JOURNAL / 世界の食トレンド

Italy [Palermo]星を掲げて店を構える時代の終焉か？徳吉洋二シェフが手掛けるポップアップレストラン

2023.04.24

text by Sayaka Miyamoto

2023年３月、「山を調理する」をテーマにエシカルな料理を展開してきた、イタリア東北部山岳リゾート地の三ツ星レストラン「サント・ウベルトゥス」が閉店した。デンマーク「ノーマ」の閉店発表に続き、衝撃冷めやらぬイタリア料理界には、天才シェフたちが目指すものと“経営”という現実は折り合うことができないのか？　すばらしいレストランがこれからどんどん姿を消してしまうのだろうか？という疑問とショックをもたらした。

一方で、自由に、身軽に自らの可能性を高めているシェフもいる。ミラノ在住の徳吉洋二シェフは、マッシモ・ボットゥーラ率いる「オステリア・フランチェスカーナ」で長年スーシェフを務めた後、2015年、ミラノに「リストランテ・トクヨシ」を開店、２年でミシュラン二ツ星まで上り詰めた。改装オープン直前にコロナが蔓延し、休業を余儀なくされたものの、ロックダウンの後で人々が求めるものは何かと模索した結果、イタリア食材で作るTOKUYOSHI流日本料理をボックスに詰めデリバリーする「ベントテカ」をオープン。日本でも東京・神保町に「アルテレーゴ」を開業するなど、快進撃は止まらない。

2023年は、５月から10月までの期間限定で、シチリアの「スタツィオーネ・ヴッチリア」にポップアップレストランを展開する。州都パレルモから１時間ほどの美しいビーチレストランで、獲れたての魚介類と日本・イタリア双方の料理技術を駆使した徳吉シェフによる美味が提供される。

立派な店舗を掲げて星を競う時代から、作る側も食べる側も、より自由に身軽に食を楽しむ時代の到来なのかもしれない。

（写真トップ）「現地の食材が僕に語りかけるままに、そしてそれを日本料理の影響と技術とで対話させるような料理を作りたい。とても楽しみです」と徳吉洋二シェフ。