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JOURNAL / JAPAN

ようこそ発酵蔵へ【本みりん Mirin】

静岡・藤枝「杉井酒造」

Feb 21, 2022

text by Kyoko Kita / photographs by Hide Urabe

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。今回は、江戸時代に確立したピュアな製法を続ける、酒蔵のみりん造りの現場を案内します。

もち米、米麹、焼酎で仕込んだもろみは、このまま食べてもおいしい。一部はゆるく搾り、みりん粕「こぼれ梅」として販売。酒粕ほどクセがなく、焼菓子などにも使える。

水飴等を加えないもろみは濃度が濃く、機械では搾れない。有機の商品は少量生産のため袋に入れるのも手作業。


搾りたてのみりん。熟成させるほどに色が褐色に変わる。

焼酎の蒸溜器。原料の焼酎は、醸造アルコールを使わず、単式蒸溜器で蒸溜した本格焼酎のみを使用。


酒蔵が信じる「純米」のおいしさ

全国に数十軒ほどしかないみりん蔵。その大半は愛知県に集中している。「杉錦」醸造元「杉井酒造」があるのは静岡県藤枝市。創業天保13年。山廃や生酛造りで純米酒のおいしさを追求する小さな酒蔵だ。大正期、焼津港周辺の水産練り物の需要に応えてみりんの醸造を始めた。

数年間途絶えていた造りを再開させたのは、今から20年程前。南部杜氏の雇用をやめ、社長の杉井均乃介さん自ら杜氏になり、蔵人も年間雇用に切り替えた時のこと。酒造りが終わる4月以降の仕事として、みりん造りを再開した。江戸期に確立された製法に倣い、水飴などの糖類は加えず、もち米、米麹、焼酎のみで造る。当初、焼酎は他社から購入していたが、2~3年後には米焼酎の醸造も再開し、文字通り純米のみりんとなった。もち米は地元農家が育てる「志太もち」という在来種を使う。原料をタンクに仕込み、2カ月間、糖化熟成させた後、吟醸酒を搾るのと同様、もろみを酒袋に流し、舟搾りをする。それをさらに1年熟成。ほんのり黄金色を帯びた液体は、舌の上にとろりと広がり、やさしい甘味が長い余韻を残す。

安く仕上げる方法はいくらでもある。しかし「酒造りと同じです。こだわってものを選ぶ方に手に取ってもらえたら」。「良い原料を選び、手間ひまかけて、丁寧に」、米の力を信じて仕込む。

リキュールとして飲んだり、デザートにかけても楽しめる。無濾過、非加熱。左から、「飛鳥山」¥1,430/720ml、¥2,860 /1,800ml、¥1,100 /500ml(すべて税込)。有機原料で仕込んだPB商品も手がける。



◎杉井酒造
静岡県藤枝市小石川町4-6-4
☎054-641-0606
http://suginishiki.com/

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