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JOURNAL / JAPAN

日本 [東京]

日本の農業を応援する食品作り

未来に届けたい日本の食材 #15 納豆とテンペ

Apr 11, 2022

text by Michiko Watanabe / photographs by Daisuke Nakajima

100%国産大豆、しかも特別栽培や有機の大豆のみで、納豆とテンペを作っているのが、東京・府中にある「登喜和食品」です。独特の薫煙炭火造りの納豆と、他に類を見ない“生”テンペは、遊作誠社長の長年の努力の賜物。自信作です。その製造現場を訪ねました。


「我々にとっての大豆は農業の土に相当します。大豆に種という菌を植えてどう育つか、成長を見届けるのが仕事です」と遊作社長。

私、建設会社に勤めるサラリーマンの時に、東北各地で仕事をしていました。当時は農家に泊めてもらうことが多く、その際、農業の厳しい現実を目のあたりにしましてね。何とか日本の農業の役に立てないかという思いがあった。だから、家業を継ぐことになった時、日本の農家が作る大豆でいこうと思ったわけです。国産大豆は、輸入に比べると高価。当然、商品の価格も高くなる。そのあたりを取引先や消費者の方に理解していただきながら、10年ほどかけて、国産の特別栽培大豆や有機大豆に切り替えていきました。


名人たちが栽培する安心・安全、上質な大豆が原料。永田農法や無肥料栽培など無農薬、減農薬の大豆が北海道十勝清水町、青森、秋田など各地から届く。登喜和食品では20年前まで、容器は経木やワラがメインだったが、今は9割が発泡スチロールや紙カップへ。「納豆の風味は容器の素材によっても変わるんです」

発酵食品の製造には塩がつきものですが、納豆とテンペは無塩で作れ、コレステロールゼロの理想の発酵食品なんです。テンペは大豆の煮豆をテンペ菌で無塩発酵させたインドネシア発祥の発酵食品。テンペ菌が作る酵素は熱に強く、加熱調理しても壊れにくい。だからテンペは加熱調理して食べるのが普通です。対して納豆は、納豆菌が大豆を分解しナットウキナーゼ(血栓溶解酵素)を産生しますが、熱に弱いので生食が基本。ごはんもあまり熱々でないほうがよいと言われます。

同じ菌でも、育てる人の方針で性格は変わります。たとえば納豆。うちでは、発酵の際、前半は練炭を炊いて発酵室の酸素を減らし、納豆菌を苦しめます。後半は一転、外気を送りこみ、菌の繁殖を促します。最初からぬくぬくの環境で育つより、厳しい環境においた菌のほうが、その後の環境の変化にもへたりにくく、打たれ強い菌に育ってくれる。人間と同じだなと感じるところですね。

上質の大豆をこまめに日常に取り入れられるよう、テンペや蒸し大豆など便利な加工品も展開。

厳重に仕切られたテンペの製造現場。中への立ち入りは専門の作業員のみ。菌の性格は違うため、納豆菌と混ざらないよう製造場所もスタッフも分けている。

大豆は畑の肉とも言われ、テンペは栄養価も抗酸化性も高いのでベジタリアンの方に支持されていますが、体によいだけでなくおいしいものを作りたい、と製造を開始したのが“生”テンペです。テンペは30℃で24時間発酵させると、カマンベールチーズのような白カビで覆われます。袋詰めして、通常は熱処理するのですが、生テンペはしません。白カビもそのまま袋の中に残ります。以前、インドネシアのジャーナリストの方が、うちの生テンペを「お菓子のよう」と表現されたのですが、そのまま食べてもおいしい。どちらをお選びいただいても栄養的には変わらないのですが、食品としての味を追求することで、食べ手の裾野がもっと広がるのでは、と期待しています。

これからも、農家の方たちとのつながりを大事にしながら、商品を通し、日本の農業を応援し続けたいと思います。


(左写真)冷凍保存されているテンペ菌。日本で唯一テンペ菌を販売する秋田の今野商店から取り寄せる。
(右写真)テンペは7年もの試行錯誤を経て商品化に至った。生テンペは白カビと共に大豆の甘味が楽しめ、お菓子のようにもチーズのようにも味わえる。

経木も稲ワラも激減しているが、「大事な日本の文化ですから」と使い続ける。


◎登喜和食品
東京都府中市西原町1-10-1
☎042-361-3171
http://www.tokiwa-syokuhin.co.jp/

(雑誌『料理通信』2019年3月号掲載)

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