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JOURNAL / JAPAN

【ようこそ発酵蔵へ】酒のように、育てて造る「酒饅頭」

東京・青梅「は万の」

2022.11.24

text by Kyoko Kita / photographs by Hide Urabe

連載:ようこそ発酵蔵へ

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。今回は、膨張剤を使わず、米と麹と水で作る酒種を使った伝統製法で70年間「酒饅頭」を作り続ける、奥多摩の和菓子店を案内します。

正月休み明け、1週間かけて仕込むことで発酵力の強い元種に。それを1年間、継ぎ足しながら使う。

しっかりした生地を作るのに最適な、中力と薄力の中間の粉を使用。3段階に分けて加える。


最後の粉は生地を折りたたみながら入れていく。

蒸すと倍以上に膨らむ。

仄かに発酵の風味のする生地に、甘さ控えめの粒餡がマッチ。


見えない世界を相手に、やれることをやる。

酒饅頭。それは酒を加えて作る饅頭ではなく、酒のように育てて造る饅頭だった。

酒や酒粕で風味付けし、膨張剤の力で膨らませるのは、大量生産を目的とした簡易的な製法。本来の酒饅頭は、もち米と麹の発酵の力だけで膨らませ、香りを生み出す。「普通の和菓子屋さんが片手間でやるには、あまりにも時間と手間がかかります」と、奥多摩で70年酒饅頭を作り続ける「は万の」の2代目、濱野孝之さんは言う。

まず、もち米の粥と米麹を合わせ、常温で1週間発酵させる。この時点で、すでにほんのり酒の香り。これが毎日継ぎ足しながら使っていく元種になる。朝、この元種に同量のもち米粥を加えて発酵させ、夕方、砂糖と小麦粉を混ぜて一晩置く。翌朝、小麦粉と水を入れて30~40分発酵。さらに粉を追加するのだが、その方法が面白い。台の上にたっぷりの粉をふるい、そこに生地をのせ、折りたたみながら粉を入れていくのだ。「粉の計量はしません。気温や湿度で状態が変わるので、手の感覚で判断します」。これでようやく生地ができた。

餡を包み、ホイロで最終発酵させ、15分蒸せば完成だ。季節によって水の温度を変えたり、仕込み時間を開店から逆算して調整したり。「菌が機嫌を損ねるので、2日以上は休めません。目に見えない世界を相手に、やれることをやるだけです」

本造り酒饅頭130円(税込み)は、1日300~400個販売。お彼岸の時期は1000個以上売れる。当日食べるのが理想だが、翌日は蒸す、焼く、揚げるなどしても良い。冷凍も可。



◎和菓子処 は万の
東京都青梅市日向和田3-720
9:00~18:00(売り切れの際は閉店する場合あり)
月曜休(月曜日が祝日の場合は次の平日)
☎0428-22-5620
http://sakamanjyu.jp/

(雑誌『料理通信』2018年6月号掲載)

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