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JOURNAL / JAPAN

【ようこそ発酵蔵へ】桶屋に弟子入りして木桶仕込みを守る「醤油」

香川・小豆島「ヤマロク醤油」

2024.08.22

text by Yoko Koike / photographs by Oya Sohei

連載:ようこそ発酵蔵へ

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。木桶仕込み醤油の最大の産地である香川・小豆島へ、木桶仕込み一筋の「ヤマロク醤油」を訪ねました。

明治初期に建てられた築100年以上のもろみ蔵。
木桶の表面を覆っているのはもろみを育てる菌。柱や天井、土壁、蔵のいたるところに菌が住み付いていている。
「ヤマロク醤油」五代目、山本康夫さん。
木桶職人が減少している中、山本さんは「小豆島木桶職人復活プロジェクト」を立ち上げ、2012年桶屋に弟子入り。今では木桶作りをしてくれる仲間が全国から集まる。

木桶は微生物の住処だから

瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。島内には20軒の醤油蔵があり、国内生産量がわずか1%にまで減ってしまった、木桶仕込み醤油の最大の産地でもある。

「今、醸造に使っている木桶は全国で2500本。一番多いのが小豆島で1100本です」と教えてくれたのは、木桶仕込み一筋、ヤマロク醤油の五代目、山本康夫さん。和食の基本調味料、醤油、味噌、酢、酒、味醂。昔はどれも木桶で仕込んでいたが、今ではその大半が工場の大型タンクで仕込む時代。だが、山本さんは孫やひ孫の代まで見据えて、木桶仕込みにこだわる。

醤油の基本的な作り方は、蒸した大豆と小麦に塩水と麹を混ぜ、もろみ蔵で熟成させ、搾り、火入れ殺菌して製品化する。熟成期間にもろみとどう向き合うかで味が決まる。醸造担当は山本さんただ一人。

「菌は生き物。こちらが真剣に向き合えば菌の意識が変わるんです」。プチプチと発酵しているときに人が近づくと音が大きくなり、人に見られやすい場所の桶は発酵が活発で、柱の陰にある桶は少し遅いという。それぞれの桶ぐせと熟成具合を見ながら2年~2年半のサイクルでもろみを搾る。全体の8割が主力商品の再仕込み醤油「鶴醤(つるびしお)」になる。再仕込みとは一度仕込んだ生醤油(きじょうゆ)を大豆とともに桶に戻してさらに2年~2年半。微生物が静かにじっくり仕事をしたまろやかなおいしさは、格別だ。

再仕込み醤油「鶴醤(つるびしお)」(右)、丹波黒豆仕込みの「菊醤(きくびしお)」(左)いずれも810円/145ml(税込)


◎ヤマロク醤油
香川県小豆郡小豆島町安田甲1607
☎0879-82-0666
https://yama-roku.net/

(雑誌『料理通信』2020年4月号掲載)

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