知り尽くす岡田さんの調理に無駄はなく、スペアリブの骨周りの肉も丁寧にコンフィしてからローストし、食卓へ。ここでは食後に残るその骨さえも(リン酸を多く含むという理由から)肥料づくりに役立てられます。


ジューシーな旨味が弾けるイノシシのソーセージやベーコン、ハムなど。仕留めてから30分以内の猪や鹿しか使わない。


食を巡る自然循環の輪が、木更津の周辺地域をも抱合し、すべてが新たな生命に還元される見事さは、現代の消費の概念を揺さぶるだけの力を放ちます。サステナブルな社会を目指す食と農業の循環は、様々な生命の介在により、小さな輪から大きな輪へ無限に広がる可能性を秘めている。「いのちのてざわりを感じてほしい」、代表者・小林武史さんがクルックフィールズに込めた思いが鮮やかに浮かび上がります。



◎ KURKKU FIELDS
千葉県木更津市矢那2503
9:00~17:00
定休日:祝日以外の火曜日、水曜日
入場料:平日無料、休日:大人(中学生以上)1000円、
子供(4歳~小学6年生)500円、未就学児無料
https://kurkkufields.jp/ 





ゴールとのつながり


7

エネルギー   エネルギーとの向き合いを見直す


11

まちづくり   人、地域、自然との連携を大切に


12

つくる責任つかう責任   食と農のつながりを知り、持続可能な農業品を選ぶ


13

気候変動   温暖化を促進する行動を控える


15

陸の豊かさを守ろう   生態系を守る




  

<OUR CONTRIBUTION TO SDGs>
地球規模でおきている様々な課顆と向き合うため、国連は持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals) を採択し、解決に向けて動き出 しています 。料理通信社は、食の領域と深く関わるSDGs達成に繋がる事業を目指し、メディア活動を続けて参ります。

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