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PEOPLE / 寄稿者連載

酷暑に耐えうる体へ。夏は“ぼんやりとした薄い味の飲み物”を探求

長尾智子さんの「今日も台所」第7回

2026.08.05

連載:長尾智子さんの「今日も台所」

案の定、今年ももれなく酷暑がやってきた。暑い、熱い、厳しいと言いながらも、長時間外を歩かねばならないわけではなく、取りあえず熱中症を回避しながら涼むことができる状況に感謝の毎日だ。


冷たさは、ほどほどがいい

この暑さと湿度では、案の定食べて負担がなく、それでいてパワーの元になるようなものを毎日食べていたい。暑い季節に思い浮かぶのは、昔から言われがちな “暑いからといって口当たりのいいさっぱりしたものばかり食べていると、夏バテする” という何かと聞いてきたような夏の食事に関する一般論。夏に食欲が落ちるのを経験したことがないが、どちらかといえば食事よりも飲み物、冷たいものが要注意だろう。

いつだったかやはり暑い盛りで、知人の仕事先になぜか飲み物を持参したことがある。確か赤紫蘇と梅で作ったシロップが上出来だった年だった。行き先はスタジオだったので、世話のないようにと保存瓶にたっぷりの氷とともに深い紫色の梅紫蘇ジュースを入れて。なんとも涼しげな差し入れだったけれど、飲んだ後しばらくして、自分の胃がやられてしまった。冷たさはほどほどがいいという教訓。

今ではすっかり常温の水を飲むことが多いし、キンキンに冷やしたものはとんと飲むことがなくなった。そして、甘い飲み物もほとんど飲むことがない。
料理において、自分で作って食べる場合ももてなす時も、外食をする時にも、いつも気になるのはどんな温度で食べるか、食べさせるか。つまりは、どんな料理でも人の口に入るタイミングが重要なので、それは飲み物も同じだろうと思う。

そんなわけで、冷たいと甘いが過剰にならないように習慣ができたせいで、“ぼんやりとした薄い味の飲み物” が悪くないと思うようになってしまった。

伸びる気のありそうな芽を
写農家に託して

ここ数年、東京と実家のある新潟を行き来しながら、東京では仕事をし、新潟では米作りをはじめ、野菜をあれこれと作り始めている人たちがいる。彼らが農作業をするとき、私が作っているハーブのブレンドティーを持って行き、気に入って飲んでくれているという。しかも、暑い日でも冷やさずに、常温だったとか。とにかく熱くもなく冷たくもない温度で、だったと思う。それは外での作業の実感から来たものだろうし、きっと正しい。

この春の終わり頃、彼ら二拠点の写農家(二人とも写真家だから)から、最後のグリーンピースを送りますとメッセージがあって、さすがに最後なんだな、よく頑張って育ったね、と言いたいようなグリーンピースが、ハーブときゅうり、そしてビーツに囲まれて送られて来た。このグリーンピースは、ちょっとしたことがきっかけで育てられたものだ。

それは、春先の撮影の準備をしていたときのこと。よく行くスーパーマーケットで鞘に入ったグリーンピースを探していたら、2パックだけ残っていたのでああよかったと手に取った。

東京の普通のスーパーは、グリーンピース(というか鞘に入った豆類全般)が不人気なのかどうかわからないが、1パックの量が少なく値段が高い。高すぎる。しかも豊富に出回るという景色をほぼ見たことがないので、タイミングによってはあったらラッキー、みたいな感じだ。

鞘は大きかったので、大丈夫だろうと思い、いざ剥いてみると粒が揃って大きくて色艶も悪くない。剥いていくと、みっちり詰まった実のいくつかから、何だか伸びる気のありそうな芽が出ている。収穫がいつなのか、売り場に届いてからどのくらい経っているのかということも少しは頭をよぎったけれど、それよりも、あぁこの子たちは育つな。と感じるエネルギーが伝わってきた。

根が出ている実を集めておき、タイミングのいいことに、翌日撮影にやってきた写農家に試しに育てて欲しいと申し出たというわけだ。これはいけるんじゃないかな、と意見が一致して、広い畑の一角に植えてくれた結果、この青々とした実に育った。

この前にも2回ほどたっぷり食べたから、丈夫にたくさん育ってくれたのだ。ポットから地植えへ、支柱を立ててしっかり見守って育ててくれたからこそ。この先、いろいろなものから根を出して渡してしまいそう。素材の観察が癖になりそうだ。


ほのかに滲み出る野菜の味を考察

グリーンピースは十分柔らかく茹でて(十分柔らかくというのがおいしさを引き出す茹で方だと思う)茹で汁につけておき、スープにしたり、サラダにしたりで食べ、と一緒に入っていた、葉つきのビーツは茹でて酢漬けにした。

その時、茎も一緒にと思いつつ、けっこう筋が強いので、セロリのように筋を取ってみる。
大きな葉は、茹でてオリーブオイルで和え、冷奴に乗せよう。ビーツを茹でてもう少しで茹で上がる、というところで茎を入れて一緒に茹でる。そして実と共に酢漬けする。茎は少し硬さが残るが、それはそれ、茎の個性だから。

細く繊細に剥けた筋は、カールした細いリボンのよう。思わずちょっとお湯を沸かして煮だす。色が出る素材は、大体風味がよく出るような?細い筋にまで、土っぽいようなビーツの風味がしっかり宿っている。

少し塩を入れて飲んでみたり、冷やしておいたりして観察と考察。それはグリーンピースも同様で、茹で汁は優しげなブイヨンとも言えるから、何が足されればスープとして成立するかを自然と考える。

話がすっかり遠回りしたが、この夏、“ぼんやりとした薄い味の飲み物” が一つテーマとして浮かび上がったというわけで、例えばハーブときゅうりを冷水につけると風味が移ってフレーバーウォーターになるように、野菜から滲み出た風味が素材をほのかに染めたり、浅漬けの漬け汁や出汁、野菜風味の飲み物にもなりそうだということに気づいた。

まだ続く暑さの中、春に始まった素材の新たな気づき。これが夏休みの宿題としたら、提出は遅れ、まだ当分終わりそうにない。

今月のキッチンハック「割り箸とその仲間たち」

ちょうどいい働きをする、棒たち


うっかり断るのを忘れたり、そもそもセットされていたりする割り箸。素材や作りはピンキリとも言えるけれど、非常用に取っておく以外に便利な使い道があるのをご存知?

キッチンには、レギュラーの包丁や菜箸、レードルなどの他に何があるだろう。私の場合は、スプーンを異常なほど?使うらしい。撮影が終わると、びっくりされるほどの数のスプーンがシンクのボウルにたまっていて、ある時から使っては洗い、を繰り返すようになったが、それでも沢山あるスプーンの出番は多い。

混ぜるためか、味見の回数が多いのかわからない。味見は年々減っている気がするので、やはり混ぜる回数か。小さなサイズの泡立て器もよく使うし、大小のゴムベラもまあまあ数がある。木べら、菜箸、大きめのレードル代わりにもするスプーン、スパチュラと全体を数えたら何本になるのかわからない。

そんな具合だが、時々小さな道具の場所を変えてみたりすることがある。久しぶりに席替えをしたのは、割り箸とあとは何と言ったらいいのか、割り箸とその仲間たち、かな。

太めのものは、富山のますの寿司の容器の部品と言ったらいいだろうか、笹に包まれた押し寿司をしっかり固定するための竹の太い棒4本。これがとても便利なのだ。
しかし、写真に撮った中にはなくただいま欠品中というところで、散々使って役目を終えて久しいから、またますの寿司を食べなければ。

今使っているのは、丸い竹の箸(どこかアジア圏のもの)、少し幅のある竹の棒などは出処不明、割っていない割り箸も幅があって使いやすので、それも仲間入りしている。

割り箸は本来使い捨ての道具だが、さっと何かを混ぜたら洗って乾かし、繰り返し使う。そう、さっと混ぜる(混ぜて濃さや質感を見る)のに、この棒たちはちょうどいい働きをするのだ。細いより太めが都合がよく、それは試してみるとよくわかるはず。

2本あったら、ミニサイズの菜箸の役割も果たすので、惜しげなく便利に使うといい。もし道具立てがなかったら、ジャム瓶かなにかに割り箸たちを入れて近くに置いてみてはいかが?


長尾智子

長尾智子
料理家、フードコーディネーター。単行本の出版や雑誌の連載などの執筆、商品開発、メニュー提案などと並行してオリジナルの器〜SOUPsを主宰。料理とお酒について様々に実験中。 Instagram:@new__standards

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