自然の力で元気に育つ! ベランダ菜園【実践編】
2023.05.29
text by Kyoko Kita / photographs by Daisuke Nakajima
都市でできる究極の地産地消であり、サステナブルな食物生産の営みに直に触れる機会にもなるアーバン・ファーミング。奥行き1.2メートル×幅6メートルのベランダで、無農薬、減肥料で様々な野菜を育てるたなかやすこさんから、「土づくり」と「苗の植え付け」を教わりました。自然の力で元気に育つ、ベランダ菜園を楽しみましょう。
目次
肥料過多は禁物、水と日光が何よりの栄養
「土づくりで大事なのは、栄養よりも、微生物の住処を作ってあげること」と言うたなかさん。ここ数年、好んで使うのは、水で戻して使う「ココヤシ100%の土」だ。「ココヤシの繊維には無数の穴が空いていて、保水力が高く通気性も良い。とても軽いので作業しやすく保管にも重宝します」。ここに「もみ殻燻炭」を1割弱混ぜる。肥料を含まない多孔質で、微生物にとって心地よい居場所となるのだ。微生物の増殖を促進する「ミミズの糞土」(有機特殊肥料)も加え、元肥として入れる「有機肥料」は袋の記載よりも少なめに。
「肥料分の多い土では、虫が来やすくなるし、『菌根菌』という植物の根に入り込んで菌糸を伸ばし、根が届かないところにある養分や水分を集めてくれる微生物も消えてしまうからです」。このような土の中で微生物は活発に働き、彼らの出す粘性の分泌物やミミズの糞土がが土を「団粒化」してくれる。団粒構造の土はふかふかで保水性、排水性、通気性、保肥力に優れ、植物が育ちやすい場となる。
寄せ植えには、コンパニオンプランツとして、ナスタチウムやネギなど辛味成分を持つ植物を一緒に植えるのもおすすめ。根に抗菌物質が含まれるため、土の中の微生物を活性化し、病害虫も防いでくれる。花があれば受粉を助ける虫を誘えるだけでなく、日々のお世話も楽しくなるだろう。苗は、「葉の間隔が短いずんぐりとしたものを選ぶといいでしょう。双葉がきれいに残っている苗、底の穴からのぞいてみて根が白いのも元気な証拠です」。
植えつけたら、水と日光が何よりの栄養。「水やりは土が乾いたら、次の日の朝に鉢底から流れるくらいまであげるのがベスト。その時に土の中の空気も入れ替わり、根が深呼吸する!こんなイメージです」。日が昇ると同時に始まる光合成には水が欠かせない。「ただし、根は土が乾くと水を求めてさらに伸びる仕組みなので、常に土が湿っているのはNGです。たっぷりと光合成をさせてあげれば、少しの追肥で元気に育ちますよ!」
軽くて繰り返し使える土づくり
【用意するもの】
・ココヤシ100%の土(a)・・・1個
・水・・・4~5L(※水で戻すココヤシブロックの場合、土7~8Lに復元)
・もみ殻燻炭(b)・・・600cc(70g)
・有機元肥(c)・・・10g
・ミミズ糞土(d)・・・700㏄(300g)
・大きいバケツ、またはポリ袋2枚
(a)ココヤシブロック。ココヤシの繊維を圧縮したコンパクトな土ブロック。
(b)くん炭。精米時に採れるもみ殻を低温で燻した土壌改良材。
(c)「元肥の匠」(プロトリーフ)。菌根菌をはじめ24種類の微生物入りの有機元肥。
(d)「みみず太郎100」(豊徳)。ミミズの餌づくりから熟成まで約2年かけてつくられるミミズの糞の土。
【土づくりのポイント】
■ココヤシ100%の土ともみ殻燻炭で、微生物の住処を作る
■有機肥料は控えめに加える
(栄養過多だと虫がつきやすく、微生物も消えてしまう)
苗の植え付けの基本
●用意するもの
●植え付けの手順
[1]鉢底石を敷く
通気性を保つ鉢底石を3~4cm高さに敷く。
[2]苗ポットの底にあたる高さまで土を入れる
ポットの土の表面が鉢の高さにくるよう、実際にポットをあてて目安にする。上ページでつくった土を入れる。
[3]配置を決める
ポットごと苗をのせて向きを見定める(花が外側に向くように)。
[4]苗の茎もとを指で挟み、ひっくり返す
苗を傷めないよう茎もとを持ってひっくり返し、ポットから取り出す。
[5]根を軽くほぐしてから植える
あまりいじらず、真ん中に指を入れて固まった根を外に軽く広げる。鉢の外周に植える。
POINT:根が呼吸しやすく根張りがよくなる。
[6]花は外側に傾け、苗とプランターの間に土を入れる
花を傾けることで見た目に美しく、結果よく気を配るようになる。土を入れる際は、外側に向かって根を張れるように。その後中心にも土を入れ、じょうろで水やりを。
[7]完成!
5月に植えるなら暑さに強いトウガラシと乾燥を好むタイムの寄せ植えもオススメ。タイムが土の表面を覆い水分の蒸発を防ぐ。
(雑誌『料理通信』2019年6月号掲載)
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