小松菜栽培を通して「食と農」の理想形を探る 有機栽培の小松菜
[群馬]未来に届けたい日本の食材 #38
2024.03.04
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変わりゆく時代の中で、変わることなく次世代へ伝えたい日本の食材があります。手間を惜しまず、実直に向き合う生産者の手から生まれた個性豊かな食材を、学校法人 服部学園服部栄養専門学校理事長・校長、服部幸應さんが案内します。
連載:未来に届けたい日本の食材
赤城山の南側に位置する「プレマ・オーガニック・ファーム」は、有機農業にこだわり、年間を通して小松菜を主力に栽培しています。小松菜は、カルシウム、鉄分、ビタミン類、ミネラルなど栄養豊富な野菜。小松菜を用いた商品も次々開発。未来を見据えた有機農業に取り組む飯野晃子さんを訪ねます。
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飯野晃子さん。ナチュラルハウスで商品開発の仕事に携わり、2006年からプレマへ。海外へも小松菜を発信する。
そもそもは事業家だった父が「大地へ恩返しできるビジネスがしたい」と20年前に農地を買い求め、有機農業に着手したのが始まりです。農薬や化学肥料を使わず、いろんな野菜にトライした結果、小松菜がよくできたので、主力にしたそうです。
当時、私はまだ学生でしたが、東京暮らしを始めるようになってから、食への関心が急に高まり、大学院ではインドの有機農業を研究しました。インドにはリアルなオーガニックライフがありました。牛を飼い、糞を肥料に野菜を育て、唐辛子を水に溶いて作物の害虫よけにしたり・・・と身近なものですべてをまかなう循環型の有機農業は、私にとって理想の「食と農」の在り方でした。現在、在来種の小松菜を育てたり、加工品には可能な限り地元の食材を使うのも、この時に学んだインドの影響が大きいですね。
畑へご案内しましょう。ハウスは全部で62棟。露地は8ヘクタールあります。小松菜は夏は20日〜約1カ月、冬は3〜4カ月と収穫までの期間が異なりますが、私たちの地域では通年栽培ができます。昨年は台風に2度も襲われ、冬は寒波で伸び悩み、出荷サイズに満たない状況が長く続きました。特に気象条件に左右されやすい露地栽培は、苦戦中です。
ハウスでの収穫は1棟ごとに行います。収穫したあとは、施肥と耕起をし、夏は土壌還元消毒といって、米ヌカと牛糞たい肥を入れ、ビニールを敷いて蒸し焼き状態にします。こうすることで、雑草の種や虫の卵が消えるんです。
また、土のためには輪作、それも科目を変えたほうがいいので、アカザ科のホウレン草やセリ科のパクチーを植えたり、夏はイネ科のトウモロコシを植え、収穫後は根や茎も土に戻し肥料にします。
小松菜は収穫後、袋詰めしてから出荷しますが、ここが一番人手の必要な工程です。外葉を取り除いて、規定の重量に整えて詰めていきます。取り除いた外葉できれいなものは「もったいない菜」として販売。フードロスを少なくすることも意識しています。また、粗く切って乾燥、粉砕した「ぴゅあぱうだー」や、「有機うどん&そうめん」、フェカリス乳酸菌を加えた「生うどん」など、有機加工食品にも力を入れています。
小松菜は栄養価が高く「健康と美容の野菜」と言われます。有機栽培を続けながらその利点をさらに伸ばし、「食と農」の理想的な在り方を、地域の人たちと一緒に追求していきたいと思います。
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健康的な土壌を調え、栄養価の高い小松菜を。小松菜は冬になると甘味を増すが、夏の暑さにも強く、通年栽培が可能な野菜。季節に合った品種を選び、冬場には在来種の栽培も行う。プレマでは、露地とハウスの両方で栽培。健康的な土壌を調え、土での栽培にこだわる。
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小松菜がバラバラにならないよう、根と茎の境目に鎌を入れて収穫する。
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収穫した小松菜は、カゴの中で同じ向きに整然と並べられ、丁寧に運ばれる。
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プレマの小松菜は自然食品店や百貨店などで販売。生でもエグミがなく、サラダやスムージーにも向いている。オレンジの文字のパッケージが目印。
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畑から届いた小松菜はすぐに一本一本タオルで根に付いた土を払い落として外葉を取り除き、重量を計ってから袋詰めされる。20人ほどが作業にあたる。
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「ぴゅあぱうだー」は副材料ゼロ。100%有機小松菜なので、安心して飲料や料理に使える。生うどんは群馬県産の小麦を使用。
◎プレマ・オーガニック・ファーム
群馬県前橋市粕川町下東田面303-4
☎027-285-3314
https://www.premafoods.com/
(雑誌『料理通信』2018年4月号掲載)
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