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JOURNAL / JAPAN

【ようこそ発酵蔵へ】街に出来たてのチーズを

東京・渋谷「チーズスタンド」

2023.09.19

text by Kyoko Kita / photographs by Hide Urabe

連載:ようこそ発酵蔵へ

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。今回は東京の生乳で作るチーズを渋谷で売る、街のチーズ工房を紹介します。

(写真左)東久留米や清瀬から毎朝搾りたての生乳400Lが運ばれてくる。 (写真右)低温殺菌後、モッツァレッラ用乳酸菌を加え、さらにレンネットを加える。

(写真左)東京・東久留米や清瀬から毎朝搾りたての生乳400Lが運ばれてくる。
(写真右)低温殺菌後、モッツァレッラ用乳酸菌を加え、さらにレンネットを加える。

次第に固まってくる。

次第に固まってくる。

固まってきたらクルミ大になるようカットして、ホエイを抜き、塊を切り分ける。

固まってきたらクルミ大になるようカットして、ホエイを抜き、塊を切り分ける。

90℃前後の塩水で引き伸ばしながら繊維を作り、表面をきれいに丸める。作業開始から6時間程で完成。

90℃前後の塩水で引き伸ばしながら繊維を作り、表面をきれいに丸める。作業開始から6時間程で完成。


東京の生乳で作る出来たてのチーズを、渋谷で売る。

2012年、「街に出来たてのチーズを」と藤川真至(しんじ)さんが渋谷にオープンした「チーズスタンド」。それまでチーズと言えば、大手メーカーによる大量生産か、山間の牧場隣接の工房で造られるのが一般的だった。東京の生乳を使い、渋谷でチーズを作って、売る。そのコンセプトだけに留まらないおいしさは、一般の客のみならず多くの料理人を虜にしてきた。

朝3時、小型のミルクローリーが代々木八幡の商店街にある工房の前に停車した。搾りたての生乳をポンプでタンクに流し込むことから毎日の仕込みは始まる。63℃で低温殺菌した後、43℃まで下げて乳酸菌を添加。30 分後にレンネット(凝乳酵素)を加え、豆腐のように固まってきたら「クルミ大」になるようカットしていく。「この大きさで水分の抜け方が変わり、仕上がりの硬さやpH が決まってきます。水温や気温に合わせて調整が必要です」

切っては水分を抜く作業を数回繰り返したら、塩を加えた熱い湯の中で練って繊維を作り、つるんと丸める。「練りすぎると熱で脂肪が抜けてしまうため、手早くやることが肝心です」。まだほんのり温かいそれは、噛んだ瞬間、むっちりした繊維の間から新鮮なミルクがじゅわりと溢れた。

世界中のチーズが食べられるこの街で、しかし消費地ゆえに空席だった「毎日出来たて」という価値を提案し続けている。

「出来たてモッツァレラ」680円。その製造過程で出るホエイで作る「出来たてリコッタ」600円はやさしい甘味。「カチョカヴァッロ」1,151円は2週間乾燥熟成。(すべて税込み)

「出来たてモッツァレラ」680円。その製造過程で出るホエイで作る「出来たてリコッタ」600円はやさしい甘味。「カチョカヴァッロ」1151円は2週間乾燥熟成。(すべて税込み)



◎&CHEESE STAND
東京都渋谷区富ヶ谷1-43-7
☎080-9446-8411
11:00~20:00
月曜、年末年始休(ただし月曜日が祝日の場合翌平日休)
https://cheese-stand.com/

(雑誌『料理通信』2020年6月号掲載)

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