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JOURNAL / JAPAN

【ようこそ発酵蔵へ】昔ながらの造りが最善の方法「米酢」

福井・小浜「とば屋酢店」

2024.05.20

【ようこそ発酵蔵へ】昔ながらの造りが最善の方法「米酢」 福井・小浜「とば屋酢店」

photographs by Bungo Kimura

連載:ようこそ発酵蔵へ

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。壺を使った発酵により酢を造る福井・小浜の「とば屋酢店」へ。

大小27個が並ぶ壺は大きなもので高さ1m以上。保温性に優れ手に入りやすいもみ殻に埋める。

酢酸菌は酸素を必要とするため、むしろをかけて通気性を確保しつつ虫を除け保温。

酢酸菌膜にはちりめんのように細かな皺が入る。

酢酸発酵が終わった酢は壺から汲み上げて木樽で熟成させる。

12代目の中野貴耀さん。酢造り歴50年。現在は、13代目の中野貴之さんが後を継いでいる。


昔ながらの造りが最善の方法

江戸時代には北前船で賑わう海運の一大拠点として栄えた小浜市。宝永7年(1710 年)に創業したとば屋の米酢は、昆布の加工用に北海道に送られたほか、小浜港で獲れる豊富な海産物を都に送るための酢締めなどに活用されてきた。現在でも、小浜市の名産品である小鯛の笹漬けや鯖ずしに使用されている。

とば屋の酢造りの特徴は、壺を使った発酵だ。「創業当初は樽で仕込んでいましたが、樽は古くなるとたがが緩んで酢が漏れてしまう。それでいつからか壺を使い始めたようです」と12 代目の中野貴耀(たかあき)さん。清酒と前回の仕込で得た種酢を陶器製の壺に入れ、もみ殻とむしろで覆い1 ~ 2 カ月静置発酵。エアコンは使わず、1 年を通して自然な温度で醸す。夏は外気が約30℃まで上がり、発酵がよく進む。冬場はもみ殻が発酵で生じた熱を逃がさず、じっくりと時間をかけて発酵させていく。

「とにかく、菌に任せて余計なことはしない。電気のない時代から変わらない造りなのは、それが一番いいやり方だから。もっとおいしくなる作り方があるならそうしますが、今のところこれがベストなんですね」

壺で静かに醸した米酢は酸の角が取れ、まろやかで奥深い米の風味が感じられる。「クセのない穀物酢などが好まれる時代ですが、日本酒のように豊かな米酢の味わいを楽しんでほしいです」

壺で仕込む「壺之酢」はまろやかながら、料理に使うとキリッとした酸も感じられる絶妙のバランス。594円/ 360㎖、1188円/ 900㎖(税込)。



◎とば屋酢店
福井県小浜市東市場34号6-2
70120-56-1514
www.tobaya.com

(雑誌『料理通信』2019年8月号掲載)

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