国際料理コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフ」が応援する
若手シェフの青森産地訪問記 -2日目-
2018.01.06
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text by Kei Sasaki / photographs by Yasufumi Manda
八戸の台所 八戸市営魚菜小売市場
視察2日目は午前6時半にホテルを出て、戦後から「八戸の台所」として親しまれている朝市を視察するため、八戸市内から車で約30分の陸奥湊を目指します。朝から小雨が降る天候のせいもあって出店数はやや少なかったものの、八戸市営魚菜小売市場を中心に、水揚げされたばかりの魚やその加工品、惣菜を売る店がずらり。土地の方言で「いさばのカッチャ」と呼ばれる魚売りのお母さんたちの「見ていって」「うまいよ」という掛け声が飛び交います。
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ローカルな市場の風景に興奮した様子で、気になったものを次々にタブレットで撮影するアレッサンドロ・ラピザルダシェフ。芝原健太シェフは、土地ならではの魚や海藻について、地域での食べ方をお母さんたちに尋ねていました。
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八戸市営魚菜小売市場は、知る人ぞ知る朝食スポットでもあります。好きな刺身や焼き魚、惣菜を買って、食堂でごはんと味噌汁を頼めば、自分だけの定食の出来上がり。日本ならでは、東北ならではの食材や惣菜について芝原シェフがラピザルダシェフに解説しながら、賑やかな朝食の時間になりました。
※八戸市営魚菜小売市場 http://www.city.hachinohe.aomori.jp/index.cfm/10,4953,33,html
樹齢100年を超えるりんごの古木 山田果樹園
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秋に青森を訪れたならば、緑の木々に真っ赤な実を実らせるりんご畑の風景を目にすることになります。津軽地方の南端・大鰐町で四代続く山田果樹園では早生の「ふじ」と、黄玉の「とき」の収穫の真っ最中。2人も園主の山田敏彦さんに習い、短い時間でしたがりんごの収穫を体験しました。
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山田果樹園には、樹齢100年を超えるりんごの古木があります。園内奥の畑に案内され目にした古木は、枝が横に十数メートルほど広がっていて、一本の木とは思えないほど。
どこか神聖ともいえる佇まいに、2人もしばし無言になり、太い幹に手を触れたりしながらその木を隅々まで眺めていました。
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「青森県にりんごが伝わったのが明治8(1875)年。ほぼ同時期に大鰐でのりんご栽培が始まっています。品種は「ふじ」。甘みを引き立てる酸味がしっかりとある、昔ながらの「ふじ」です。近頃は品種改良で色がつきやすく糖度も上がりやすい「ふじ」が簡単に出来ますが、こういう昔の味を継承していくことも大事だなと思うんです」柔和な印象の山田さんですが、りんごの話となれば言葉が熱を帯びます。聞き入る2人の表情も真剣に。豊かな自然環境に加え、守り育てる人がいる。青森の食の豊かさに、またひとつ触れた時間でした。
※山田果樹園 http://www.appleyamada.com/
津軽のおふくろの味を体験 「津軽あかつきの会」
昼は「津軽あかつきの会」を訪ねました。農家の女性30人ほどで結成された「津軽あかつきの会」は、津軽の伝統料理の復活を目的に、年配者からレシピをきいて地域の農業や食文化との関連を調べながらレシピを保存する活動を行っていて、予約制で食事の提供もしています。
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到着する頃には、すでに台所からおいしそうな匂いが漂っていました。覗いてみると、エプロンや割烹着に三角巾姿の女性たちが、忙しそうに、かつ賑やかに食事の支度をしています。運ばれてきたお膳には、小皿や小鉢がぎっしり。東北地方に伝わる枝豆のペースト・ずんだで和えたナスや棒鱈の煮もの、にしんの飯寿司、いがめんち(イカ入りの魚の練り物を揚げたもの)など、すべて津軽の味です。
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「野菜は土地の季節のものが基本。化学調味料は使ってません。ちゃんと育った野菜の、しっかりした味を楽しんでください。煮物の甘みにも砂糖やみりんを使わずりんごを使います。なぜって? 昔、高級な砂糖は庶民の家にはなかったけれど、この辺りにはりんごならあったから」代表の工藤良子さん(写真中央)が説明してくれました。
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乳酸発酵させた枝豆をはじめ、漬物もいろいろ。これぞ津軽版マンマの味。レシピの精度より何年もの間作り込んだ年期が味わいから滲みます。気になる料理について工藤さんたちに尋ねながらの食事の時間はあっという間に。「塩蔵や発酵を利用した保存食には、とても興味をそそられる」と、ラピザルダシェフ。日本の地方料理のユニークさに、自国イタリアの食文化を重ね合わせているようでした。
※津軽あかつきの会 http://www.umai-aomori.jp/know/sanchi-report/37.phtml
飼育に秘訣! 長谷川自然牧場
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最後の訪問先、鯵ヶ沢の「長谷川自然牧場」に到着するや「遠いとこ来てくれてありがとう」という代表の長谷川光司さんに出迎えられます。大柄でよく通る声で話す長谷川さんは、豪快な雰囲気。「こんな豚の育て方はよそにないよ。全国でうちだけ」と、自信満々で施設内を案内してくれました。
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まず初めに案内されたのは、豚の飼料を保管する倉庫。もみ殻を発酵させた飼料の山に手を入れるとほのかに温かく、つかんでみれば指の間からこぼれるほどサラサラ。2人もその触感に驚いていました。長谷川さんはこの発酵飼料と地元の製パンメーカーからもらうパンやジャガイモ、大根などの野菜を混ぜて豚に与えています。豚舎の中ではごはんを待つ豚たちが盛大な鳴き声を上げていました。
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広大な敷地の中では、豚のほかに卵を産む鶏や羊も飼っています。ほかにも、牧場で育てた豚肉や卵を使ったソーセージづくりやシュークリームづくりの体験教室も開催していて、子供たちに命や食の大切さを伝えています。
※長谷川自然牧場 http://www.umai-aomori.jp/know/sanchi-report/25.phtml
青森で出会った食材を料理に
牧場の視察後、体験工房の厨房を借りて2日間で訪れた生産者の食材を使った料理を試作しました。
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ラピザルダシェフは、生のシラウオとワカサギのフリットに、卵黄のマリネと黒にんにくを添えた1皿を。
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芝原シェフは、シャモロックのハンバーグ仕立て。モクズガニの味噌を隠し味に、りんごと生みたて卵のソースを添えた華やかな1品です。
多くの真摯な生産者と出会えた2日間。旅の印象を訪ねてみました。芝原シェフは、モクズ蟹のペーストが最も印象に残ったと話します。「シンプルなパスタなど、イタリアンで汎用性が高い食材。和食以上に洋のテイストで展開できる可能性を感じました」。ラピザルダシェフは、イタリア人ならば馴染み深いニンニクながらまったく違う味わいを持つ発酵黒にんにくに深い関心を抱いたといいます。「早速いろんな料理に使いたい。リコリスのニュアンスも感じたので、デザートにも使えそうだと思っている」可能であれば日本酒を自分の店で提供したいとも。
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駆け足ながら海から山まで青森の素晴らしい食材に触れた濃い2日間。さまざまな食材の料理への活かし方はもちろん、食材や生産者に対する向き合い方などについて意見を交わしながら、多くのことを考え、学んだ旅になったようです。
※国際料理コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフ」とは
世界中の美食家に愛されるファインダイニングウォーター「サンペレグリノ」を世界150カ国で販売しているサンペレグリノ社(ネスレグループ)は、2018年6月、30歳以下の若手料理人の世界一を決める国際料理コンクール「サンペレグリノ ヤングシェフ2018」をイタリア・ミラノで開催します。今やガストロノミーの世界では、国際的なコンクールで評価を受けることは料理人にとっての大きなステップに。その機会を未来ある若い世代に開こうという注目すべきコンクールです。料理の味わいはもちろん、素材選びの目や技術、プレゼンテーション力や美しさ、メッセージ性までが評価の対象になります。
「サンペレグリノ」社はこの取組で、世界各国の次代を担う才能の発掘を業界全体で盛り上げていこうと、様々な形で若手料理人の支援に努めています。
https://www.sanpellegrino.com/youngchefapplication
https://www.nestle.co.jp/media/pressreleases/allpressreleases/20170615_spellegrino
「サンペレグリノ スパークリング ナチュラルミネラルウォーター」
「アクアパンナ ナチュラルミネラルウォーター」
輸入者・販売元 株式会社モトックス
https://www.mottox.co.jp
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