畑仕事を皆でシェアする【後編】
アーバンファーマーズクラブメンバーの種まきイベントに潜入!
2022.05.13
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photographs by Daisuke Nakajima
2019年5月に「世界のアーバン・ファーミング最新事情」としてお届けした記事を再公開します。都市でできる究極の地産地消であり、サステナブルな食物生産の営みに直に触れる機会にもなるアーバン・ファーミング。改めて知りたい都市型農業の事例です。
2019年3月のとある平日の昼間、東京・恵比寿ガーデンプレイスに一人、また一人とアーバンファーマーズクラブ(UFC)メンバーが集まって来た。GW中に開催するアーバン・ファーマーズ・サミットで、サラダサンドイッチを提供するための葉物野菜の種まきだ。
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恵比寿ガーデンプレイス内に設置された6つのコンテナは、近隣の6園の保育園児たちが種をまき、収穫体験する場としても使われる。
集まったのは、UFCの「自称ごはん担当」という出張料理人の女性、前出のオフィスビルの屋上畑で毎朝水やりをしているという主婦、「フェイスブックで人手が足りないと聞いて」手伝いに来たメンバーの友人、「力仕事なら任せて」と今回初参加のお笑い芸人の男性、そしてフリーランスPRで数カ月前からUFCの広報を務める和田ゆみさん。そこへ車で土を運び込んできた小倉さんが加わり、2メートル四方のコンテナ6台と、新しく設置した小型プランターに土を入れ、耕し、種を播いていく。
「土10㎏は米10㎏より重い!」と驚くメンバーの横で、「水やりすると土が沈むから、手で土を押し入れて。でも根が張れるくらいの密度に」と経験者。「コンテナごとではなく1畝ごとに違う種をまけば、左のコンテナから順にサラダミックスが収穫できる」とイベント当日を想像してレイアウトを考える小倉さん。初参加の男性も鍬で土を平らにならして畑を整えていく。
最初に共有したのは「今日は6種類の種をまく」こと。あとは経験者がリードしつつ話しながらやり方をみつけ、初心者も見よう見まねで手を動かしていく。その横を「何しているんだろう?」という顔で通り過ぎる人、コンテナを覗きこむ人、話しかけてくる人もいる。気付けば小倉さんは来客でどこかへ消えていた。
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まずは土入れから。根が張りやすく、そこそこ密度があるよう押し詰めて。
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平らにならしてから畝を掘る。お母さんと散歩中の男の子が興味津々で近づいてきました。
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いろいろな葉ものの種をまいてサラダミックスを。まずは指で浅く溝を作って・・・
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1畝ごとに違う野菜の種をまいて。 (手前がルーコラ・セルバチカ、奥が水菜の種)
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お母さんも一緒に種まき。種をまいたら土をかぶせて・・・
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雨が降るようにやさしく水をまいたら、種まき完了!
「いつもこんな感じ(笑)。でも過程が楽しいからこれくらいが気軽で丁度いい」と笑う料理人の女性は、「以前から農家さんを訪ねていたけれど、誰かと一緒に育てた野菜を料理して分かち合うことは、三ツ星に行くのと同じくらい価値がある」と知ったという。
和田さんも「ルールのない、ゆる~いメンバーシップだけど、一回作物のお世話をすると愛着が湧く。うまくいかなくても、今度はこうしてあげたらよく育つんじゃないかと思いめぐらすんです」。
気軽に参加してみれば、ゆっくり何かが変わっていく。そして都会の真ん中で種をまく彼らの姿もまた、道行く人に何かを気づかせている。
◎ NPO法人「 アーバン・ファーマーズ・クラブ」
https://urbanfarmers.club/
※2021年に「YEBISU GARDEN FARM ACADEMIA(エビスガーデンファーム アカデミア)」を開講。ファーミングコース、クッキングコースがあり、都会でも実践可能な農的でサステナブルな暮らしをするための知識や技術を伝えている。
(雑誌『料理通信』2019年6月号掲載)
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