アルコール離れに逆行したコンセプト。ほろ酔い気分を楽しめるクラフトアイスクリームが急成長
America[New York]
2024.07.16
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text by Akiko Katayama
(写真)人気の定番「ケーキ生地、ウォッカとマティーニ風味のアイスクリーム」。小売各15ドル/473ml。
3000軒以上のアイスクリーム・ショップが存在するニューヨーク。各店が創意を競う中、ひときわ個性を発揮しているのが「ティプシー・スクープ(Tipsy Scoop)」だ。“ひとすくいのほろ酔いアイスクリーム”という店名が示唆する通り、各品が5%程度のお酒入り。Z世代を中心に飲酒離れが進む、昨今のトレンドを逆手に取ったコンセプトが当たり、20〜30代の女性を中心としたファンを集めている。
常時約10種を揃えるアイスクリームは、全て手の込んだオリジナル。「ウイスキー風味のキャラメル入りダークチョコレート・アイスクリーム」「テキーラとオレンジリキュール風味のマンゴーのソルベ」などの定番に加え、季節やホリデーを反映させた新たなフレーバーも毎月登場する。例えばアイルランドの文化を祝う「セント・パトリックスデー」には「ギネス・ビールとメープルシロップ・パンケーキ風味のアイスクリーム」など、常に飽きさせない内容だ。また使用するウイスキー、テキーラ、リキュールなどのブランドと積極的にコラボも組み、質の高い味わいを追求する。
創業者のメリッサ・タヴス氏は、6代を遡るアイスクリーム職人の家系に生まれ、曽祖父は英国のアイスクリーム協会の会長を務めた人物。マーケティングの仕事をしながらアイスクリーム作りの夢を温め、2014年、意を決してニューヨークで開業した。試行錯誤を重ねて開発した商品は、翌年全米の小売店で販売されるようになり、17年にはアイスクリームサンデー各品も楽しめる「バーラー(Barlours:バー+アイスクリームパーラーという遊び心のある名称)」をマンハッタンに開店。現在国内に5店舗を展開し、さらに3店舗を開店準備中という急成長ぶりを見せている。
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マーケティング担当のレイチェル・チトウッド氏は「郷愁を誘うアイスクリームと、クラフトカクテルのほろ酔い感の組み合わせが広く受け入れられている様子。寝る前のおやつとナイトキャップを同時に得られる満足感も人気の理由のようです」と話す。今後は乳成分不使用の商品開発や、フランチャイズによるバーラーの国内・海外への拡大も視野に入れている。
低アルコール・ドリンクに通じる、「ほどよく楽しむお酒」を新たな角度から提案する同店のコンセプトは、市場のニーズを巧みに掴んだ一例だ。
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◎Tipsy Scoop
https://tipsyscoop.com/
*1ドル=159円(2024年6月時点)
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