【後編】食べ手にも作り手にも新しい扉を開く装置
「~パリ発、チョコレートの祭典~サロン・デュ・ショコラ」の舞台裏
2024.01.15
【PROMOTION】
text by Sawako Kimijima / photographs by SALON DU CHOCOLAT Tokyo 2024
22回目を数える今年の「サロン・デュ・ショコラ」は、会期を約1カ月に延ばし、従来の2部制から3部制へと拡大*。「Touch! 心がふれあう。世界が変わる。」をテーマに、カカオとショコラの世界観をトータルに描き出していきます。「日本のサロン・デュ・ショコラなくして、現在のフランスのショコラはない」(MOFショコラティエ フィリップ・ベル)と言われるほど、ショコラ界に与える影響が大きいのは、なぜなのか? 五藤久義バイヤーの仕事を追う中で、その理由を探ります。
*「Part1」1/18~22、「Part2」1/27~31、「Part3」2/5~14 詳細は文末に記載
目次
シェフたちとのコミュニケーションあればこそ
「シェフたちとの“タッチ”の多い旅でした」
バイヤーの五藤久義さんは、2023年4月から5月にかけての約1カ月、フランスやスイスのシェフたちを訪ねた(前編参照)。今回のテーマ「Touch! 心がふれあう。世界が変わる。」は、その旅でも実感したことだという。
実は五藤さん、サロン・デュ・ショコラのバイヤー就任は今期から。「内示を受けた時、思わず何度も聞き返してしまった」と言うが、催事としてのスケールのみならず、社会的影響力の大きさを考えれば、そのリアクションは想像に難くない。
「旅では、ほぼ初対面というシェフが多かった。でも、直接会ってコミュニケーションを取るうちに、一緒にサロン・デュ・ショコラをつくり上げていこうという彼らのパワーに心動かされ、辞令を受けた時の不安が吹き飛んでいました」
ふれあうことで心が動く。ふれあうことで理解が深まる。ふれあうことで創造の種が芽吹く。ふれあいやつながりから新しい扉は開かれる。五藤さんはそんなメッセージを「Touch!」に込めている。
「ショコラの作り手に焦点を当て、ショコラを文化として伝えるのがサロン・デュ・ショコラの特徴」と前編(文末にリンクあり)で五藤さんが語っているが、それは、シェフたちとの細やかなコミュニケーションの積み重ねの上に築かれている。作り手としてのフィロソフィーはもちろんのこと、社会情勢をどう捉えるのか、消費者は何を求めているのか、どうしたらカカオ生産者のステイタスは上がるのか、どんなクリエイションがショコラ界に刺激を与えていくだろうか・・・バイヤーとシェフとの間で会話を交わし、目指す方向性を共有して、それらの作業の一到達点としてサロン・デュ・ショコラはある。今ここでしか手に入らないショコラが並び、これからのショコラの行方を指し示すことになる。
「『日本は今、どんな状況?』『次回のテーマは何?』、シェフたちから聞いてくるんですね。密なやりとりが繰り返されることになりますが、その賜物が各シェフの力作の詰め合わせ、セレクションボックスなんです」
五藤さんが旅で回った27ブランドには13人のMOFが含まれる。トップクラスの技術を誇るシェフ揃い、自ずとショコラの最前線が見えてくる。
「顕著なのは、シェフたちがカカオ産地へ足を運んでいるということ。カカオを取り巻く環境への理解に努めて、クリエイションに落とし込む。カカオ豆の選別から時間をかけて行なうフィリップ・ベルのように、ビーン・トゥへの取り組みも確実に増えています。それと、地元の素材や文化をモチーフとしたクリエイションが際立っていました。ブルゴーニュ地方のオリヴィエ・ヴィダルはワインを、コルシカのアレクシア・サンティニは南仏の島ならではの自然をショコラ作りにとり入れるなど、地域性を打ち出す傾向が強くなっていると感じます」
日本のショコラの価値向上の道筋を語り合う
「日本のシェフたちとは距離が近いだけに、日本のショコラの価値をどのように形作っていくか、いかにして道筋をつくるか、直接話す機会が多い」と五藤さんは語る。「日本にもキープレイヤーがたくさんいて、たとえば、宇治田潤さんは独自にビーン・トゥの可能性を広げながら、高みを目指しています。また一方で、水野直己さんとその門下生は一系譜を築いている。水野さんは僕たち以上にサロン・デュ・ショコラのことを考え、カカオとショコラに何ができるのかを考えている」
カカオの価値を最大化するために
数あるバレンタイン催事の中でもサロン・デュ・ショコラを目指して来る人々が求めているものとは何だろう?
五藤さんは「ショコラを通してドキドキワクワクしたいんだと思います。ショコラを買うという行為以上に、新しい世界と出会いたい。その体感、体験を求めて足を運ぶのだと思う」と分析する。
ショコラの作り手たちと会って、人となりに触れ、ショコラのバックグラウンドを感じることもそのひとつだろう。会場でしか食べられないイートインもまた新しい世界に触れる入り口と言えるだろう。
殊にイートインでは、カカオトレーダーの生田渉さんが「カカオの使い方を開拓する実験室」と評する様々な試みが展開され、ネットでは絶対に得られないリアルな味覚体験へと導かれる。パート1には、世界ベストレストラン50で2023年の1位に輝くペルー「セントラル」のヴィルヒリオ・マルティネスがプロデュースする東京・赤坂「MAZ」や、国領「ドンブラボー」と神楽坂「クレイジーピザ」を手掛ける平雅一シェフが柴田正幸シェフとダブルネームで出展。パート3では、パリで日本人初のミシュラン三ツ星に輝く小林圭シェフがプロデュースする「メゾンケイ」、東京・神楽坂の懐石料理「神楽坂 ふしきの」、予約の取れないことで話題の静岡「シンプルズ」が登場するなど、刺激的な顔ぶれが揃う。
イノベーティブなシェフたちのクリエイションをバックアップするのが、カカオのサプライヤーである生田さんたち立花商店だ。サロン・デュ・ショコラでは、カカオの可能性を切り拓くため、あえてスイーツ以外のジャンルのスペシャリストを起用するが、そんな彼らに対して、「生のカカオ、ローストカカオ、カカオニブ、カカオマス、カカオバター、カカオパルプ、カカオハスク、カカオビネガーなど、様々なパーツ、様々な状態のカカオを用意して、自由な発想でスイーツや料理に採り入れられるようにしている」。
カカオを細分化して捉えると、“カカオ=ショコラ”の図式を超えていく。様々な活かし方が開発されることによって、カカオの価値が最大化される。
「サロン・デュ・ショコラのおかげで、スイーツ作りをカカオから考えるシェフが増えた」と生田さん。たとえば、ビエール・エルメ・パリなど国内外の有名ブランドでマカロンにカカオバターを使うケースがある。植物性油脂でかつ融点が体温付近であることから絶妙な口どけ感のあるカカオバターが、マカロンのクリームの素材として適しているとの判断からだ。
「カカオパルプからジュースを作るプロジェクトや、ウガンダでは生の状態で菌数の少ないカカオの開発が進んでいたり、産地でもカカオの活用法を最大化する取り組みが進んでいます」
五藤さんは言う、「私たちは、カカオの伝え方を様々な角度から模索し続けてきたのだと思います。いかにしてカカオと人々との接触点を増やせるか。どうしたらカカオの深みを感じてもらえるか。そして、シェフたちにとって、サロン・デュ・ショコラに出ることが次なる一歩を踏み出すきっかけになるようにと考えてきた」。
「日本のサロン・デュ・ショコラなくして、現在のフランスのショコラはない」とフランスのMOFに言わしめるのは、そんなチャレンジの歴史があるからに違いない。
~パリ発、チョコレートの祭典~サロン・デュ・ショコラ 2024
Part1 TASTE OF CACAO -広がる、楽しむ、カカオの世界-
一般会期:2024年1月18日(木)~22日(月) *最終日午後6時終了
参加ブランド:アマゾンカカオ、ペイサージュ、カカオハンターズ、パカリ、エリタージュ、パティスリー ジュン・ウジタ、レガル・ド・チヒロ、ブノワ・ニアン、ネル クラフト チョコレート トーキョー、ル・フルーヴ 他
Part2 THE ARTISANS -ショコラティエ、パティシエの技-
一般会期:2024年1月27日(土)~31日(水) *最終日午後6時終了
参加ブランド:クリスティーヌ・フェルベール、フィリップ・ベル、ベルナシオン、フランク・ケストナー、オリヴィエ・ヴィダル、クリスチャン・カンプリニ、トゥルビヨン バイ ヤン ブリス、アルギン・ギルメ、カンタン・バイィ、リリアン・ボンヌフォア 他
Part3 THE NEXT -ショコラの多様性-
一般会期:2024年2月5日(月)~14日(水) *2月8日(木)は午後4時終了、14日(水)は午後6時終了
参加ブランド:ジャン=ポール・エヴァン、パティスリー・サダハル・アオキ・パリ、ローラン ル ダニエル、イヴァン・シュヴァリエ、ヴァンサン・ゲルレ、ブルーノ ルデルフ、パティシエ エス コヤマ、ナオミ ミズノ、ドゥブルベ・ボレロ、プレスキル ショコラトリー 他
会場:伊勢丹新宿店 本館6階 催物場
公式サイト:https://www.mistore.jp/shopping/feature/foods_f3/salon_du_chocolat_f
(注釈)
※価格はすべて税込。8%の場合と10%の場合があります。