10月6日(月)よりフェア開始。
茨城の初秋の食材に生命を吹き込む、シェフ5人の発想。
2025.10.06

【PROMOTION】
text by Mieko Sueyoshi / photographs by Hide Urabe
今年8月、都内5人の実力派シェフたちが、米、常陸秋そば、常陸牛、有機野菜、茨城県の豊かな食材を視察し、料理のアイデアを膨らませました。フレンチ、イタリアン、モダンアジアの料理人が、生産者や食材のどこにフォーカスし、どんなメニューを生み出したのか。10月6日(月)より提供が始まるメニューの裏側に迫ります。視察の様子・食材の詳細は、こうして料理人は自然の代弁者になる。5人のシェフが産地に教わること。
【5人のシェフの発想】
■フレンチ「ア ターブル」(湯島)中秋陽一
■モダンベトナム「アンディ」(外苑前)鈴木康哉
■西洋料理「ベッラ・ヴィスタ」(赤坂)齋藤慎太郎
■イタリアン「ロッツォ・シチリア」(白金)中村嘉倫
■イタリアン「プリモパッソ」(新富町)藤岡智之
常陸牛「煌」のスネ肉をエフィロシェ、そばの実リゾットで旨味を包む

「ア ターブル」はフランスのビストロそのままの温かみある店。アジア大会や世界選手権で複数回入賞したパテ・クルートやジビエ料理など、フランスの伝統技法を重視する中秋陽一シェフが手掛ける料理の数々は、秋が深まるこの時期、クラシカルなフランス料理ファンを引き寄せる。
視察では「フランス料理で使うべき食材は何か?と考え、常陸牛 煌(きらめき)と常陸秋そばを選びました」と話す。長時間煮込んだ牛スネ肉の深い旨味にそばの実やそば粉といった和の要素を重ねた一皿を考案した。
茨城県内で生産される常陸牛のうち「煌」に認定されるのは小ザシ(きめ細かい霜降り)指数やオレイン酸比率など5つの厳しい認定基準をクリアしたものだけ。その割合は常陸牛全体のわずか3~5%という希少なブランド牛だ
煌はスネ肉を使い、赤ワイン、フォンドヴォー、香味野菜、スパイスと共に4時間ほどオーブンで煮てエフィロシェ(繊維に沿って裂く技法)に。そばの実はバター、エシャロット、コルニッション、ケッパーと共に鶏のブイヨンで炊き上げる。セルクルの内側にパスタと鶏ムースを巻き、そばの実のリゾット、エフィロシェした煌、長芋を重ね、煌の煮汁を煮詰めたソースで仕上げた。



「通常、スネ肉を煮込むと繊維がボロボロと崩れることが多いのに対し、煌はきめ細かなサシが入り繊維も柔軟。崩れることもなくてソースとの一体感が生まれます」と中秋シェフ。粗く裂いた肉は口に入れるとホロホロと溶け、ふんわり食感のそばの実と共にコク深いソースとよくなじむ。さらにほっくりした長芋とカリッとしたそば粉クレープとイタリアンパセリが重なって、賑やかな食感だ。
「母親の実家が茨城県大子町なので、常陸秋そばは食べ慣れていますが、今回、現地でいただいたそばは香りがあって格別においしかった。十割より実は二八の方がおいしいと聞いたので、このそば粉クレープも二八。確かに十割だと伸びが悪いので分厚いクレープになってしまい、乾燥させたときの歯切れが悪くなります。産地に行くと自分が知らない事がまだまだたくさんあると気づかされます」
◎à table(ア ターブル)
東京都文京区湯島3-1-1木村ビル 1F
☎ 03-5812-2828
月曜~土曜 17:30~22:30 (最終入店20:00)
日曜、月1回不定休
https://atable-tokyo.co.jp
◎茨城フェア
2025年10月6日(月)~20日(月)の期間中「常陸牛 煌のスネ肉と常陸秋そばのタンバル仕立て」(¥ 1,1000・税込)を提供。※提供は2人分です。
食感・香り・酸味。ライスペーパーに詰め込む多彩な旨味設計

2024年6月より、東京・神宮前のモダンベトナム料理店「アンディ」で、シェフを務める鈴木康哉さん。「銀座レカン」で培ったフランス料理の技術を下地に、日本の季節の食材で独自の味に仕立てる料理は、ナチュラルワインや日本酒との相性が良く、他ではない味わいに定評がある。
視察先で鈴木シェフが心惹かれたのは多彩な米を生産する「大嶋農場」の米麹だ。米麹に塩とぬるま湯を混ぜ数日置いて作る塩こうじは、たとえばイカにまぶしてグリルしたり、野菜を和えるビネガーに混ぜて甘味を加えたり、といった場面で使いはじめた。
「塩こうじは素材の旨味を引き上げてくれる万能調味料です。大嶋農場の米麹は炊き立てのご飯のような良い香りがして、すぐに使ってみたいと思いました」と鈴木シェフ。
「塩こうじは素材の味や目的に合わせて塩分濃度を自分で調整できる点がいい」。今回仕込んだ塩こうじは同割の麹と水に対し塩は10%。毎日かき混ぜながら常温で1週間ほど置き、一度ミキサーにかけてから白ビーツと合わせている。「白ビーツはマリネする前に刻んで塩をまぶしてしばらく置き、水気を搾ります。そこで今回は塩分量を控えています」



生春巻きは肝ソースを塗って焼いたサンマを芯に、塩こうじに3日ほど漬けた白ビーツと茹でて刻んだ赤ビーツ、黄色ビーツのなますをえごまの葉で包み、薄切りにした三色ビーツと渦巻きビーツが透けて見えるよう、ライスペーパーで巻いている。ゴマとスパイスをブレンドした自家製デュカを添えて、香りのアクセントを。ひと口頬張るとビーツのさっぱりとした甘味と、脂の乗ったサンマの旨味、えごまの香りとが混ざり合って口中が華やかなおいしさに包まれる。
合わせるワインを尋ねると「日本酒です」と即答。「ベトナム料理には一般に白ワインやオレンジワインが合うのですが、もぐもぐ咀嚼して食べる生春巻きはぜひ、日本酒を合わせてみてください」。口中をリセットするワインにはない、料理と共に味わう米の酒ならではの合わせ技。ぜひお店で体験していただきたい。

◎Ăn Đi(アンディ)
東京都渋谷区神宮前3-42-12 1F
☎ 03-6447-5447
18:00~23:00LO
土曜・日曜のみ12:00~13:30LO、18:00~23:00LO
月曜、不定休
http://andivietnamese.com/
◎茨城フェア
2025年10月6日(月)~20日(月)の期間中「秋刀魚と大嶋農場の米麹漬けビーツの生春巻き」をランチ(¥8,800~)、ディナーのコース(¥1,1000~)の中の一品として。※サービス料別
炭火の焼き目と薪の燻香、肉を彩る芳醇で複雑な風味

東京・赤坂のホテルニューオータニ「ベッラ・ヴィスタ」は2025年6月、炭火と薪火を掛け合わせたグリル料理をコンセプトにリニューアル。料理長に就任した齋藤慎太郎シェフは、「トゥールダルジャン 東京」をはじめホテルニューオータニの様々なレストランで研鑽を積んだ実力派だ。
「グリルで提供する牛肉は特に産地を限定せずにその時々の最良の国産牛や和牛を使っています。今回、初めて生産者さんの話を聞いて、肉牛がいかに愛情をもって育てられているかがよく分かりました」と話す齋藤シェフは、グリルでの提供を前提に迷わず常陸牛 煌のフィレ肉をリクエストした。
「煌のフィレは小ザシ(きめ細かい霜降り)が入っていて断面が白っぽく見えますが、赤身とサシとのバランスが良いので肉の味もしっかり感じられる。A5ランクの和牛が持つ脂っぽさとは全く違って、食べたときに表面がサクッとしていて赤身の旨味も楽しめる。この特徴を活かしたグリルに仕上げたいと考えました」
フィレ肉は180gの塊肉を使用。常温に戻さず冷蔵庫から出した状態でロストルにのせ、炭火にごく近い位置で7~8分かけて休ませながら表面を焼いた後、ブナの薪をくべて炎が上がったところに戻して薪の香りを纏わせる。再び休ませ8割ほど火が入ったのを確認したら、コブミカンの小枝をくべた炉に肉を戻して柑橘の香りを纏わせ、熱々の状態で提供する。



焼き上がった肉は食べるとシェフが話した通り、サクッと軽やかな表面としっとりと旨味の濃い赤身の好バランスが印象的だ。味付けはマルドンの塩と生コショウのみというのも頷ける。
◎西洋料理「ベッラ・ヴィスタ」
東京都千代田区紀尾井町4-1ホテルニューオータニ ガーデンタワー40F
☎ 03-3238-0020
ランチ 12:00~15:00 (14:00LO)/ディナー 17:30~22:00 (20:00LO)
無休
https://www.newotani.co.jp/tokyo/restaurant/bellavista/
◎茨城フェア
2025年10月6日(月)~20日(月)の期間中「煌フィレ肉の縄文グリル」をアラカルト(¥22,000)またはディナーコース(¥15,000~)の一品として。※ともにサービス料別途。※10月11日(土)、20日(月)のディナータイムは除く。
「生きた」葉野菜でつくる、鮮やかな青い香りと立体感

東京・白金「ロッツォシチリア」は、料理もさることながら、その空間も集う人々も現地そのものの活気あふれる店だ。中村嘉倫シェフがシチリア修業を経て店を開いたのは2011年。以来、アンチョビーやオリーブオイルなど基本食材は現地から、野菜や魚など旬の食材は国産を使ってシチリア伝統の味を提供している。
視察から選んだのは大嶋農場のリゾット米。「店ではリゾット用の米は月2~3キロ使いますが、イタリア産はとても高価で国産リゾット米の2倍ほど。でも今はリゾット用の米が日本各地で作られていて、イタリア産と比べても遜色ありません。今回訪ねた大嶋農場はとにかく色々な品種の米を育てていますね。多品種の米を手掛けているからいろいろなノウハウを持っていらっしゃる。その熱心さゆえに信頼できる生産者さんだと感じました」
そう話す中村シェフが作ったのは、小松菜とルーコラのペーストで作る鮮やかな緑色のリゾットだ。ペーストにはアーモンドとピーナッツも加えて滑らかさとコクをプラス、ペコリーノチーズの塩味を活かした優しい味に、仕上げ直前に追加したルーコラの葉と今が旬の「おおまさり」が加わって、メリハリのある味が完成した。
小松菜とルーコラは視察した笠間市にある有機野菜の生産者「ヴァレンチア」から。「小松菜もルーコラも味がとてもしっかりしています。野菜の旨味が強いので、ブイヨンは使わずに米を水で煮て、生クリームとペーストに入れたナッツ、ペコリーノチーズのコクで十分おいしい。ただ葉の柔らかいルーコラは生でリゾットに入れると溶けて香りが飛んでしまうので、仕上げる直前に追加して味と香りを活かしました」


ヴァレンチアでは通年、ほうれん草、小松菜、ルーコラを生産している。「栽培の仕方や野菜の出来など、こちらから尋ねなくてもSNSなどで現地の情報が発信されるのも産直取引の面白さ」。力強い野菜の味を活かす中村シェフのシチリア料理、さらなる展開が楽しみだ。

◎ロッツォ・シチリア
東京都港区白金1-1-12 内野マンション1F
☎ 03-5447-1955
17:00~23:00 (21:00LO)
日曜、月曜休
Instagram:@rozzo_sicilia
◎茨城フェア
2025年10月6日(月)~20日(月)の期間中「ルーコラのペーストとおおまさりのリゾット」(¥2600)をアラカルトで。
米の粘りで乳化、和だしと果実でつくる軽い口溶け

2年前にイタリアから帰国し、新富町に自店を構えた「プリモパッソ」藤岡智之シェフ。店内はマットで温かい印象の土壁、木製の格子天井が織りなす光の陰影、和な空間のカウンターキッチンに、艶やかな真紅のベルケル社製生ハムスライサーが鎮座する。
ここでは和の食材や技術を積極的に取り入れながら、日本人の繊細な味覚と感性に沿うイタリア料理を提供する。特徴的なのはコース11皿のうちパスタやリゾットが4皿あること。イタリアの粉ものが生み出す、豊かな世界観とバリエーションを表現している。
視察先から選んだのは、大嶋農場のリゾット米。これまでイタリア米を使わずに粘りが控えめな日本のうるち米をリゾット用にしていた藤岡シェフ。リゾットは、バターやオリーブ油をたっぷり加えて重い味にせずに、油脂を抑えて米の粘り気で乳化するくらいの軽やかな仕上がりを目指している。
粒の大きさは小ぶりくらいが好みだ。「イタリアのリゾット米は僕にはどうも大きすぎて。やっぱり日本人なんでしょうね。その点、大嶋農場のリゾット米は丁度いいサイズ感です」


「イタリアの各地域では、ベリーや柿、リンゴなどの果物を使った軽い後口のリゾットがたくさんあります。僕はそれが好きで」。今回は、旬のいくらと梨を具に選んだ。
鍋にリゾット米を入れたら塩少量を加えて乾煎り。「塩はこの段階で決めます。後塩だとスープに塩味がつくだけで米に入らない」。そこに昆布だしでとったアサリのだしを加えて炊き上げ、米に火が通ったら少量のバターと青のり、パルミジャーノ・レッジャーノ、仕上げにいくらと刻んだ梨を加える。梨の品種は甘さのほどよい「幸水」。盛り付け後に、モミジ型のコリンキーのピクルスで酸味を添える。


ほのかな乳化で米の舌触りはもっちりしながらも芯のある優しい口当たり、だしとの一体感。いくらと青のりの磯の香りとおだやかな梨の甘味が重なり、澄んで消えていく余韻、ミネラリーな透明感のある味わいだ。
築地に頻繁に通い、3軒ほどの親しい八百屋から旬を教わり、使い方を尋ねる。食材選びはブランドや口コミに捉われず、自分の料理の質に合うものを選び抜く。「11月には修業先の先輩がパティシエとして入店予定です。彼を待って、この1年はひとりで頑張ってきました」とうれしそう。シュランガイド東京2026で早くも2度目の星を獲得した。一歩を踏み出した「プリモパッソ(最初の一歩)」は、次の一歩へ進んでいる。
◎PRIMO PASSO(プリモパッソ)
東京都中央区築地1-5-11 ACN築地ビル B1F
☎ 03-6826-9672
17:00~23:30(2部制:17:00/20:30)
火曜、水曜、不定休
https://ppasso.jp/
◎茨城フェア
2025年10月6日(月)~20日(月)の期間中「大嶋農場リゾット米 いくら 梨」をおまかせコース(¥16,500~)の一品として
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