仏・ブルゴーニュ シャブリワイン生産者 ジャン・フランソワ・ボルデ Jean Francois Bordet
多彩な顔を持つシャブリの魅力に気付いてください
2019.09.06
text by Megumi Nishida / photograph by Masahiro Goda
19世紀にパリで大流行し、世界中に人気が広まったシャブリ。今や辛口白ワインの代名詞のように語られるが、あまりの知名度の高さは両刃の剣かもしれない。「シャブリの真の魅力は多彩性にあります」と語るのはシャブリ委員会のジャン・フランソワ・ボルデ氏だ。
「シャブリは、シャブリという一種類のワインだと思われがちですが、それは誤解です」とジャン・フランソワさんは言う。「たしかに、シャルドネという一品種で、ブルゴーニュ全体のわずか16%しかない小さな地域で造っているため、どれも同じと思われても不思議はありません。けれど、家飲みからグランメゾンのディナーまで網羅できる、とても多様なスタイルをもつワインなのです」
1億5千万年前に海底だったシャブリ一帯は、海の堆積物がたまった土壌で形成されている。キンメリジャンと呼ばれるこの土壌によって、シャブリ独特の純粋さやミネラル、フレッシュ感という個性が育まれる。「とはいえ、シャブリ地区の土壌がすべて均一というわけではありません。産地の中心を貫くセラン川に近ければ川石が多く、離れれば泥土や砂の割合が増える。標高や方角によっても栽培環境はことなってくる。栽培する場所によって、ワインのスタイルはさまざまに変わるのです」
この栽培環境の違いごとに、シャブリではプティ・シャブリ、シャブリ、シャブリ・プルミエ・クリュ、シャブリ・グラン・クリュの4つにアペラシオンを分類している。プティ・シャブリの畑は、標高の高い台地にあり、土壌は石灰質だが泥土や砂土が見られることもある。ふくよかでフルーティーな味わいが特徴。「アペリティフや、旬の食材のみずみずしさを生かした料理、ハムやパテ、テリーヌなどのシャルキュトリーやチーズなどと気軽に楽しんでいただけます」。
シャブリの畑は斜面に位置し、石灰と石が多めの土壌。よりリッチでミネラルやフィネスがある。白身魚のムニエルや海老の鉄板焼きなど魚介類全般に合うし、豚肉や鶏肉のローストにも。仕事帰りに友人とカジュアルなレストランで過ごす際のよいパートナーとなる。 シャブリ・プルミエ・クリュはキンメリジャン土壌の比率が高く、強いミネラル感としっかりした骨格が特徴的。複雑さも増すので、魚介類でも刺身などではなく油脂を使って調理したものや、仔牛のクリーム煮などの料理が合う。クロスを敷いたようなレストランにぴったりだ。
シャブリ・グラン・クリュは、セラン川右岸の日当たりのよい丘に位置している。土壌はピュアなキンメリジャン。力強く、凝縮感があり、かつシャブリならではの強いミネラルとフレッシュさを持ち合わせた複雑な味わいの希少品。「クリームやバターを用いたコクのある複雑な料理にぴったり。特別なシチュエーションにふさわしい一本です」 ひとつのブドウ品種からこんなに多彩なワインが生まれるのかと驚くワイン産地、シャブリ。どんな新しい楽しみ方に出会えるか、さまざまなシチュエーションや料理と合わせて、ぜひ試してみてほしい。
家飲みからハレのディナーまでシャブリの飲みこなし方
~家飲み、BBQ、カフェサンドからグランメゾンのメインディッシュまで。アペラシオンを手がかりに、シャブリの愉しみ方を提案します~
教えてくれたのは「AERU」丸山智博シェフ。年に一度はフランスへ。レストランから居酒屋まで、「フランス人がどんな風に食を楽しんでいるのか、現地で彼らと一緒に味わっています」。「シャブリといえばミネラル感、そしてシーフードと合わせるイメージが強かった」という、丸山シェフ。今回、改めてアペラシオンの異なるシャブリを飲み比べて驚いたのは、その味わいの多様性と幅広い料理との相性の良さだ。
◎Petit Cablis プティ・シャブリ ~アペロに、家飲みに~
フィンガーフードなどで気軽に楽しみたいプティ・シャブリ。持ち味のすっきりした酸がシャルキュトリーと出合い、脂っぽさを程よく流しつつ、なますとラズベリーが、ワインのフルーティさと響き合います。
合わせたお料理:レバーペーストとラズベリーのバインミー
◎Chablis シャブリ ~BBQやスシ、和食にも~
シャブリのミネラル感と白イカの甘味がバランスよく混じり合い、チリパウダーの辛味がアクセントに。赤パプリカの香ばしさとナッツのコクで深みを出したソースにワインの酸が加わることで、奥行きある味と余韻に。
合わせたお料理:白イカのグリル ロメスコソース
Chablis 1er Cru & Chablis Grand Cru シャブリ プルミエ・クリュ&シャブリ グラン・クリュ ~赤身肉、クリーム系、ハレのひと皿に~
ハレの日の食卓に相応しい、ボディ感のあるプルミエ・クリュとグラン・クリュは、クリームや牛肉の脂に溶け込むように馴染んで、よく合います。濃厚さを引き締める実山椒、ホワイトバルサミコ酢の酸とで力強いハーモニーが生まれます。
合わせたお料理:牛モモ肉のポワレ 山椒のソース
◎ AELU
東京都渋谷区西原3-12-14
☎ 03-5738-8068
11:30~14:00LO、18:00~23:00LO 日曜夜、月曜昼休
東京メトロ、小田急線代々木上原駅より徒歩0分
http://www.aelu.jp/