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JOURNAL / 世界の食トレンド

豆と果肉、殻までも!カカオの実は“丸ごと”食べる時代へ

America[New York]

2024.06.17

豆と果肉、殻までも!カカオの実は“丸ごと”食べる時代へ

text & photographs by Kuniko Yasutake
(写真)ココアパウダーではなくカカオ外殻の繊維をまぶした「ドライド・カカオフルーツ」。カカオは果物である、という知識なく食べれば“脳がバグる”こと必至。その甘酸っぱさから、ヨーグルトやシリアルとの相性が良く、ブルー・ストライプス社でもナッツや他のフルーツと混ぜて、「グラノーラ」と「トレイル・ミックス(アウトドアでのおつまみ)」を販売している。

チョコレートの原料となるカカオ豆は、赤道付近の熱帯地域で栽培されているカカオの実から採取される。豆以外は有効利用されないのが常で、廃棄処分となるのは果実の約7割。その年間総量は1000万トンにも及ぶ。しかし米国では、カカオの実のパーツすべての可食化を実現させた「ブルー・ストライプス(Blue Stripes)」社の認知度が着実にアップしつつある。フードロス/環境問題の是正、農家への公正な賃金を約束するエシカルファーミング、ホールカカオがもたらす高い栄養価の、3要素を詰め込んだアップサイクル食品が好評なのだ。


パッケージ裏面には、カカオのどの部位を食べているのかを知らせるイラストが添付されている。

(写真)各商品のパッケージ裏面には、カカオのどの部位を食べているのかを知らせるイラストが添付されている。

仕掛人は、カカオビジネスの連続起業家であるオデッド・ブレナー氏。チョコレート・レストラン「マックス・ブレナー」創業者の1人で、同社買収先との訴訟の末に業界から一時退くも、2018年にブルー・ストライプスをNYCでオープン。当初はチョコレート主体の飲食店としてスタートしたが、コロナ禍のロックダウンを機にホールカカオを使った消費者向けパッケージ商品の開発をスタートし、事業の路線変更に成功した。

2024年現在、スーパーやオンラインでは、低糖質、プラントベースでグルテンフリーの全6種類22品目を販売している。果肉から抽出したカカオシュガーや、外殻を粉砕したカカオファイバーを使用したタブレット「ホールカカオ・チョコレート・バー」、カカオ豆のチョコがけ「チョコレート・カバード・ホールカカオビーンズ」がユニーク。フルーティな甘酸っぱさとねっちり食感が特徴の乾燥果肉に、きめ細かなパウダー状のカカオファイバーをまぶした「ドライド・カカオフルーツ」は、カカオの既成概念を覆してくれる。テオブロミンに加え、繊維質、抗酸化作用のビタミンや、通常の食事では不足しがちな必須ミネラル数種を含むという特性も手伝って、いわゆる廃棄物を食べている感覚は皆無だ。


カカオ豆のチョコがけ、乾燥カカオフルーツ、タブレット

(写真)左奥から時計回りに、カカオ豆のチョコがけ、乾燥カカオフルーツ、タブレット。どの商品も甘味、酸味、渋みのバランスが良く、滑らかさや歯応え、弾力といった食感の楽しさに開発努力がうかがえる。残念ながら、現在米国本土48州以外での販売はしていないが、今後日本市場に参入するなら「日本の食文化を考慮に入れたフレーバーを展開したい」と、CEOのオデッド・ブレナー氏。

カカオ産地の異常気象が原因となり、この1年間でカカオの価格が約4倍に値上がりしている最中。ブルー・ストライプスの試みに後押しされ、カカオを余すところなく“まるっと”利用した新製品が、世界各地で登場することに期待したい。

品質の高い商品だが、環境を考慮した簡素なパッケージングを採用

(写真)品質の高い商品だが、環境を考慮した簡素なパッケージングを採用。自然派食品スーパーの大手、ホールフーズ・マーケットが選ぶ2024年のフードトレンド・トップ10に名前を連ねたブルー・ストライプスのホール・カカオフード。2022年5月より同マーケットチェーンで販売を開始したことが、全米に販売網を広げるきっかけとなった。photo by Blue Stripes


◎Blue Stripes
Whole Cacao Chocolate Bar 5フレーバー 各4.99ドル
Chocolate Covered Whole Cacao Beans 2フレーバー 各5.99ドル
Dried Cacao Fruit 3フレーバー 各6.99ドル
https://www.bluestripes.com/

*1ドル=157円(2024年6月時点)

 

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