シェフたちが熱い視線!グラスフェッドの肉焼きレッスン
ヨーロピアンビーフ&ラムfromアイルランド
2023.03.30
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text by Sawako Kimijima / photographs by Hide Urabe
2月13日、東京・広尾のイタリアンレストラン「ラ・ビスボッチャ」で開かれたセミナー「ヨーロピアンビーフ&ラム フロム アイルランド、自然との共生」に集まったのは、肉焼きの腕で評判のシェフや環境意識の高い料理人たち。「エメラルドの島」とも呼ばれる緑豊かなアイルランドの農業に今、世界中のトップシェフから熱い視線が送られています。なぜ、注目が集まるのか? セミナーのレポートを通してお伝えしましょう。
目次
人と動物が共に暮らしを営む畜産スタイル
「アイルランドのグラスフェッドビーフの2021年の対日輸出額は2800万ユーロ、前年比176%を記録しました。2022年は3100万ユーロで前年比110.7%。好調な伸びを続けています」
セミナーの冒頭、アイルランド政府食糧庁「Bord Bia(ボード・ビア)」ジャパンマネージャーのジョー・ムーアさんが挙げたのは、同国産の牛肉へのニーズが急速に高まっていることを示す数字でした。
2022年のアイルランドの農水産物や食品の輸出総額は2.3兆円(編集部注:日本の農林水産物・食品の2022年の輸出額は約1.4兆円で過去最高)、輸出相手国は187カ国にのぼります。前年比が122%(!)ですから、世界中から引き合いが来ていると言っていいでしょう。
「国土は84421㎡で北海道とほぼ同じ大きさ。人口は約500万人。でありながら、2500万人分の食料を生産し、その90%を輸出しています」とジョーさん。小さな国の大きな食材生産力には驚くばかりです。
農産品を生み出す力の根底にあるのがアイルランドの自然環境です。ジョーさんによれば、「ヨーロッパの最西端に位置し、大西洋から吹く偏西風の影響で気候は温暖で安定しています。平均気温10℃、一年の降雨量が1000mm、年間を通して雨に恵まれ、夏は涼しく、冬は緯度のわりに寒くありません」
「ヨーロピアンビーフ&ラム fromアイルランドの品質を語る上で地理的条件はとりわけ重要ですね」と語るのは、食肉コンサルタントのジョン・マクドネルさんです。
「温暖な気候で、年間を通して降雨に恵まれているため、国土の8割が農地なんですよ。さらにその8割が牧草地! 一年のうち平均280日を放牧で育てています」
「加えて、質の高さを生み出す要因が、牛を育てる農家の99%が家族経営という点です。人と動物が共に暮らしを営む感覚があるんですね。農家はアニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮し、動物の健康を気遣い、薬物などは極力使用しない。だから、のびのびと健康な牛や羊が育つのです」とジョンさん。
国を挙げた環境への取り組みが、世界からの信頼に
アイルランドでは、2012年、国家的食品サステナビリティプログラム「オリジングリーン」が政府主導で制定されました。農家から小売業者までが一丸となって、環境保護、エネルギーの使用と排出、生物多様性、水ストレス、動物福祉などに取り組むプログラムで、ISOやカーボントラストの国際規格に準拠し、独自に検証しています。
たとえば、牛肉のトレーサビリティを徹底するため、個体識別情報、出生からと畜場に至るまでの移動に関するデータについて全国的な一元管理がなされています。
「55000軒の農家が参加していて、彼らは18カ月に一度監査を受けて、動物の健康状態やCO2の排出量、水質と水の消費、土と牧草の品質管理などを調べられます。95%の畜産家や酪農家が参加しているんですよ」
「グリーン・クレデンシャル」という言葉があります。環境への配慮に関する信頼性を意味し、「グリーン・ウォッシュ」(見せかけの環境対策)の反対語と言っていいかもしれません。アイルランドの食材に世界中から引き合いが来るのは、国を挙げて環境を守る取り組みを積み上げていく「グリーン・クレデンシャル」があるからでしょう。
グラスフェッドならではの豊かな風味と安定した品質
会場となった「ラ・ビスボッチャ」の井上裕基シェフは、ここ数年来、アイルランド産のグラスフェッドビーフを使っています。フランス、オランダ、アメリカ、ウルグアイ、メキシコ、国産の赤身など、様々に試した上で選んだのがアイルランド産のヘレフォード種でした。「赤身の中にほどよい脂を抱え込んでいる。焼くと表面はサクサク、中は弾力があって、噛むと繊維を感じつつ、肉汁があふれ出る。分厚く焼いておいしい肉です」、選んだ理由をそう語ります。
ジョン・マクドネルさんは、ヨーロピアングラスフェッドビーフfromアイルランドの特徴を次のように説明します。
「濃いチェリーレッドの赤身とクリーミーな脂肪層から成り、赤身の中には目に見えないくらいきめが細かくて均一なマーブルエフェクト(脂肪交雑、サシ)が入っています。脂肪がクリーム色なのはカロテンによるもので、草を食べた証。味わいは複雑で多面的、奥行きのある風味を持ち、ジューシーです」
以前、ミシュランシェフが草で育てた牛と穀物で育てた牛の味わいの違いをワインに例えて、「グラスフェッドがボルドーとすれば、グレインフェッドはニューワールド」と表現したことがあったそうです。「赤身の中に適度なサシが入っていて、ジューシーな味わいは日本人の好みに合うと思いますね」とジョンさん。
井上シェフがヨーロピアングラスフェッドビーフfromアイルランドを選ぶ理由にはもう一点、「品質の安定と扱いやすさがある」と言います。
「同じ地域、同じ農場、同じ品種でも、個体差が大きいのが牛肉です。常に100点満点ということはない。その点、アイルランド産は安定していますね。BPM(ビジネス・プロセス・マネージメント)が徹底されているのを感じます。客席数100席規模の当店では、グリルの焼き手が4人います。オペレーション上、誰でもおいしく焼ける肉でなければ困る。その点、アイルランド産のグラスフェッドビーフは赤身に細やかでほどよいサシが入っているおかげで、パサついたり硬くなったりせず、焼き手による差が出にくいですね」
道具や調理法を選ばないバッファのある肉
「焼き手を選ばないと同時に、焼く道具や調理法も選ばないバッファがあります」と井上シェフは、セミナーの参加者のために、ヘレフォード牛のTボーンの炭火焼きとオーブン焼き、Lボーンの炭火焼きとオーブン焼き、ヒレのロッシーニ風を用意しました。
グリルで焼いて見せながら、「骨付き肉は、骨から熱を伝えていくことが重要。やわらかい熱が内部から伝わると同時に、骨髄が溶け出して、その風味が肉に移ることによって味わいを増すからです。まずは骨から、そして、脂をしっかりと焼き、ひっくり返しながら全面を焼いていきます」と解説。「グラスフェッドはもちろんレアでもおいしいけれど、しっかり焼くとまた独特の風味が引き出される。食べ慣れている外国人のお客様は『ミディアム・ウェルダンで』とリクエストしますね」
【牛Tボーンの炭火焼き】
【牛Lボーンのオーブン焼き】
【牛ヒレ肉の火入れ】
ジョンさんからは、羊肉についてのレクチャーも行なわれました。
「主にアイルランド西部の山間部で飼育されています。3、4月に生まれると離乳後は草で育てられるため、複雑で豊かな風味を持ち、脂のキレが良い。山の草にはハーブが多いこともおいしさの理由のひとつでしょう。ヨーロッパの人々の好みに合っていますね」
【骨付きロースラムの炭火焼き】
【骨付きロースラムのオーブン焼き】
「草で育てた牛や羊は、穀物で育てた場合と比べて低脂肪で飽和脂肪酸も少ないと言われています。加えて、人体では生成できない必須脂肪酸とされるオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸の比率が高い。グラスフェッドは動物福祉や環境に配慮した飼育法であると同時に、人間の健康にとっても健全な生産法なのです」とジョン・マクドネルさん。「今、社会はグラスフェッドを求めていると思いますね」とのジョンさんの言葉には、これから人間は畜産とどう向き合っていくべきかという示唆も含まれていました。
◎アイルランド政府食糧庁BordBia
https://eubeeflamb.eu/ja
◎ラ・ビスボッチャ
東京都渋谷区恵比寿2-36-13 広尾MTRビル1F
☎03-3449-1470
17:30~21:30LO(祝日~20:00LO)
日曜休み
※3月31日(金)まで「アイルランド・ビーフ&ラム キャンペーン 2023」を実施中