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FEATURE / MOVEMENT

国際料理コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフ」が応援する

若手シェフの青森産地訪問記 -1日目-

2018.01.06

text by Kei Sasaki / photographs by Yasufumi Manda

30歳以下の若手料理人の世界一を決める国際料理コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフ2016」でイタリア代表として決勝大会に進出し、大会特別賞を受賞したマルケ州「Ristobar Di Gusto Italiano」のアレッサンドロ・ラピザルダシェフが、「サンペレグリノ」の日本の販売元であるネスレ日本の招きで来日。同じくコンクールに参加し好成績を収めた東京・青山「iCas storia」の芝原健太シェフと共に、1泊2日で青森県を訪ねました。

※国際料理コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフ」とは
世界中の美食家に愛されるファインダイニングウォーター「サンペレグリノ」を世界150カ国で販売しているサンペレグリノ社(ネスレグループ)は、2018年6月、30歳以下の若手料理人の世界一を決める国際料理コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフ2018」をイタリア・ミラノで開催します。今やガストロノミーの世界では、国際的なコンクールで評価を受けることは料理人にとっての大きなステップに。その機会を未来ある若い世代に開こうという注目すべきコンクールです。料理の味わいはもちろん、素材選びの目や技術、プレゼンテーション力や美しさ、メッセージ性までが評価の対象になります。
「サンペレグリノ」社はこの取組で、世界各国の次代を担う才能の発掘を業界全体で盛り上げていこうと、様々な形で若手料理人の支援に努めています。
https://www.sanpellegrino.com/youngchefapplication
https://www.nestle.co.jp/media/pressreleases/allpressreleases/20170615_spellegrino

八甲田山系と太平洋が育む恵み 小川原湖





青森に到着したラピザルダシェフと芝原シェフがまず向かったのは、青森県東部に位置する県最大の湖・小川原湖。八甲田山系のミネラル豊富な水が高瀬川を通って流れ込む一方、満潮時には太平洋からの海水が逆流して流れ込む汽水湖で、独特な生態系を保っています。

シジミ、シラウオ、わかさぎの水揚げ量は全国屈指。10月初旬のこの日は、シラウオの秋漁も解禁になったばかりで、少し離れた場所にシラウオ漁船も見ることができました。


2人は小型漁船に乗り込み、漁師さんと一緒に沖に出ました。「大きなシジミが獲れるのは、この辺り。水深は深いところで20メートル以上あるんです」。手渡されたシジミを見た2人は、驚いた表情で目を見合わせます。殻の大きさは2センチ以上。大振りの身が詰まっています。



漁船での視察を終えた後、シジミ汁や生のシラウオ、モクズ蟹を使った郷土料理・ガニ汁などを試食。「シジミはこれまで食べたものの中でも最高レベル。甘みと旨みの凝縮感が格別です」と、ラピザルダシェフ。芝原シェフも大きく頷きます。

※小川原湖漁業協同組合  http://www.jf-ogawarako.com/


ドライフルーツの様な青森の黒にんにく 柏崎青果





小川原湖を後にした2人は、上北郡おいらせ町で農産物の生産、加工、流通まで手掛ける「柏崎青果」を訪問しました。同社の看板商品がおいらせ熟成黒にんにく。臭みゼロ、ナチュラルな甘みとコクのある黒にんにくは、欧米のガストロノミーの世界でも注目を集めています。


黒にんにくには兼ねてから興味を持っていたというラピザルダシェフは、味をみて「フルーティ。まるでドライフルーツのよう」と目を丸くします。

「青森県産の福地ホワイト六片という品種は、粒が大きく、生でも糖度が30度以上と非常に甘い。熟成することで、50度以上まで高まります」と、同社代表の柏崎進一さん。

柏崎さんいわく、これまでフレンチやイタリアンでは隠し味としてソースなどに使われてきた黒にんにくが、近頃ではサラダや付け合わせとして形もそのままに用いられることが増えているのだそう。「たしかに、色々な料理に使えそうだよね」と話しながら、ともに数袋を購入。次なる目的地へと向かいます。

※青森の黒にんにく http://96229jp.com/specialist/oirase/kashiwazaki.html


青森シャモロック  村越シャモロックパーク





青森県が誇る食材のひとつに、青森シャモロックという地鶏があります。軍鶏を改良した横斑シャモと横斑プリマスロックを掛け合わせた品種で、緻密な肉質と濃厚な旨みが特徴です。トップ生産者のひとり、村越正和さんを訪ねた2人は、まず、鶏舎の類稀な美しさに驚いた様子。「全然いやな臭いがしない」「本当にきれいですね」と口々に話します。




村越さんの鶏舎は盛り土の上に建っています。雨や雪が降っても、鶏舎は常に乾燥していること。これが鶏舎を雑菌と臭いから守る第一の方法だからだそうです。オスは118~113日、メスはさらに最長で155日と、長い飼育期間を経て出荷されます。この日は、朝屠鳥したばかりのものを、村越さん自ら炭火で焼いてくれました。




火が入ると皮が黄色みを帯び、濃厚な旨みは見た目からも伝わってきます。やや焦げ目を付けた焼き上がりをほお張るなり、同時に「これは美味しい」と、声が漏れます。
「弾力があって旨みも強く、香りもいい。しっかり焼いてもパサつかないのもいいですね」と、ラピザルダシェフ。日本の北国、青森に対するイメージが、次々にアップデートされていく様子が表情から見て取れます。

※村越シャモロック http://murakoshi-syamorockpark.jp/




「陸奥八仙」可能性に挑戦  八戸酒造





この日は、ラピザルダシェフのたっての願いで、日本酒の蔵も訪ねました。質の高い日本酒は、今やイタリア国内のレストランでも食中酒としてスタンダードになりつつあるからです。




八戸を代表する地酒「陸奥八仙」を醸す八戸酒造の創業は安永4(1775)年。築100年を超える蔵のたたずまいにも風格があります。専務の駒井秀介さん(右)と弟で製造責任者の伸介さん(左)が、蔵を案内してくれました。陸奥八仙に代表される酒は、香りが華やかでフレッシュな飲み口が特徴。伝統的な酒造りを守る一方で、細かな温度管理ができる貯蔵庫など最新の設備を導入し、酒質をブラッシュアップしてきました。



蔵人の平均年齢は30歳。35歳の若き製造責任者・伸介さんを中心に、新しい試みにも意欲的です。こちらは米から醸したビール酵母を使用したお酒「mutsu8000 8PA」(完売)。


7種のテイスティングアイテムのうち、2人が最も興味を示したのが、瓶内二次発酵でつくるスパークリング酒「8000Brut(仮)(未発売2018年発売予定)」。芝原シェフは「泡が繊細で飲み口が軽快」と、絶賛。アレッサンドロシェフも「さまざまなイタリア料理とのマリアージュの可能性を感じます」と、満足した様子でした。

※八戸酒造株式会社 http://www.mutsu8000.com/



イベントをきっかけに数週間前に出会ったばかりながら、すっかり打ち解け合い、まるで10数年来の友人のようなラピザルダシェフと芝原シェフ。何か発見があるとすぐに声をかけ合い、料理の話に花を咲かせます。2人の旅が、より多くの発見と刺激につながっているよう。充実した表情で視察の初日を終えました。



「サンペレグリノ スパークリング ナチュラルミネラルウォーター」
「アクアパンナ ナチュラルミネラルウォーター」
輸入者・販売元 株式会社モトックス

https://www.mottox.co.jp





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